SNS担当者必見! 最新のソーシャルリスニング徹底解説

2021/08/05


消費者が何を求めているのか、どういったニーズを抱えているのかなど、企業のマーケティング活動において消費者の声に耳を傾けて商品やサービス開発に反映することは非常に重要になってきました(後述)。


また近年、TwitterやInstagramなどのソーシャルメディアが普及したことで、消費者は自ら商品やサービスに関する意見や感想を発信するようになりました。こうしたソーシャルメディア上の情報は、従来のアスキング型の調査では収集が困難な、直感的な感想や素直な意見です。企業にとって有効に収集・分析することで、Webでの施策やサービス改善など様々なマーケティング活動に役立てることができます。


本記事ではこうしたソーシャルメディア上の消費者の声を収集・分析に役立てる活動、ソーシャルリスニングとは何か、ソーシャルリスニングを実施する上でどういった留意点があるか、ソーシャルリスニングの価値とは何か。現場でソーシャルリスニングに取り組むデータサイエンティスト目線から解説いたします。


    ■目次


  1. ソーシャルリスニングとは

  2. ソーシャルリスニングの留意点

  3. ソーシャルリスニングでできること

  4. ソーシャルリスニングの活用場面

  5. まとめ


1. ソーシャルリスニングとは



改めてソーシャルリスニングとは、TwitterやInstagramなどSNSやブログ、掲示板などソーシャルメディア上に存在する消費者のあらゆる情報を収集/分析し、マーケティングに活用することを指します。


ソーシャルリスニングの特徴として、伝統的なアスキングによるマーケティング・リサーチとは違い、ソーシャルメディア上に存在する非構造のデータを実査コストをかけず、安く、早く、傾向をキャッチアップできるといった特徴があります。これにより、例えば通常のリサーチを組み立てる際に、ソーシャルリスニングを活用すれば、リサーチャーのスキルと経験に依存しない仮説の発見や調査項目/選択肢設計を行うことができます。


また、ソーシャルメディアという媒体の特性から、消費者のより日常的な会話や欲求、サイレントマジョリティの声を集められるといった期待が持たれています。


2. ソーシャルリスニングの留意点


ただし、ソーシャルリスニングを実施するにあたり、つねに留意すべき以下の3つのポイントが存在します。



  1. データ取得プロセス

  2. 取得したデータにはバイアスが存在するという前提

  3. データの取り扱い方法


ここでは、これら3つのポイントについてそれぞれ詳しく説明します。


①データ取得プロセス


取得する対象のソーシャルメディアの取得範囲、Facebook、TwitterなどのSNSやアメブロなどの個人ブログ、InstagramやYouTubeなどの画像/動画投稿サイトのコメント、2ちゃんねるなどの掲示板などさまざまな種類のソーシャルメディアのうち、どの媒体からのデータが取得できるのか、どれを活用するのかといった点を考慮する必要があります。


例えば、Twitter社はオフィシャルパートナー企業であればAPIを利用して全量データにアクセス可能な一方、Instagram/FacebookなどはAPIを利用しても限られた一部の情報しか取得できないといった違いがあります。


②取得したデータにはバイアスが存在することが前提


ソーシャルリスニングという特性上、「インターネット利用ユーザー」ということが対象者の前提になります。さらに、調査対象はその中のソーシャルメディア利用者(TwitterならTwitter利用者)であることが前提となるため、媒体ごとの利用者数の違いや利用するユーザーの属性の違いを考慮する必要があります。


また、ソーシャルメディアにアクセスはするが、書き込みはしないユーザーも存在するなど、ソーシャルリスニングに活用するデータにはさまざまなバイアスが存在します。そのため、こうしたバイアスがある前提で分析結果を解釈しなければいけません。


③データの取り扱い方法


定量的分析や定性的分析を行う前に、取得したデータのメディア特性や分析対象の特定ブランド名、商品カテゴリーによって、データをある程度クリーニングするといった工夫が必要です。


例えば、Amazonのアフィリエイトリンクを踏ませることを目的としたボットアカウントや、特定ブランドの公式アカウントによる発言、リツイートなどの拡散機能による発言数を考慮するかなど、媒体の特徴や分析対象とするデータの選定には十分に注意する必要があります。


また、昨今の情勢からユーザーの属性(性別や年代)を特定するような情報は(ある程度の推測はできるものの)基本的に取得できないため、発言者の発言のタイミング、発言前後の内容を踏まえた解釈をどこまで行うのが現実的なのか考慮しておくべきです。


3. ソーシャルリスニングでできること


では、ビジネスの現場でソーシャルリスニングを活用するに当たり、どういったところに価値があるのか考えてみます。


①口コミの影響力


まず、そもそもソーシャルメディア上の口コミの影響力がどの程度あるのか、NTTコム リサーチが実施した調査によると、多くの消費者が商品の購買にあたって口コミを参照しており、消費者の67.5%が口コミを見て購買を決めた経験があるという調査データがあります。



(画像引用:https://research.nttcoms.com/database/data/001436/


つまり、ソーシャルメディア上の口コミには消費者の購買意向につながるような情報が多分に含まれており、そういった情報を有効に抽出/活用することができれば、企業のマーケティング課題解決に役立つ示唆が得られると考えられます。


②従来のマーケティング調査では得られなかった情報が得られる


以下の画像はアメリカの髭剃りブランド・ジレットフュージョンが行なったアンケートとソーシャルリスニングの結果です。




(画像引用:スティーブン・D・ラパポート「リッスン・ファースト! ソーシャルリスニングの教科書」, 翔泳社, 2012年)


アンケート結果では、自社商品をこれから使わない理由について「他のかみそりがよい」や「高すぎる」などといった回答を得ていましたが、ソーシャルリスニングによる調査では、アスキングによる調査では一度も出てこなかった「偽物、うそっぽい」といったなぜ「他のかみそりが良いのか」「高すぎる」と感じるのかの原因とも考えられる情報を得ることができています。


③消費者のインサイトに迫れる


インサイトとは、簡単に言うと人を動かす隠れた心理のことで、消費者自身は気づいていないものの、「コレが欲しいんでしょ?」と示されると、「まさにそれが欲しかった」となるような潜在的なニーズのことを指します。


ソーシャルメディア、主にTwitterを分析していると、こうしたインサイトのヒントとなるような、ユーザーが目を引く行動を取っているツイートを発見できます。例えば、以下のようなツイートがありました。



このツイートを見るに消費者の中には「ランニング」でヘトヘトに疲れた後に「ビール」を飲みたいという欲求を駆り立てられる人が一定数存在しており、また発信はしてはいないものの、こうした潜在的な、他者から訴求されるまで自分でも気付いていなかった欲求(インサイト)を抱えている消費者が存在し得ると考えられます。


こうした行動は「新奇事象」と呼ばれ、まだ一部の消費者が行っているに留まるものがほとんどですが、そこから読み取れる消費者心理は、商品開発や広告作成などに大いに役立ちます。


④自社アカウントのフォロワーのユーザー像を知れる


自社アカウントのフォロワーのプロフィール文などから、フォロワーがどういったユーザーなのかの大枠を分析し調査することができます。さらに投稿にエンゲージメントしているユーザーを分析することで、現状のアカウント/投稿内容に対して好意的なユーザーを分析することが可能です。


また、自社アカウントの過去投稿へのエンゲージメント傾向や、自社商品に関する口コミを分析することで、これまでの運用の振り返り、今後の運用方針の策定ができます。


⑤UGCを分析し、まだフォローしてくれる見込みのあるユーザー像を知る


自社商品に関する口コミを分析し、フォローしてくれる見込みのあるユーザー像を把握することができます。また、自社商品に対して好意的な言及をしているユーザーをリスト化し、そのアカウントにTwitter広告を出稿する、といったことも可能です。


例えば、ポジティブな発言の可能性が高い投稿を抽出し、図のようなワードクラウドなどの可視化手法を用いて頻出ワードを調査してみます。



こうしたワードを元に、例えば「アイスコーヒ」について実際どのような口コミが行われているのか調査するなど、情報を深掘りしていくことで、自社商品についてどういった人がどのような口コミを行なっているのか、といった傾向が見えてきます。


4. ソーシャルリスニングの活用場面


ソーシャルリスニングにはおもに「マーケティング・リサーチ」及び「効果的なSNS運用」の2つの活用方法があります。


①マーケティング・リサーチ


SNS上の口コミデータから定性/定量的なリサーチを実施することで、例えば以下のようなリサーチが可能です。



  • 消費者からの評判調査

  • アンケート項目の精査

  • リスティング広告、SEOへの活用

  • 新商品や新企画、キャンペーンの反応測定

  • 広告クリエイティブの策定

  • インサイト発見

  • 消費者像の把握


②効果的なSNS運用、より多くの口コミ創出


ソーシャルリスニングを通じて、例えば下記になります。



  • 自社(自社アカウント)に好意的な可能性が高いユーザーの特徴を分析

    • 公式アカウントのフォロワーの分析

    • 投稿にエンゲージメントしているユーザーの分析




  • どの層にどういった訴求を行えば口コミが増加するかを分析

    • UGCの分析

    • UGCを創出しているユーザーの分析




これらの分析を行なった上で、SNSでの投稿や広告設定、キャンペーン設計を行うことでより効果的な運用が可能になります。


5. まとめ



今回はそもそもソーシャルリスニングとは何か、ソーシャルリスニングを実施する上でどういった点に留意する必要があるのか、ソーシャルリスニングを実施する事でどういった価値が得られるのか、またどういった目的に活用できるのかについて説明しました。


次回以降はより詳細な分析手法について、どういった分析を行えばどういった示唆が得られるのかにフォーカスして説明していきます。


■参考文献:



  • スティーブン・D・ラパポート「リッスン・ファースト! ソーシャルリスニングの教科書」, 翔泳社, 2012年

  • 岸川 茂, JMRX NewMR研究会「この1冊ですべてわかる オンライン定量・定性調査の基本」, 日本実業出版社, 2021年

  • 高見 俊介「ロイヤルティリーダーに学ぶ ソーシャルメディア戦略」, ファーストプレス, 2011年

  • 松本 健太郎「なぜ『つい買ってしまう』のか?『人を動かす隠れた心理』の見つけ方」, 光文社新書, 2019年


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この記事を書いた人:澁谷海渡

アニメとラーメンをこよなく愛するデータサイエンティスト。学生時代は主にデータマイニング技術に関する研究を行なっている研究室に在籍し、類似数式検索技術に関する研究に従事。ガイアックスに新卒入社後は、データ収集基盤の構築や社内システム開発を行うエンジニアとして活動。現在はソーシャルメディアマーケティング事業部で主にソーシャルリスニングの研究などのデータ分析業務に従事。