ファンと作るランキング記事が数億円の露出効果に! H.I.S.のSNS運用事例
2016/07/04
旅行需要の喚起をミッションとしてSNSを活用している株式会社エイチ・アイ・エス。同社の「SNS旅トレンド調査」のコンテンツはたびたびメディアにも取り上げられ、露出の増加、認知の向上に成功しています。こういった成果が認められ、2016年3月には経済産業省がまとめた「ソーシャルメディア活用のベストプラクティス」にも掲載されました。
今回は同社でSNS戦略を担当している丹下様と、同広報担当の高司様に現状のSNS活用状況や今後の展望を伺いました。
Interview / ソーシャルメディアラボ副編集長 小東真人
- 目次
- プロフィール
- 独自性たっぷりな「SNS旅トレンド調査」の魅力
- 投票によるランキング記事で旅行需要を喚起。旅好きなユーザーとのつながりが強みに
- メディアに取り上げられやすいコンテンツ&タイミングで反響を獲得
- KPIの一つはメディアの反響
- 社内の理解は大切! 運用者は「編集者」として情報を集める
- オウンドメディアとSNSの運営
- SNSではサマリーを、オウンドメディアではより深い情報を
- 関心の高いユーザーはオウンドメディアからSNSへシェアしてくれる
- 今後の展開
- O2O施策と組み合わせて、旅好きな人のコミュニティを強化
- ユーザー参加型のインスタグラムキャンペーン
プロフィール
丹下陽一郎氏:株式会社エイチ・アイ・エス 本社営業戦略室
コーポレートコミュニケーショングループ チームリーダー
高司奈奈氏:株式会社エイチ・アイ・エス 広報担当
独自性たっぷりな「SNS旅トレンド調査」の魅力
投票によるランキング記事で旅行需要を喚起。旅好きなユーザーとのつながりが強みに
小東:投票企画「SNS旅トレンド調査」を始められた背景や目的を教えていただけますか?
丹下氏(以下敬称略):SNS運用を始めた当初は、需要喚起や旅行のきっかけ作りのために旅行情報を提供していました。ですがそれだけではなく、より多くのお客様に参加していただいて何かを作れないかと思ったんです。そこで、利用していたサービスの投票機能を使ってみたのがきっかけになりました。
特定のテーマについてユーザーに投票してもらい、その結果をランキング形式で発表している。
小東:具体的に、どのようにユーザーを巻き込んで記事を作っているんですか?
丹下:我々はユーザーの巻き込み方を三段階で考えています。
一段階目は投票内容の事前募集。たとえばSNSの投稿で「絶景ポイントを教えて下さい」と呼びかけて約20個の候補を挙げます。
二段階目は決まった候補に対して実際にユーザーに投票してもらうことです。
三段階目はニュースリリースやSNSで結果発表することです。そうして、一緒にコンテンツを作り上げている一体感を持ってもらえるようにしています。
丹下:はい。それともう一つ目的があります。今世の中には旅行のまとめ情報が山ほどありますが、我々のアカウントをフォローしてくれている人たちは「旅好き」の方が多いと思うんです。なので「旅好きみんなが決めた〇〇ランキング」というふうに打ち出して、他の情報とは違うということを伝えたいんです。我々は旅行会社なので、旅好きな人たちとの接点があるのが強みだと感じています。
メディアに取り上げられやすいコンテンツ&タイミングで反響を獲得
小東:どうやって世間から反響を得られるキャンペーンを企画するのでしょうか?
丹下:それはやりながらわかってきたのですが、やはり季節性があるものやタイミングがあっているものの反響がいいです。旅行は予約する時と出発する時とで時差があるので、お客様の注目が集まっていて反応が期待でき、かつメディアにも求められるタイミングを見極めて企画しています。
たとえば、毎月「○○の日」ってありますよね。そういうのはあらかじめ狙っておいて、少し前にランキングを出しています。初めはその日ぴったりに情報を流していたのですが、それだと基本的にWebのニュースでしか発信されません。マスメディアにも取り上げてもらえるような時間的な余裕を作るようにしています。
高司氏(以下敬称略):国内旅行だと旅行予約と情報収集のタイムラグが少ないので、たとえば「春の日本の絶景ランキング」などは、非常に多くのテレビ局や新聞社の方々に取り上げていただきました。北海道の桜の名所「五稜郭」が1位だったのですが、北海道新幹線が開通することもあって取り上げやすい要素が揃っていたのだと思います。
KPIの一つはメディアの反響
小東:SNS運用の現在の目標設定はどのようなものでしょうか?
丹下:SNS運用を通して、どういったPR的価値を出せたかを目標の一つにしています。Facebook投稿などのエンゲージ率も意識していますが、それはあくまで部内目標です。それより重要視しているのは、ニュースリリースした旅ランキングが、「どこのメディアに掲載されたか」です。Yahoo!ニュースに取り上げられたとか、どの情報がどの媒体で取り上げられたかなどを共有する方が、社内からも反響を得られます。
社内の理解は大切!運用者は「編集者」として情報を集める
小東:配信情報が非常に多岐に渡りますね。社内の他部署・他事業部からの理解も必要なのでしょうか?
丹下:必要ですね。旅の情報を毎日発信するには、我々の情報だけでは浅いんです。海外の現地店舗のスタッフなどの方がより多くの生の情報をもっているし、思いもあります。ですので、我々は「編集者」として伝えたい人から情報を受け取って、より多くの人にそれを届けられるようにしていくために社内で役割分担ができるようになりたいと考えています。
オウンドメディアとSNSの運営
SNSではサマリーを、オウンドメディアではより深い情報を
小東:SNSとオウンドメディアの使い分けは?
丹下:SNSではフロー情報になってしまって、コンテンツが資産化できてないと気づいたんです。せっかく労力をかけるなら二次利用できるように、オウンドメディアを作りました。検索からの受け皿にも使用できたらと思っています。SNSではサマリーとして発信し、より深く知りたいという方にはオウンドメディアを読んでいただけるようなものにしようとしています。
関心の高いユーザーはオウンドメディアからSNSへシェアしてくれる
小東:SNSとオウンドメディアでは、ユーザーの使い方にそれぞれ違いを感じましたか?
丹下:はい。投稿に対するコメントを見ていると、SNSで画像を見ただけの方とオウンドメディアを閲覧してくださった方とが一目瞭然なんです。Facebookページのタイムラインの投稿だと、流し読みされる場合が多いのではないかと思いますが、オウンドメディアのコンテンツだとわざわざクリックして、意思を持って読んでくださる方が多い。ですので、特にオウンドメディアでは、そういった方々におもてなしして満足していただけるコンテンツ作りを心がけています。
H.I.S.オウンドメディア「Like The World」
小東:関心の高い方はオウンドメディアを見て、SNSに流れるんですね。
丹下:そうですね。流れることに加えて、オウンドメディアの記事をSNSにシェアしていただいております。「Like The Wolrd」ではみなさんの旅先からの写真を募集して、それを公開していったり、みなさんが旅自慢できる場所にしていったりして、一緒に作れるコンテンツにしていけたらと思っています。
実際、我々が発信した情報に対して「ここに行ったことがある」とご自身の体験を熱く語られる方もいらっしゃるんです。そういう場所が求められていると感じているので、それを記事として体裁を整えて発信したらもっと喜んでもらえるかもしれないとも考えています。
今後の展開:O2O施策と組み合わせて、旅好きな人のコミュニティを強化
「H.I.S.旅と本と珈琲と」の事例
小東:現状かなり有効にSNSを活用できていると思いますが、今後はどのように展開してきたいと考えていますか?
丹下:引き続き需要喚起やきっかけ作りには力を入れていきます。具体的には、現状のコンテンツ発信からさらに発展して、旅を促すためのコミュニティ化やO2O施策を考えています。
高司:去年の10月に旅のきっかけづくりを提供するコンセプトショップとして「H.I.S.旅と本と珈琲と」というお店が表参道にオープンしました。猿田彦珈琲さんの美味しいコーヒーとブックディレクター幅允孝氏に選書いただいた旅の本が楽しめる場所です。旅行にいきたいとぼんやり思っていても、パンフレットがずらりと並んでいる旅行会社の店舗には入りづらい、そんな人でも気軽に訪れていただけるような空間を作っています。
「H.I.S.旅と本と珈琲と」 店内の様子
高司:お客様から募集した写真を引き伸ばして店内に飾っていたり、旅にまつわるイベントが開けるスペースがあったりと、オンラインとオフラインをつなぐ場所にもなっています。
ユーザー参加型のインスタグラムキャンペーン
小東:旅好きな人たちが集まれる場があるというのは強いですね。コミュニティ化については、どのような施策をとっているのでしょうか?
丹下:最近始めたのですが、インスタグラムで旅する女子のための「タビジョ」というアカウントを作り、#タビジョをつけてもらった写真をリポストしています。
H.I.S.が運営する旅する女子のためのアカウント「タビジョ」
6月は「カラフルな旅」をテーマにしたフォトコンテストをしています。インスタグラムで優秀だった写真は表参道の店にも飾りますし、そのテーマで我々がリポストした写真の中で一番多くの「いいね!」を集めた方に一週間ほど、アカウントをジャックしていただきます。
共通のハッシュタグで旅好きな女性を集めて、注目される場所を作り、最終的には「公式タビジョ」を見出していき、「H.I.S.旅と本と珈琲と」でイベントなどを開催できればと検討しています。
小東:O2O施策にも積極的に取り組まれているんですね。ありがとうございました!
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