【#AWAsia レポート】デジタル広告の最前線! 注目の「インクリメンタリティ計測」とは?

2019/05/29


5月27日から三日間、六本木の東京ミッドタウンにて「アドバタイジングウィーク・アジア」が開催されます。この記事が公開している頃には、既に参加された方もいらっしゃるかもしれませんね。


同イベントでは「顧客体験」や「AI」、広告業界の「働き方改革」など幅広いテーマが取り扱われます。今回ソーシャルメディアラボ編集部では、特にFacebook社の動きに注目し、同社の催しに絞って参加することにしました。


初回のレポートのテーマは「広告の効果測定」について。編集部が特に重要だと思ったプログラム「まだラストクリックで効果を見ていませんか? – ビジネス成長につながるインクリメンタル計測」にフォーカスしてお伝えします。


Text, Photo / ガイアックスソーシャルメディアラボ編集長 小東真人(@gxsoc_kohigashi)


    ■目次


  1. イベント概要

  2. 現在のデジタル広告の課題

  3. インクリメンタリティ計測とは

  4. プロが考えるデジタル広告の今

  5. 最後に:Facebook社の展望


1. イベント概要


登壇者情報



●株式会社リクルートジョブズ デジタルマーケティング室 マーケティング部部長

金井統氏(写真左)


●株式会社電通デジタル 執行役員 広告事業ストラテジー部門長

杉浦友彦氏(写真中央)


●フェイスブックジャパン マーケティングサイエンス日本統括

中村淳一氏(写真右)


 


2. 現在のデジタル広告の課題



「広告の効果測定上、一番重要なのはどちらかというと相関ではなくて、因果関係」「広告を起因として、実際のビジネスに結果が出たか」という中村氏のコメントからプログラムは始まりました。


15年以上広告業界を見てきた同氏曰く、デジタル広告業界では古くから効果測定時にラストクリック測定を採用してきたそうです。


ただし個人がデバイスを複数持ち始めたことや、アッパーファネル(広告認知やブランド認知など)にも影響を与えられる新たな広告フォーマットが誕生してきていることから、従来の測定方法だけにこだわっていては正確に測れなくなってきています。


いわゆる「刈り取り」系の検索広告の結果はよく見るのに、態度変容に関わるディスプレイ広告や動画広告の結果が十分に加味されていない現状が。



同氏はサッカーの例えを出して「シュートを決めた人が偉いのか?」「間でパス出した人は(偉くないのか)?」と言い、因果関係が正しく評価されていない従来の課題を指摘していました。


 


3. インクリメンタリティ計測とは


では実際にラストクリック計測以外にどういった方法を採れば良いのでしょうか。会場ではインクリメンタリティ計測が紹介されました。


そもそも「インクリメンタリティ」とは、広告効果によるビジネス成果の純増分を表します。




コンバージョンのなかにも種類があり「広告に接触したものの、広告なしでもコンバージョンに至ったケース」も存在するわけです。もともと購買意向が高かった人を相手に、たまたま広告が当たったとして、それを全部が全部「広告による成果だ!」とは言い難いわけです。


では、そうしたコンバージョン純増分であるインクリメンタリティはどう算出するのか。「実験計画法」のアプローチを見ていきます。




同じ条件でランダムに割り振った集団のうち、広告を表示させる実験群(テストとも言う)と、あえて広告を表示させない対象群(コントロールとも言う)を作ります。そこで実際に前者のみ広告配信を行い、それぞれの認知率向上や購入額の差分をアンケート調査などで紐解いていきます。



また会場では、ラストクリック測定とインクリメンタリティ測定では、結果が異なるケースが48%もあったとFacebook社からの発表もありました。


広告費をどれぐらい投下するのか判断する上で、ちゃんと正しい測定結果を踏まえているのか? 基本ですが改めて重要になると感じました。


 


4. プロが考えるデジタル広告の今


企業の広告活用の課題は改めて何なのか



金井氏は広告の課題について、予算アロケーション最適化の難しさに言及しました。


一般的に企業の広告宣伝において、顧客獲得の前にリーチを広げて顧客開拓する「リードジェネレーション」と彼らを育成する「リードナーチャリング」のフェーズが必要ですが、前者と後者の取り組みを繋げるための指標となるKPI設定が難しくROIが説明しづらいそうです。



特に後者は純粋にデジタルだけではリーチを広げづらく、TVCMなど他メディアの影響も含まれるとROIが可視化できないとか。



そこで同氏のチームでは、広告をダイレクトレスポンスとプロモーションとに分けて考えたとき、後者に対してアクションと相関が確認できたKPIを、過去のさまざまなデータを独自に研究して設定。アロケーションする際は後者におけるKPIと前者のアクションの増分CPAを複合的に見て、柔軟に判断するようになったそうです。


つまり「これを見ればオッケー」という唯一絶対の指標は存在せず、アクションに寄与する要素を自分たちで解いてKPIを愚直に探して設定する必要があるといえます。


なぜ今、「インクリメンタリティ計測」が問われるのか



杉浦氏はインクリメンタリティの考え方が近年普及し始めた理由について語りました。



  • インターネットが主流になってリーチが広がり、予算も投下されるようになったから

  • 5G到来により動画クリエイティブが充実し、より態度変容を起こすようになり得るから

  • プライバシー問題やITP対応などで、今後ラストクリック計測だけではデータがトラッキングできなくなる可能性があるから


金井氏も上記に賛同した上で、インクリメンタリティ計測がデバイスを超えて人ベース(IDベース)で評価する点にも理由があるとの旨を補足していました。


 


5. 最後に:Facebook社の展望



今回はあまりご紹介できませんでしたが、編集部はこの次に開催されたフェイスブックジャパン永田次郎氏による「Blueprint Spotlight:Instagram広告のKPI – 基本の考え方から効果測定の実践まで」も拝聴してきました。



前プログラムにあった「インクリメンタリティ測定」をより深ぼった内容で、参加者に分かりやすく伝えられていました。


両方のプログラムを聞いて、Facebook社はただ広告フォーマットを開発するだけではなく、広告主に対してどうビジネスの成長に繋げるのか、ときに外部の調査会社の力も借りながら親身に取り組もうとする姿勢を感じました。


また次回は、28日に行われるプログラムに参加し、Instagramのトレンドやクリエイティブのポイントについてご紹介します!


この記事を書いた人:小東真人

ソーシャルメディアラボ編集長。地方や中小ビジネス向けセミナーなどを担当。
17年ガイアックス入社のデジタルネイティブ世代。靴磨きが大好きで、休日はInstagramで関連アカウントばかり見ている。

Twitterアカウントはこちら。