Facebook社直伝。Instagramライブの活用事例と成功のポイント6つ
2020/11/10
誰でも、簡単に、無料で始められる機能として利用者が急増しているInstagramライブ。公式データによると、コロナ禍で自粛ムードが高まった2020年3月には、全世界で利用者が50%増と増加傾向にありました。また、オフラインイベントの中止を受けて、これまでのライブ配信をしたことがなかった企業やブランドでも活用が増えてきているそうです。
誰でも簡単にできる反面、企業のSNS担当者にとってはブランドの世界観や商品の魅力がしっかり発信できるかどうかが気になるポイントではないのでしょうか。今回は、ビジネスでInstagramライブを活用するTipsや他社の先行事例について、Facebook JapanにてIndustry Managerを務める佐藤 太泰氏にお話をうかがいました。
Interview / ソーシャルメディアラボ編集長 小東 真人(@gxsoc_kohigashi)
Text / 大木一真(@ooki_kazuma)
1. プロフィール
Facebook Japan
D2C & ディスラプター事業部 Industry Manager
佐藤 太泰 氏
大学卒業後、楽天株式会社でインターネット広告の営業、印刷会社で経営全般に携わる。 その後、米国アリゾナ州サンダーバード国際経営大学院に留学しMBA取得。帰国後はP&Gにてヘアケアブランドのマーケティング及びカテゴリー横断のDigital/E-Commerceを担当。 2016年6月Facebookに入社し美容・化粧品業界の営業担当を経て、2020年4月よりD2C & ディスラプター領域の営業全般を統括。
2. モバイルひとつで、手軽に配信が始められるInstagramライブの魅力
佐藤 太泰氏(以下、敬称略):
最初はInstagramライブの特徴と傾向をご紹介いたします。
まず、Instagramライブをご利用いただくには、難しいセットアップや事前設定がほぼ不要です。また、全体の傾向として、ライブ動画の60%以上がセルフィー(自撮り)モードで撮影、配信されています。そもそもInstagramはスマホからしか配信できないので、クオリティを追求して作り込んだものより、親近感が湧きやすいライブと相性が良いという特徴があります。配信している人の顔がはっきり見えるセルフィー形式だとさらに親近感が沸きやすいほか、没入感が得られやすく、視聴者からのエンゲージメントを獲得しやすいと好評価をいただいています。
また、リアルタイムで繋がることができるため、フィードやストーリーズなど通常の投稿に加えてライブ配信も積極的に活用することで、自社ブランドとお客様とのコミュニケーションをさらに深められます。
一方で、よくご相談いただく点として「Instagramのフォロワーが少ないのでライブ配信をためらってしまう」というものがあります。でも実はライブ配信をしているアカウントの80%が、フォロワーが1000人以下なのです。ライブでリアルタイムかつ双方向の交流をすることで、まずは既存フォロワーとのコミュニケーションの質や深さを向上させることができるので、フォロワー数が大きな企業やブランド様以外でも積極的に使っていただきたいと考えています。
3. Instagramライブの最新アップデート情報
佐藤:次に直近のアップデートをご紹介します。
まずは今年4月に、配信後のライブ動画をアーカイブとしてIGTVにシェアすることができるようになりました。リアルタイムでの視聴を逃した利用者も、後からスマホやデスクトップからライブを視聴し、コメントも残せるようになっています。
さらに10月には、3つの機能のアップデートを発表しました。まず1つ目は、ライブ配信時間が従来の最大1時間から4時間に延長し、過去に著作権やコミュニティガイドラインなどのポリシー違反がない利用者であれば、より長い時間にわたってライブ配信ができるようになりました。2つ目は、近日中に配信後のライブ動画が、自動的に最大30日間アーカイブされるようになり、後からライブ動画をシェアしたり、端末にダウンロードすることを選択できるようになります。このアップデートにより、ライブ配信中もしくは配信直後にトラブルが発生したり、シェアや保存を忘れたりした場合でも、ライブ動画の活用方法を後から選ぶことができるようになります。
3つ目は、利用者がより簡単に様々なアカウントのライブ動画を発見できるようにするためのアップデートです。近日中にIGTVや視聴しているライブ配信が終了したあとの画面のデザインを更新し、リアルタイムで配信中のライブ動画や配信が終了してシェアされたばかりの動画を表示するようにする予定です。これによって、既存フォロワー以外にも自社アカウントのライブ動画を発見してもらう機会が増えます。
最後がライブショッピング機能です。現在はアメリカでのみテスト中ですが、この機能によってライブ配信中の商品情報の紹介から決済までがシームレスにつながります。具体的には、Facebookショップ機能ために作成したカタログから紹介したい商品をライブ配信前にタグ付けしておくことで、視聴者が配信中にタップして商品の詳細情報を確認し、購入できるようになっています。
4. Instagramライブの企業活用と先進事例
佐藤:ここからは、企業様やブランド様がどのようにInstagramライブを活用すればよいのか、大きく「ライブコマース型」と「イベント型」のカテゴリーに分けて、3社の事例をご紹介します。
① ライブコマース型:配信で商品の魅力を発信
「ライブコマース型」は商品の販売に直接繋げることを目的にしています。その企業様やブランド様が売っている商品を配信で紹介し、その魅力や使い勝手を伝えるのはもちろん、視聴者からの質問をコメントで受け付けてリアルタイムに回答し、店頭で接客を受けているような体験を作り出すのもお薦めです。
この「ライブコマース型」でInstagramを効果的に活用されているのが、インテリアブランドのLOWYA様(https://www.low-ya.com/ )です。
定期的に商品を紹介するライブ配信をされているのですが、写真だけでは伝わらない商品の詳細や使ってみた感じを詳しく紹介されています。また、配信中にカメラロールの写真や動画を画面上にシェアできる機能があるのですが(注:iOSのみ対応)、視聴者から質問があると、その機能を使って参考になりそうな画像を表示しながら回答されています。
ライブ配信の大きな魅力は双方向のコミュニケーションですので、視聴者からの質問には積極的に回答し、交流するのがお薦めです。Instagramの場合、質問の集め方はおもに2種類あります。
まず1つ目は、配信前に質問を集めておく方法。Instagramストーリーズの質問スタンプを使うと、利用者から質問を集めることができますので、例えばライブ配信の事前告知と併せて、「この商品を紹介しますので、質問はこちらにどうぞ」という形で聞いておくことができます。運用担当者としても、事前に質問が把握できるため、おすすめです。
もう1つがライブ配信中にコメントを受ける方法です。配信中は、コメントがどんどん集まってきますので、そこからピックアップして直接回答します。コメントをすべて拾うことは大変ですが、LOWYA様も一つひとつ丁寧にコメントや質問を読み上げながら回答されています。そうすることで、質問をした視聴者が自分のコメントに意味があるように感じ、コミュニティの一部として参加している感覚が得られやすくなるのではないでしょうか。
(https://www.instagram.com/p/CFeW5B7gEXF/ )
また、ライブ配信後に「本日ライブで紹介した商品のまとめ」をフィード投稿で投稿されていることも特徴です。投稿内の商品には「ショッピングタグ」がつけられているため、そのままLOWYA様のECサイト遷移して購入することもできます。
② イベント型:配信でコミュニティを醸成
イベント型は、オンラインでコミュニティを醸成することを目的にしています。コロナ禍以前はオフラインのイベントが多かったため、例えば招待客のみが出席できるファッションショーを配信してより多くの顧客に視聴してもらうなど、既存イベントの補完としてInstagramライブを活用する形式が多かった印象ですが、今ではオンライン配信のためだけに企画されることが増えてきました。
まずご紹介したい事例が、森美術館様(https://www.instagram.com/moriartmuseum/)です。2月末からコロナ禍で臨時休館となり、「未来と芸術展」という企画展を会期途中で終了せざるを得ない状態でした。そこで、少しでも多くの方に作品を見てもらいたいということで、館長自らが作品を説明するガイドツアーのInstagramライブを実施されました。
また、ディレクターによるライブ配信は日本語だけでなく、英語での配信も実施されていたことも特徴です。国外からの旅行者が多く訪れる森美術館様にとって、海外のファンに向けた発信は非常に大切だと思いますが、コロナ禍で渡航が制限されている中、オンラインならではの方法でコミュニティと交流している素晴らしい事例だと思います。
もう1つ、ご紹介したいブランドが Snow Peak様(https://www.snowpeak.co.jp/ )です。私も個人的に大好きですが、Instagramライブを活用したオンラインイベントの企画がユニークで面白かったです。
例えば、「バーチャル焚き火」を囲みながら代表取締役や経営層が「顧客へのメッセージ」を語ったり、スタッフさんが商品の開発秘話を話されたりしています。
ステイホーム期間中には「お家でSnow Peak」と題し、自宅キャンプ、お家キャンプのTipsやアイデアを商品と一緒に紹介していました。また、オンライン設営講習として、テントやタープの張り方を初心者向けに実演していました。
購買に繋げるような配信も行なっていますが、もっと手前のブランドストーリーやスタッフ、社員の方々のブランドや商品への思い入れをお話されたことで、コミュニティとの距離を縮め、親しみを感じさせることに成功しているのではないでしょうか。
5. ライブ配信で押さえておきたい6つのポイント
佐藤:では、実際にInstagramでライブ配信する上で押さえておきたいポイントを6つご紹介します。
① テスト配信を行う
企業アカウントではなく、個人アカウントでもよいので、テスト配信を行なって使い方に慣れておきましょう。また、基本的なことではありますが、ライブ配信が途中で切れないように、バッテリーがしっかりあるか、Wi-Fiネットワークは問題ないかを確認しておくとよいです。
② インサイトで最適な配信タイミングを予測する
配信するタイミングはいつが良いのか?という質問をよくいただきますが、企業様、ブランド様のターゲットによって、最適な曜日や時間は変わります。既存フォロワーがアクティブな曜日や時間をアプリ内の「インサイト」で見ていただけるので、まずはそれをご参考いただくのが良いと思います。
配信する曜日や時間をある程度固定で決めておき、視聴者に配信時間を覚えていただくよう工夫しているアカウントも多くあります。スケジュールを決めて定期的にライブ配信をすることで、回を追うごとに視聴者が増えていくケースも見られますので、ぜひ検討してみてください。
③ 事前に告知する
事前告知にはフィード投稿やストーリーズをフル活用して告知いただくことがポイントです。フィード投稿にイベントをタグ付けすることで、通知を受け取る設定をした人はイベント開始15分前に通知を受け取ることが可能になり、参加をリマインドすることができます。
ハッシュタグについて、通常の投稿と考え方は一緒です。既存フォロワー以外にも事前告知をしたいなら、一般的なハッシュタグを使い、より多くの利用者にリーチを拡げるのが良いと思います。逆にイベント型のライブ配信を実施するときは、コミュニティ作りのために独自のハッシュタグを用意することも一案だと思います。
④ 尺を長めに取る
どのライブ配信でも、視聴者数は開始してから徐々に増えていく傾向にあります。そのため、できるだけ尺は長く取るほうが有効です。フォロワーの一部にはライブ配信が始まると通知がいくため、それを見た人たちがアプリを開いて視聴を始める時間も見込んで、最低でも15分から20分は配信しましょう。事例でご紹介したLOWYA様をはじめ、1時間配信されている企業様も多くいらっしゃいますが、ライブ配信で達成したいビジネス目的やターゲット層に合わせて様々な尺を試してみてください。
⑤ コメントを紹介する
ライブ配信では、視聴者とインタラクティブなコミュニケーションを図るためにコメントを活用するのがおすすめです。
まずは「このコメントを固定する」を選択し、指定のコメントを固定できる機能を使い、「今日のこのライブは、このテーマについて話します。コメントをどうぞ」などのメッセージを固定しておくと良いでしょう。途中から視聴を始めた人たちもそれを見ることで、何についてのライブかをすぐに理解できることができます。
また、視聴者から寄せられたコメントを読み上げることも重要です。視聴者との交流の意味もありますが、ライブ動画をIGTVにシェアする際にコメントは残らないため、後から視聴される方々へのフォローとしても、コメント読み上げは有効です。
⑥ 他の機能でライブ配信を補完
ライブ配信では、どうしてもその場で答えられない質問が届くこともあります。例えば、化粧品ブランド様で成分に関して質問があった場合は、専門的なことは後からしっかり回答するべきでしょう。このような即時の回答が難しい質問に対してもそのまま放置せず、ストーリーズなどで配信後に回答することが大切です。
また、先のLOWYA様の事例のようにライブ配信で紹介した商品をフィードやストーリーズにショッピングタグをつけて投稿するのもおすすめです。
6. 今は自社に合うライブ配信の「必勝パターン」を探るチャンス
佐藤:企業様、ブランド様にとって、Instagramは日常的にお客様と交流していただき、コミュニティを作ることによって、ビジネス目標を達成するためのツールです。なかでも「Instagramライブ」は今後、非常に有効なツールになってくると言えます。
ライブ配信はリアルタイムであることが醍醐味ですし、特にInstagramにおいては「親近感」も重要な要素ですので、ちょっとした想定外のトラブルや慣れていない雰囲気でさえも視聴者の目にはマイナスどころかプラスに映ることもあり得ます。難しく考えすぎず、「ブランドの裏側や素顔をちょっと見せる」感覚で気軽に試していただけると良いのではないでしょうか。
何回か実践する中で、Instagramライブをどのように使えば自社にとって一番良いのかが見えてくるので、早めに着手していただき、それぞれの必勝パターンを見つけていただければと思います。
告知:11月12日、同社のウェビナーが行われます!
今年の年末商戦における消費者のインサイトや、ビジネスが無料で利用できるInstagramのツールや機能の紹介のほか、活用事例や広告の出稿方法、クリエイティブの作り方を分かりやすく解説する、Facebook社主催のウェビナーが予定されています。ウェビナーの詳細は、下記をご覧ください。
その先へ with Facebook – 年末商戦にInstagramをビジネス活用する
https://about.fb.com/ja/news/2020/10/instagram-holiday-webinar/
●日時:
2020年11月12日(木)14:00~ (約105分)
年末商戦を見据え、Instagramの活用法を一から理解を深める良い機会と思いますので、ご興味のある方は同社の公式Facebookページからライブ配信をご覧ください。