【連載企画】いま押さえておくべきは何か?プラットフォーマーが語る、Facebook・Instagram広告活用の現状
2017/10/10
「Facebook」に「Instagram」と、世界的に主要な2大SNSを擁するFacebook社。同社が抱える利用者へのリーチも魅力ですが、広告出稿のビジネス活用には企業の規模問わず強いニーズがあるといえます。
Facebookは利用者が実名制で細かく情報を登録している為、それぞれの利用者の関心・興味に基づいた情報に沿った、比較的高い精度でセグメンテーションをした広告出稿ができ、狙いたいターゲット層にフルファネルでリーチが可能です。また、同様の機能はInstagramにおいても適応されています。両プラットフォームでは、少額から出稿できることもあり、中小企業を中心に幅広い広告ニーズに応えることも評価されています。
今回はそんな広告事業について、フェイスブック ジャパンクライアントソリューションズマネージャである丸山祐子氏に、ここ数年の動向とFacebook広告やInstagram広告のポイントについて伺いました。
Interview / ソーシャルメディアラボ編集長 大久保亮佑
- ■目次
- プロフィール
- Facebookの変化と現状
- フルファネルで対応できるFacebook広告
- 急成長するInstagram広告の強み
- 中小企業におけるFacebook・Instagram広告活用
- PDCAを回せる広告プランニングを
1. プロフィール
フェイスブック ジャパン クライアントソリューションズマネージャ 丸山祐子氏
2. Facebookの変化と現状
大久保:ここ数年でFacebook広告にまつわる環境はどのように変わってきたのでしょうか?
丸山氏(以下、敬称略):私がFacebookに入社したのは2013年なので、そこから約4年のお話をさせていただければと思います。具体的な数字で見てみると、現在世界でFacebookの利用者数は20億人、Instagramは8億人となり、日本だけでもFacebookが約2800万人、Instagramは2000万人という規模まで拡大しました。広告主の数もグローバルでは、Facebookが500万社、Instagramが200万社います。
成長速度も年々加速し、特にアジア太平洋圏は加速度的に拡大。決算発表でも公開していますが、アジアにおける売り上げは今年も前年比53%もの拡大が続いています。
大久保:日本でも他のアジアの国と同様に、拡大が続いていると。
丸山:おっしゃるとおりです。もう1つ大きな変化を述べるとすれば、ミッションの変化が挙げられます。もともとFacebookのミッションは「Make the world more open and connected」というもので、より多くの人を繋げることをミッションに掲げていました。このミッションが最近変わり「Bring the world closer together」となりました。つまり、コミュニティ作りを応援して、人と人がより身近になる世界を実現するということです。
広告事業もあくまでこのミッションを実現する一端。FacebookもInstagramも人々をより繋げていくために事業を行うことで、利用者を順調に伸ばし、広告主を増やしてきました。
3. フルファネルで対応できるFacebook広告
大久保:広告ビジネスとしての変化はいかがでしょうか?ここ4年ですと、テクノロジーの進歩などによって広告業界の勢力図も大きく変わってきたかと思います。
丸山:わかりやすいのはデバイスの変化でしょう。2013年に広告事業を始めた当初はまだFacebookもPCメインの媒体でした。私もFacebookに入社し広告を売り始めた当初は、Facebookの右側広告しかなく、お客様のもいいね!数の獲得のために広告を出すことがメインでした。
それが今やモバイルデバイスからの流入が多くなり、ターゲティングも進化している。大きな違いでいえば、クライアントがオウンドメディアを持ち、いいね!よりは、ターゲットに対して何%リーチできているか、小売在庫がどれだけ売れたか、エンゲージメント、態度変容など様々な指標で広告効果を見ていくように変化してきたことです。
大久保:Facebook広告の強みはフルファネルで使える点かと思いますが、この認知も数年間かけて徐々に広げてきたのでしょうか?
丸山:まさに、おっしゃるとおりです。順番にご説明していくと、特にここ数年で利用者数も増えているので、リーチできる数はかなり担保できるようになりました。質の部分でもFacebookは人ベースにアプローチができるので、例えばF1層だけ、特定の業界に携わる人だけアプローチしたいというニーズにも応えることができる。この強みでまずはトップファネルにアプローチをします。
続くミッドファネルでは、ブランドリフト調査等を提供することで、お客さんが出した広告をちゃんと覚えられているかという広告想起や、ブランド認知を促します。最後のローワーファネルでは、リターゲティングやテキスト広告で押していきます。アプローチするそれぞれのファネルに最適なソリューションを用意し、フルファネルに対応する。
この方針自体は以前からですが、認知を広げてきたのはここ数年の努力のお陰でもあります。
4. 急成長するInstagram広告の強み
大久保:Instagram広告も2015年より開始されましたが、Instagramの広告はどのようなニーズが集まっているのでしょうか?
丸山:Instagramの場合は、エンゲージ等と言うよりはInstagramならではの強みをどう活かすかという議論をすることが多いです。広告においてInstagramは大きく3つの強みを持っています。
1つめは利用者が興味ベースでフォローしていること。Facebookは友人や家族といった知人をベースにフォローしますが、Instagramは興味ベースでアカウントをフォローしている。利用者の8割は何らかのビジネスをフォローしており、ビジネス側としてもつながりやすいという利点があります。
2点目は、ビジュアルコミュニケーションのプラットフォームであること。ビジュアルが引き立つUIで、例えばインスタグラム ストーリーズ広告は何秒間もその企業のコンテンツをフルスクリーンで見せることができるのです。
3点目は、利用者が発見を求めてInstagramに来ていること。私の例で言うと、韓国へ旅行に行くときに、韓国旅行とハッシュタグで調べて、Instagram映えするのはどこだろうと探します。Instagramが検索エンジンのように活用されていることからも分かるように、新しい情報を求めて利用している人が多いことも強みのひとつなのです。
5. Facebook・Instagram広告の国内トレンド
大久保:Facebook・Instagram問わず、ここ数年強いトレンドとなっているものはあるのでしょうか?
丸山:やはり動画でしょう。動画の方が態度変容されやすいという調査結果もあります。 Facebookでは動画が1日に80億回再生されており、Instagramでも動画の視聴時間が前年比で80%増加、1 日あたりの投稿数も4倍に増加しました。
海外展開されたいお客さんにとって海外のTVCMを作るのはハードルが高いですが、SNSの動画広告ならかなりハードルが低くなります。たとえば、持っているアセットに英語のテキストを入れるだけでそのまま海外展開ができる場合もあります。
大久保:動画に限らず、海外と日本では広告の使われ方の違いはあったりするのでしょうか?
丸山:日本はスマートフォン大国で、スマートフォンの利用率・利用時間が特に高いという特徴があります。広告業界としてもインターネット広告へ予算が移りはじめている。ですからモバイル対応はもちろん必要ですし、ニーズに応えられるような広告を我々も用意していかなければいけません。
また海外含めどの国でもモバイルシフトが進んでいるのですが、アジア諸国はそれ以上にメッセンジャーコマースをはじめかなりアクティブに活用している印象があります。日本も海外のトレンドから学び、今後もっと力を入れていくべきだと思いますね。
6. 中小企業におけるFacebook・Instagram広告活用
大久保:予算規模のある大企業であればドラスティックな変化が起こせそうですが、中小企業ではどうでしょうか。企業規模による広告活用の違いは感じられますか?
丸山:FacebookもInstagramも少額から広告出稿ができるため、中小企業にも広く活用いただいていると感じています。TVCMなどは打てなくても、FacebookやInstagramの広告であれば予算規模的にも実施でき、効果も得られる企業はたくさんあります。
同時に、まだまだ開拓の余地はあると考えています。マーケティングをプロフェッショナルとしてやっている方が大手企業に比べ中小企業では多くないという現状もあります。もっと活用いただくために弊社主催で活用術のセミナーを実施することもありますし、今後も注力していくべきポイントだと思っています。
7. PDCAを回せる広告プランニングを
大久保:最後に、Facebook広告を利用している方に向けてアドバイスをいただけますでしょうか?
丸山:いつも我々がお客様とお話する際に意識しているのが、PDCAが回せるか否かと言う点です。ただ広告を打てばいいというわけではなく、そのキャンペーンをもとにどれだけの効果が得られて、それがビジネスにどれだけインパクトを与えたかをしっかりと追わなければいけません。
また、次のキャンペーンに活かせるような発見をして、より効率の良いキャンペーンを実施していくサイクルを作っていくことが大切です。「一旦やってみましょう」ではじめるのではなく、次を踏まえて目的を持った上で、「今回はこれを検証したいのでやる。次回はこれを検証する」といった形で段階的に広告の質を向上していく。
モバイルに最適化された広告は本当に些細な差で結果が変わってきます。モバイルユーザーは、だいたい2.7秒程度でこのコンテンツを見るか見ないかを決める。指を止めてくれる広告はなんだろうかという問いは常に考え続けPDCAを回していかなければいけませんね。
この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部