ソーシャルコマースの「基礎知識」と「オススメ書籍」
2012/01/24
ソーシャルコマース ~業界キーマン12人が語る、ソーシャルメディア時代のショッピングと企業戦略~
2010年はフラッシュマーケティング、2011年はFacebook、その次には一体何が流行るのか?
ゲーミフィケーション、ソーシャルCRMなど様々な見方がありますが、候補の1つに「ソーシャルコマース」があります。
ソーシャルコマースは2010年に登場し、2011年から徐々に話題になって来ました。現状では少なくとも6,400店舗(*注1)以上のECサイトがソーシャルコマースに乗り出しています。また、楽天・Yahoo!ショッピングなどプラットフォーム側もソーシャルへの取り組みを始めています。今年はその裾野が広がっていきます。
*注1:6,400店舗という数字は、2011年10月6日時点の楽天S4のサービス申込店舗数4,200店舗と、2011年8月時点のソーシャルゲートウェイの導入者数約2,200店舗を合計したものです。他ソーシャルコマースベンダーの導入者数も含めると、実態は2012年1月現在のソーシャルコマース取り組み店舗数は、6,400店舗を大幅に上回ると思われます。
今回の記事では、マイナビさんより献本頂いた書籍「ソーシャルコマース」の紹介も兼ねて、「ソーシャルコマース」を理解する上での基本的な情報と、今回の書籍の読みどころをご紹介します。
1.ソーシャルコマースとは?
まずは「ソーシャルコマース」というのがそもそも何なのか?を整理します。既にご存知の方は読み飛ばして頂いて「2.今回の書籍の読みどころ」をご覧下さい。
「内部型」と「外部型」
ソーシャルコマースとは、簡単に言ってしまえば「ソーシャルメディアを使った小売」を括った言葉です。
ソーシャルメディアで商品の紹介をする事や、ソーシャルメディア内にECを設置する事も「ソーシャルコマース」(内部型)ですし、今あるECサイトにソーシャルメディアの機能を加える事も「ソーシャルコマース」(外部型)です。
「オンライン」も「オフライン」もソーシャルコマース
また、「リアル店舗とソーシャルメディアの連動」もソーシャルコマースに含まれます。オンラインかオフラインかにこだわらず、「小売」にソーシャルメディアを絡めていれば、ソーシャルコマースであると考えて問題ありません。
書籍の中では、米メディア『Social Commerce Today』の定義を引用しながら、以下のようにソーシャルコマースを定義しています。「つながる」機能であるソーシャルメディアを通したモノの売り買いが表現されています。
■ソーシャルコマースとは?
ユーザーが「つながるところ」でモノを買い、モノを買った場所で「つながる」ことを促すこと。その一覧の文脈の中でソーシャルメディアを活用すること。
(引用:「ソーシャルコマース」)
「f-commerce」にも内部型と外部型がある。
昨年、Facebookのブームに合わせて「f-commerce」という考え方も出てきました。
これは、
- アプリを用いてFacebook内にECを設置する。
- Facebookコネクトやソーシャルプラグインを(Facebook外部の)ECサイトに実装する。
- チェックインクーポンを用いて店舗への来店誘導をする。
といったコマースへのFacebookの活用法をさした言葉です。
「Facebook内でのECの設置」では、Facebook内だけで決済を完結できる「ソーシャルゲートウェイ」という国内向けのサービスも出てきています。
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以上のようなところが、一通りソーシャルコマースに関連して押さえておくべき知識です。
それでは、ECや小売の会社は、具体的にどうソーシャルメディアを活用していけばよいか?それを考えるために役立つ情報が今回の書籍に詰まっています。
2.今回の書籍の読みどころ
f-commerceは外部型だけで良い?
例えば、f-commerceでは何をすれば良いか。
単純にFacebookページにECタブを設けるのは意味がないという意見も聞いたことがありますが、それは違うと私は考えています。
もちろん、ECサイトの売上・集客のインパクトとしては、「Facebookコネクト」や「ソーシャルプラグイン」を利用したほうが高いはずです。
ですが、せっかくFacebookページを作り、Facebookページに来訪して貰う機会を作れているのであれば、わざわざ外部ECサイトに遷移させずその場で購入して貰える仕組みを用意しておいたほうが良いです。
そうしたほうが画面遷移が少なくなり、CVRが高くなります。
今ならf-commerce内部型を安価に制作できる。
f-commerce内部型の制作・運用に何百万円もかかるという事であれば、費用対効果が見合わないのでオススメしません。
しかし、今であれば各ECプラットフォーム、ECパッケージベンダーが提供しているツールを利用すれば、無料から数万円程度で利用できるのです。
こんなに安価に出店できるのであれば、出さない手はありません。
書籍の中でも、ソーシャルコマース先進企業のライスフォースさんから、Facebook内で決済まで完結させる仕組みを導入した理由として、以下のような言及もされています。
外部サイトに遷移すると、当然遷移する画面数も増えますし、煩雑さが増します。
引用:「ソーシャルコマース」
書籍の中のソーシャルコマース事例は必見!
少し前置きが長くなりましたが、ライスフォースさんからの言及のように、書籍の中では
- 「f-commerceをやるべきか?」
- 「ソーシャルコマースはどれくらいの効果があるのか?」
などの疑問に対して、ソーシャルコマース先進企業からのコメントが貰えています。これから取り組むか迷っている企業にとっては、とても参考になるはずです。
他にはこんな企業のインタビューもあります。
書籍の中では、ライスフォースさんだけではなく、事業会社からプラットフォーム、ECパッケージベンダーまで幅広いソーシャルコマースのステークホルダーが登場して、これまでの知見を紹介してくれています。
事例として登場する企業
○事業会社
・BAD LAND
・ライスフォース
・iQON
・リトルムーン
・漫画全巻ドットコム
○プラットフォーム
・楽天市場
・Yahoo!JAPAN
・mixi
・bidders
○ECパッケージベンダー
・アラタナ
・GMOペイメントゲートウェイ
・paperboy&co.
例えば事例のなかで、iCONを運営する株式会社VASILYの金山社長からは、
- 「サイト全体の10~15%がFacebook経由のアクセスとなっています。」 p.134
- 「Facebook経由のユーザーの1ユーザーあたりの消費PVは一般のユーザーの2倍以上あります。」p.137
といったコメントもあります。書籍中ではこういった「実際にFacebookを活用している事業会社さんの効果の声」がいくつも紹介されているので、皆さんの参考にもなるはずです。
それ以外の読みどころ
他にも以下のような興味深い内容が書かれています。
▼その他の読みどころ
- ソーシャルコマースによって、ショッピングがどうなるか? p.30前後
- ソーシャルメディアのユーザー視点のメリット p.15~
- ソーシャルメディアの企業視点のメリット p.20~
- O2Oコマースの海外事例 p.52~53
O2Oコマースの海外事例では、詳細は書籍をご覧頂ければと思いますが、米国マクドナルドが店舗への来客数を33%向上させた方法とデータの紹介もされています。
『ソーシャルコマース』専門の書籍は今のところ日本では出ていないはずです。この書籍が日本唯一のソーシャルコマース本です。これからソーシャルコマースに取り組もうと考えている方は、目を通すと全体像が分かって役に立つと思います。
以上、という事で『ソーシャルコマースの「基礎知識」と「オススメ書籍」』でした。今回の記事はお役に立てましたでしょうか?
(執筆/編集 井出一誠:Facebook、twitter )
この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部