Instagramこそファンマーケティングの宝庫! ライスカレー製作所に聞く、あるべきファンマーケティングの姿

2017/05/15


Instagramアカウントの運用から、リサーチ・分析、マーケティングまでを行う株式会社ライスカレー製作所。


単純なアカウント運用だけでなく、運用を通してどのようにフォロワーとコミュニケーションを取り、継続的な関係を築き、ファンになってもらうか。そして育てたファンと一緒にどのような価値をInstagram上で生み出していくかまで。同社が提供しているサービスについて代表取締役社長 大久保 遼氏にお話を伺いました。


※編集部注(2017年5月15日):アカウントURLを訂正しました。


    ■目次


  1. プロフィール

  2. ライスカレー製作所が提供する継続的なInstagram上でのコミュニケーション

  3. Instagramでは、フォローし続けてくれる人はファンになる可能性あり

  4. 運用コンセプトを抽出し、継続的に関係を築いていく

  5. ファンとの継続的で丁寧なコミュニケーションが、熱量の高い関係性を生む

  6. フォロワーを集め、集めたフォロワーをさらに活かす

  7. 画像分析が人気投稿を生み出す


1.プロフィール


大久保 遼氏:株式会社ライスカレー製作所 代表取締役社長



2008年聖光学院高等学校卒、2012年東京大学経済学部卒。同年ゴールドマン・サックス証券投資銀行部門入社。主に広告、通信・メディア、テクノロジー関連のM&A、ファイナンシングのアドバイザリー業務に従事。2014年9月よりオンライン広告テクノロジー企業であるMomentum株式会社を創業。2016年7月に同社代表取締役を退任し、株式会社ライスカレー製作所の新代表取締役に就任。


2. ライスカレー製作所が提供する継続的なInstagram上でのコミュニケーション


ーー本日はよろしくお願いします。まずは簡単に、ライスカレー製作所の事業やサービスを簡単にご紹介頂けますでしょうか。


大久保 遼氏(以下・敬称略):弊社はビジョンに「世界中の“体験”をつなぎ、新たな“体験”を生み出す。」という言葉を掲げています。ここでいう体験は、ユーザーが投稿した画像や動画といったビジュアル情報のこと。このビジョンをもとにInstagramに関連するマーケティングサービス「オードブル」と、オードブルに紐付くサービスとして画像分析サービス「アルケミー」を展開しています。


オードブルは、企業のInstagramアカウントを立上げから運用まで代行するものです。うちが得意とするのはファンマーケティングで、闇雲にフォロワーの数値を増やすだけではなく、企業に対してロイヤリティの高いファンを育て、継続的にコミュニケーション取っていく場としてInstagramアカウントを育てています。


そのため、単に運用代行するのではなく、ハッシュタグキャンペーンや公認サポーターを活用したアンバサダーマーケティングを併用し、ユーザーに企業に関連する写真を投稿してもらい、投稿写真を企業の公式のアカウントで紹介。そこで企業とユーザーとの関係性を作り、継続的にコミュニケーションをとれるかたちを目指しています。


3. Instagramでは、フォローし続けてくれる人はファンになる可能性あり


ーーファンマーケティングという言葉にも各社それぞれ認識が異なるかと思いますが、御社で考えるファンマーケティングを具体的に教えて頂けますか?


大久保:そうですね、一般的にファンの定義は、ホームページに来てものを買ってくれた人、といった何らかの成約アクションをおこした人だと思います。一方うちでは、毎日、または週に数回の継続的な情報発信をしても、アカウントをフォローし続けてくれる人をファンと定義しています。


そもそもInstagramでフォローしてくれている時点で、ある程度ファンになる素地はあると考えています。そして企業側が月に十数枚以上投稿し、コミュニケーションを取るなかでも、解除せずにフォローしつづけてくれる人は、そのアカウントや世界が好きな人。それはつまりファンでしょう。


もう一つファンとして意識しているのが、積極的にその企業に関する情報をユーザー自身が発信している人です。たとえば飲食店であれば、そのメニューや店舗のハッシュタグ、名前で投稿するような人。彼らは自らその企業に関する情報を写真で発信しようとしているわけですから、ファンになる可能性はかなり高い、というわけです。


4. 運用コンセプトを抽出し、継続的に関係を築いていく



ーーでは、実際どのような流れでファンを育てていくのでしょうか?


大久保:まずはじめ、運用するよりも前の段階から入る場合は、運用していくにあたっての指針をまとめた「運用コンセプト」を立てることを大事にしています。どんな目的・意図でアカウントをつくり、どんなファンの人たちにどんなメッセージを届けるかを決めるものです。このコンセプトは企業側からの発信というよりは、現状ユーザーさんが魅力に感じている部分を抽出します。そこに企業側のメッセージをすり合わせていく。


そのために、Instagram上でお客さんのやりたいテーマに関して、どういう投稿をユーザーがしているかについてリサーチします。たとえば、ホテルのアカウントをつくる場合ですと、そのホテルに関するハッシュタグがついた投稿が大体何百、何千枚とある。


ユーザーがどういったシーンを面白いと感じて投稿しているのかをよく調べます。Instagramは写真動画のSNSですから、テーマに対してどんな切り口で写真や動画として残したいと思われたか。そこと、企業側が発信したい内容をすりあわせて「運用コンセプト」を作っていきます。


実際に運用を始めてからは、流入をとりやすいハッシュタグや、いいね!のつきやすい画像の分析を繰り返して、いいね!がつきやすい投稿を探していきます。「いいね!は売上につながらないので意味がない」と考えられる方もいらっしゃいますが、うちはいいね!を大事にしています。


いいね!がたくさんつけば、人気投稿に出て、フォロワーも増える。ここは連動します。結果的にいいね!がたくさんつくアカウントでないと、長い目線で見たときに、フォロワー数が頭打ちになってしまうんです。


なので、まずはファンのプールを育てる。どんなに短くても三か月は続けないと、入り口にすら立てません。三か月やってみて、自分たちが想定しているようなファンが集まってきたら、そこから先さらに継続的なコミュニケーションを形成していきましょうとクライアントと話すようにしています。


5. ファンとの継続的で丁寧なコミュニケーションが、熱量の高い関係性を生む


ーーファンを育てていくためには、具体的にどのような施策を行うのでしょうか。継続的にコンテンツを提供していくのはもちろんだと思いますが、それ以外にもあったりするのでしょうか。


大久保:仰るとおり、継続的かつ定期的にコンテンツを出すことは大事です。もちろん、多すぎず、少なすぎずのバランスも重要にはなってきますが。もう1つ挙げるとすれば、ベタですが、継続的なハッシュタグキャンペーンの打ち出しはとても大事にしています。


もちろんハッシュタグを分析して狙いやすいタグを探っていくのも1つですが、もう1つは、ユーザーさんが参加できるものを用意するという意味あいもあります。そのときどきのユーザーニーズと、クライアントが届けたいメッセージをすり合わせて、参加したくなるようなハッシュタグキャンペーンを継続的に企画していくんです。

頻度は3か月に1回とかで十分なんですが、継続を怠らないことが大事ですね。ハッシュタグキャンペーンは、一回で終わるものではなく、何回も繰り返すことで、フォロワーも楽しみにするという継続的な関係性を築けるんです。



https://www.instagram.com/simplehome_official/


また、ファンの人たちはメッセージくれたりするので、丁寧なコミュニケーションを取ることも心がけています。「シンプルホーム」という弊社で運営しているアカウントを見て頂ければ分かるかと思いますが、コメント返信も可能な限り丁寧に返すようにしています。現在フォロワーは約1万7千人弱ぐらいなのですが、基本はユーザー投稿をもとに運営しています。


6. フォロワーを集め、集めたフォロワーをさらに活かす


ーーここまで育てたファンはどのように生かしていくのでしょうか。一般的にはサイトへの送客などがメインにはなってくるとは思いますが。


大久保:うちでは育て集めていたフォロワーをサイトへ送客するだけにしないことも大事にしていますね。Instagramのフォロワーを見てみると、そのなかにはインフルエンサーや、フォロワーが少なくてもすごいいいコンテンツ投稿している人がいる。その人たちにブランドのサポーターになっていただき、毎月そのブランドに関連する商品をサポーターの人に投稿してもらうといった施策も行っています。


集めたフォロワーの人たちにアンバサダーマーケティングのようなかたちで宣伝をしてもらうもしくはそのファンの人たちの声を聞くためにサンプリングを行う場合もあります。このように、ただフォロワーを集めてサイトに送るということだけではなく、集めたファンをさらに活用するような施策も用意しています。


外部からインフルエンサーをアサインしても、そこに集まるのはそのインフルエンサーのことが好きな人たちだけなんです。そのコミュニケーションは一回だけだと思っていて、あるブランドに全く興味のないインフルエンサーに対してブランドを宣伝してもらっても、そのフォロワーは、そのインフルエンサーが好きだからそのブランド商品を一度買うだけ。結局継続的なコミュニケーションではないので、一回で終わっちゃうんです。


うちの場合は、ファンの中から、インフルエンサーを探していく。すると、熱量が全然違うんです。インフルエンサーがそもそもそのブランドが好きなので、愛を持ってブランドのメッセージを伝えてくれる。すると、確実にインフルエンサーのフォロワーにも熱意が伝わりますし、1回2回ではなく継続的に投稿を上げてくれて、コミュニケーションの質も変わり、最終的にはそのインフルエンサーのファンがブランドのファンに育ってくれるんです。


7. 画像分析が人気投稿を生み出す


ーーオードブルと一緒に行っている、画像分析サービス「アルケミー」についてもお話を伺えますかでしょうか。


大久保:「アルケミー」では、投稿画像を解析しどのような要素が、ユーザーのエンゲージメント率に関わってくるかを分析しています。たとえば「いいね!」がついた画像の共通項を探す。どういう切り口で画像分析したらいいかってそのアカウントですとかテーマに関してわかってくるんです。

 ▲画像に含まれる要素を非常に細かく分析している


 ▲その投稿の「エンゲージメント率」と「フォロワー数」から評価していく


切り口を見つけるところまでは人力なのですが、1日1枚とか2日に1枚投稿したもののリアクションを見て知見を溜める。すると、リアクションがいいものの共通項っていうのはある程度見えてくるんです。切り口を用意せず全部を分析しようとしてしまうと、傾向が出づらくなってしまうので、切り口までは人間が設定し、あとは自動で傾向を出していくという流れになっています。


同じ画像分析でも、一概にこのこういうかたちで画像分析すれば、正解というのはなく、毎回毎回お客さんごと、アカウントごとに解析する対象は変わってきます。その写っているものが大事なのか、写っているシーンが大事なのか、人が写っているのか写ってないかが大事なのか、あるいは時間帯か、撮り方かみたいなところは結構変えて追っています。


▲カテゴリ毎の評価も、グラフで可視化できる


「このテーマだったらこういう切り口の写真が受けやすい」っていうのがある程度みえてきていたりします。運用初期段階の画像選定は企業側が出したいコンセプトとユーザーさんにささりそうなもので、重なっているような写真を選んでいますね。


ただ、そこから先の運用は結構難しく、いつも刺さりがいい画像だけど紹介していくと、論理的には同じ系統の画像ばっかりになるので、ユーザーさんは飽きてしまうんです。なので、ある程度ちがう傾向の写真も、ノイズとして混ぜる。その作業を永遠に繰り返し続けるんです。ユーザーが飽きないように飽きないようにっていうので、細かく気を遣っています。


8. ライスカレー製作所の今後



ーーここまで、Instagramのファンマーケティングのお話を伺ってきましたが、今後御社としてはどこの部分をより強めていきたいと考えていらっしゃいますか。


大久保:そうですね、今後は立ち上げからではなく、既存でファンを抱えているけれどフォロワーを生かし切れていないクライアントに、さきほどのファン向けのサンプリングやサポーター制度といったものを展開していきたいと考えています。


フォロワーを増やし、露出を増やすといった視点から、溜めたフォロワーとどうコミュニケーション取っていって、どういったマーケティングに参加してもらうか。溜めたフォロワーを活かしたマーケティングに力を入れていくみたいなところです。現状のInstagramマーケティングは、フォロワーを溜めるだけで止まっているとかろが多いと思っていて。そこから先、溜めたフォロワーをどう使っていくかに知見があるからこそ、そこをもっと広げていきたいと考えています。


Instagramならではの活用を考えないといけないんです。たとえば、ものすごいネームバリューがあるブランドであれば、何もしなくても勝手にフォロワーなんて増えていく。それこそ、商品を並べておくだけでいいわけです。そういったクライアントこそそこから何ができるかを考えなければいけないんです。


たとえば、5万人フォロワーがいるといっても、テレビCM打った方がリーチできる人数は多いわけです、数でいったら。であれば単純にリーチさせるだけではない、Instagramだからできる関係性の構築や体験を提供して、ファンになってもらう。そこでファンになってくれた人たちが、たとえば10人20人にそのアカウントの魅力を伝えたら、ファンになってくれる人は何十倍にも増えていく。そういったバイラルを作っていける関係性に、今後力を入れていきたいですね。


ーーありがとうございました!