ソーシャルメディアの時代に自社の色を出さない企業は無視される
2016/09/29
2013年頃から盛り上がりをみせている「コンテンツマーケティング」。
オウンドメディアやキュレーションメディアの乱立、ソーシャルメディアの進展により、流通するコンテンツ量が爆発的に増えています。そんな現在において、どこにでもあるような”色のないコンテンツ”を目にする機会も増えてきました。そのようなコンテンツは、ユーザーに届かないか、届いたとしても”誰が情報発信したのか”ということは認知されません。
今回の記事では、今後求められる企業の情報発信のあり方を事例をもとに紹介します。
- ■目次
- 「コンテンツマーケティング」が国内で定着した一方で生じた「歪み」
- 自社の考えが反映されているコンテンツ事例
- ソーシャル時代に求められること
- まとめ
「コンテンツマーケティング」が国内で定着した一方で生じた「歪み」
2016年現在、商品やサービスの認知拡大、購入への導線設計強化のために、企業がコンテンツマーケティングとしてSNSの活用やオウンドメディアなどの自社媒体を立ち上げ、運用することが一般的になりました。
しかし多くの企業は、ユーザーにとって「有益な情報」を提供しようとするあまり、そのジャンルにおける”How To”や”検索ニーズ”ばかりに目を向けたものなど、画一的なコンテンツを制作・配信するようになっています。
その結果、ユーザーはどこかで見たような”色のないコンテンツ”を受け取り、コンテンツの提供元である企業の商品やサービスについて信頼・認知を得る前に自身の瞬間的な欲求を満たし、そこから離脱するという状況が生まれています。
参考資料:
Why Content Marketing Fails (なぜコンテンツマーケティングは失敗するのか / 参照元:MOZ社)
そこで今、企業のコンテンツマーケティングを成功させるための重要な要素として、「ブランドのストーリー」や「企業の思想・考え」とともにコンテンツを発信することが注目され始めているのです。
では実際にはどういった形で企業が情報発信しているのでしょうか?
自社の考えが反映されているコンテンツ事例
・GAP傘下のOLD NAVYのTwitter運用事例
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— Old Navy Official (@OldNavy) 2016年4月29日
アパレルブランドGAPの傘下にあり、1994年にカリフォルニア州に最初の店舗を開き、現在ではほぼ全米に店舗を持つOLD NAVY。
同ブランドは、2016年4月にセールの告知をするために異人種家族をモデルとして起用し、キャンペーンツイートをしたところ白人至上主義者から多くのバッシングを受け、アカウントは一時炎上する事態になりました。
しかし、OLD NAVYはそうした主義主張に対して
“We are a brand with a proud history of championing diversity and inclusion. At Old Navy, everyone is welcome,(訳:我々はこれまで多様性を支持してきた誇らしい歴史のあるブランドです。OLD NAVYでは、どんなひとでも迎え入れられます。)”
と反論し、さらに該当ツイートのモデルを担当したプロサーファーのClay Pollioni氏も、
“I’m extremely proud to have taken part in a campaign that not only celebrates our nation’s diversity, but also unites families with multicultural backgrounds and promotes love of all kinds! ,(訳:自国の多様性をただ祝福するだけでなく、多文化的な背景を持った家族を一つにし、あらゆる愛情をプロモートするキャンペーンに参加できたことを本当に誇りに思う)“
参考URL:
https://www.instagram.com/p/BE6jUkbN3K2/
と、とても率直に、前向きな発言をしました。
Clay Pollioni 🇺🇸さん(@clay_pollioni)が投稿した写真 –
そしてその反論や発言に込められたスタンスに共感を覚えた多くの異人種家族が「#LoveWins」というハッシュタグとともに自身の家族の写真をSNSにアップロードし始めたのです。
その結果、今回の事案と同ブランドのスタンスやストーリーが様々なメディアに取り上げられることになり、同社に対する共感とともに世界中に拡散されるに至りました。
自社の考えを反映したメッセージ性の高いコンテンツは賛否を生みます。その批判的な声にも屈せず一貫したメッセージを伝え続ける企業は、共感され信頼されます。
・P&Gの子会社P&Gマックスファクターの商品「SK-II」の動画事例
その同ブランドは、中国の結婚事情における「売れ残り」をテーマにし、独身女性が抱える「晩婚化」という悩みに対して、ブランドのメッセージを込めたドキュメンタリー映像に仕上げています。
親や親族から結婚に対するプレッシャーが強く、「結婚しないと半人前」と言われてしまう中国人女性。
彼女たちがある種「差別」されている状況に対して、「世界中の女性の運命を変えよう」というブランドストーリーを持つSK-IIが、「自分らしい人生を送るがゆえにその選択をしているのだ」というメッセージを届け、「女性が抱える根深い問題に真摯に向き合う」姿勢を見せることで大きな共感を呼びました。
社会的な問題に踏み込むことは、企業の一貫した考えがないと難しいです。そんな中このメッセージと伝えた「SK-II」は、確固としたブランドストーリーがあるのでしょう。
・パタゴニアのFacebook運用事例
アウトドア用衣料品を軸に商品展開をするブランド「パタゴニア」。
同社は「アルピニズム(山に登ることそのものを目的とする遊びやスポーツとしての登山)」を企業理念の中心としてクライミング・ギアを作るところからスタートし、拡大してきました。
そんな中、パタゴニアの創設者イヴォン・シュイナード氏は、自社が作るピトン(岩の隙間に打ち込んで確保点にする鉄製のくさび)が、自然の産物であった「岩」を傷つけている事実を知ることになりました。
その事実に直面した後、同氏は「自然と一体となる瞬間」を与えてくれる自然に対して、責任を持って保護する必要があると考えました。その結果、様々な製品が環境を第一に作られるようになりました。
参考URL:
http://www.patagonia.jp/patagonia.go?assetid=3351
そんなブランドストーリーを持つ同社はFacebook運用においても、ただ単に商品を紹介するというようなことはなく、自社のブランドスタンスと共に、この商品が「何故、どのように」作られたのかについて一貫したメッセージを届けることで、自社のスタンスに共感してもらうことができ、通常の運用では考えられないほどの非常に高いエンゲージメント率を維持しています。
ソーシャル時代に求められること
企業の色が反映され、共感を生むコンテンツ発信
よく言及されていることですが、現在は流通する情報量が爆発的に伸びているにも関わらず、人の消費する情報量はそこまで増えていません。つまり、世の中に情報があふれかえり、ユーザーに情報を届けることさえも非常に難しい状況なのです。
そのような状況でユーザーに「気づいてもらい」「受け取ってもらう」ためには、どこでもありそうな”色の無いコンテンツ”ではなく、ユーザーの心に引っかかる”企業の色を反映したコンテンツ”です。また、考え方や趣味嗜好が多様化した現代において、単純なマスを狙うようなメッセージを訴求してもユーザーには響かなくなり、そのクラスタやジャンルに存在する人たちの「共感」を得る必要が出てきました。
消費しきれない情報量の多さや考え方や趣味嗜好の多様化 により、ユーザーが自分事化しやすいように企業・ブランドのストーリーと共に強いメッセージを届けることが重要になってきたのです。
最終的には一貫したメッセージを伝えた企業が信頼される
OLD NAVYの事例のように、メッセージ性が強いコンテンツのなかには賛否が分かれるものもあります。
しかし炎上を恐れて万人向けを意識すればするほど、どこにでもあるようなコンテンツになってしまいます。また先ほど述べたとおり万人向けのコンテンツは、結局は誰にも刺さらず、共感を生まないのです。事例からも読み取れる通り、一時は炎上したとしても一貫したメッセージを伝えている企業は最終的に信頼されるのです。
そして、企業がストーリーを届ける上で、マーケティング担当者がその場限りの対応で発信するだけではどこかでほころびが出ます。そのため担当者が企業の理念や考えを自分の言葉で発信できるようになることはもちろん、社内の従業員が一人ひとり語れる状況まで浸透して初めて、そのメッセージに信頼性が生まれるのです。
まとめ
コンテンツマーケティングを実施する上で様々なテクニックが存在します。しかし、それらはユーザーにとって一時的な欲求解消にしかならず、企業やブランドへの信頼には繋がりません。
そうした中でコンテンツマーケティングを成功させるには、表現方法(how to say)よりも“何を伝えるか(what to say)”の方が重要になってくるだけではなく、社員一人ひとりがその企業・ブランドの理念を語れるようになる必要があります。
自社で運用しているメディアのコンテンツが、どのように発信されているのかについて今一度振り返ってみてはいかがでしょうか?
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