みんなで部活やろうよ!ヤマハがFacebookページで仕掛ける『音楽を楽しむ』場づくり戦略
2012/06/28
ファンを集めるだけでは意味が無い!みんながリアルで参加するコミュニティを目指して
これはどの企業でも考えていることではないでしょうか。
ヤマハさんのFacebookページ『ヤマハ音楽部』では、まさに「音楽を楽しむ場」を作ること事によって、音楽人口の増加や、楽器購入ニーズの顕在化の取り組みをしています。
今回はインタビューという形で、ヤマハさんが実際にFacebookページの運用で取り組んでいる内容、これまでの試行錯誤のお話など伺って来ましたので、そのご紹介をしたいと思います。
ぜひ最後までお付き合い下さい!
■目次
1.「ヤマハ音楽部」の目的と役割
2.もっと伝わるための情報発信のコツ
3.ユーザー参加型のイベント(練習会)を開催してわかったこと
4.ソーシャルメディアだけで「どこまでできるか」の新たな挑戦
5.ユーザーの反応を分析する手法
6.ヤマハ流ファンベースの育て方
7.ページごとのターゲティング設定
8.今後のFacebookページ戦略
お話を伺った方
ヤマハ株式会社
国内営業企画部 WEB・CRM推進室
室長 鞍掛靖 さん
ヤマハ音楽部
部長 タケ さん
副部長 けん さん
マネジャー ハル さん
※ヤマハさんでは、目的、ターゲットに合わせて、「ヤマハ音楽部」など7種類のFacebookページを運用しています。(詳細はこちら)今回は主に「ヤマハ音楽部」のお話をご紹介しています。
1.「ヤマハ音楽部」の目的と役割
GaiaXソーシャルメディア ラボ(以下、ガイアックス)井出 :
ヤマハさんではFacebookページを7種類運営されていますが、皆さんはどういった担当をされているのですか?
ヤマハ株式会社 鞍掛さん :
Facebookページは「やりたい」部署が申請方式!
FacebookページやTwitterのアカウント開設などは、目的をもってやりたいと思った部署が、広報部にソーシャルメディア開設の申請をして、承認されたら運営することになっています。ですから、会社全体のオフィシャルなFacebookページというのはなく、目的に応じて運営しています。
ノウハウの蓄積と、他部署へのナレッジの展開も大事な役割
ヤマハ株式会社 鞍掛さん :
「ヤマハ音楽部」のほうは、楽器やオーディオ製品の卸販売の部署なので、コミュニティを通してお客様とダイレクトにコミュニケーションするという考えで行っています。
一方、音楽部の三人は、日ごろのメイン業務として、製品サイト運営やWebプロモーション、アクセス解析など国内営業のWebマーケティングの支援部署としての役割もあるので、ソーシャルメディアをやりたいという部署からの相談を受けてサポートすることもあります。
やはり、Webマーケティングの部署として、他の部署から相談されたときに「ソーシャルメディアはわからない」では困りますから、Facebookについてはリサーチ、運営ノウハウを積むという目的も兼ねています。
2.もっと伝わるための情報発信のコツ
ガイアックス 井出 :
ヤマハ音楽部ではどういった情報を発信しているのですか?
ヤマハ株式会社 タケさん :
「私」を出すことで友達から聞くような音楽情報を配信
しかし、メーカーからの一方的な告知だけだと限界があり、受け取った方の共感ポイントが低いので、「音楽を楽しむ」という切り口で、私たち三人が「個人で感じた共感ポイント」を入れるようにして、それぞれが「私はこう思う」を伝えるようにしています。
2つ目は、「部活動報告系」で、音楽部三人がそれぞれ足で稼いで取材・撮影してきたネタや、部活動らしいリアルなイベントを絡めたものです。たとえば、バンド初体験の2家族に楽器を始めてもらい、4ヵ月でステージデビューを目指してもらう「ファミリーバンド道場」といった企画がありました。その企画では、ライブまでの4ヶ月間の格闘する2家族の奮闘っぷりをレポートするもので、スタジオ練習などに全10回シリーズで私が潜入取材するものでした。
会社の公式なの?と驚かれることも
ヤマハ株式会社 けんさん :
実際にFacebookで日ごろから顔出しで投稿しているので、本人の声、考えなど、あくまでナチュラルにキャラを出すようにしています。過去にブログで不自然なキャラ設定をして運営したことがあったのですが、続かなくなってしまった経験もありました。
ヤマハ株式会社 ハルさん :
キャラを全開に出して投稿するように心がけているので、友達から「あのページは会社の公式でやっているの?」と聞かれることがよくあります。会社からの情報発信というのとは、違う受け止め方をされているのではないかなぁと思います。
投稿作成時にはターゲットと世間の出来事を意識
ガイアックス 井出 :
投稿内容はどのように決めているのですか?
ヤマハ株式会社 タケさん :
テスト用のFacebookページに各自が投稿ネタ案をポストしています。週の始まりに定例打ち合わせをやってでみんなで相談して本番用Facebookページに、いつ、何を投稿する内容を決めています。
投稿は大体一日3つくらいで、最近は時間割を決めて投稿するようにしています。
またオフィスのホワイトボードに、サッカーの試合やミュージシャンの誕生日など関連しそうなイベントを見ながら、どんな投稿ラインナップにするか整理しています。
ターゲットユーザーとしては、私が若い世代、けんが年上の世代を意識したコンテンツを作って、ペルソナ別に配信するといった役割分担もあります。
3.ユーザー参加型のイベント(練習会)を開催してわかったこと
ヤマハ株式会社 けんさん :
ユーザーをお呼びして直接お会いするというイベントものを開催したこともあります。
2月末に、「ブラス・ジャンボリー」というヤマハが主催する管楽器のイベントがあったのです。これは、総勢400人が同じ曲を演奏するというイベントです。
ハルが、中学生の時にトロンボーンをやっていたということもあって、このイベントにいちユーザーとして参加してもらうことにしました。
イベント自体が「これをきっかけにまた楽器演奏をしよう」ということを目指しているので、まさにこういう方々をターゲットにしているので。
練習の呼びかけに集まった人数はなんと…
そこで、ハルが久々に練習して演奏会に参加するというプロセスをドキュメンタリー風にして、動画や奮闘記など連載コンテンツにしました。そのコンテンツの1つとして、「皆さんも一緒に練習しましょう」という練習会のイベントをやりました。告知はTwitterとFacebookで行い、Facebookにイベントを作成して参加者を募りました。
当日、来てくれたのは学生さんが一人。
正直、参加率の低さに驚きましたし、Facebookからリアルへの誘導にはもう少し工夫が必要なのかなと思いました。こういったこともあって、ただファン数を増やしていくだけではなく、興味がある方々との接点を作ったり、しっかりとファンと密にコミュニケーションを取って行かなければいけないと改めて感じました。
でも、インセンティブがなくても一人来てくれたというのは、大きいと思っていて、リアルにつなぐための一歩を踏み出せたと考えています。
4.ソーシャルメディアだけで「どこまでできるか」の新たな挑戦
ファン向けにミュージカルのバックステージツアーを募集!
ヤマハ株式会社 けんさん :
実は次の企画が始まろうとしています。以前、「blast!」いうミュージカルの告知をFacebookページで投稿したところ、ものすごく反応がよかったんです。
ヤマハがこのミュージカルの楽器提供をしていることと、広報部の人が知り合いだったこともあって、「バックステージツアー」をできないかと打診したらOKが出たんです。ミュージカルの舞台裏を見るというツアーですね。
この企画では、「パワーをかけないで、ソーシャルメディアだけ」でどこまで情報が拡がるか、人を集められるか、エンゲージメントを深められるか、ということを試してみようと思っています。
ヤマハ株式会社 タケさん :
これは1つのチャレンジなのですが、人を集められる瞬間というか、コツがあると思っていて、そのポイントをつかみたいというのがあります。
いずれは学祭だって開きたい
そもそも「音楽部」という名前が示す通り、「部活やろうぜ」というコンセプトでやっているFacebookページなので、もちろん情報提供もするのですが、いずれは音楽部が主催でユーザーのみんなと「学祭」をやりたいという夢もあります。
まずは、ユーザーに動画コンテンツを上げてもらうという企画もいま検討中です。ハードルを下げて、誰でも気軽に上げられるようにしたらいいかな、ということも検討しています。
5.ユーザーの反応を分析する手法
ガイアックス 井出 :
運用分析についてはどんなことをやられていますか?
ヤマハ株式会社 タケさん :
エンゲージメント率を基準に投稿の良し悪しを評価しています。けんは、2006年から始めたブロガーとしての顔も持っていますが、そもそもヤマハ製品サイトのアクセス解析の専任担当なので、Facebookのデータの集計や分析もけんに任せています。
ヤマハ株式会社 けんさん :
どんな人がどんな投稿に「いいね!」をしているのかも確認しています。そこからわかったことは、全ての投稿に対して万遍なく「いいね!」をしている人もいるんですけれども、「ギター」の投稿だけに反応する人、「ピアノ」の投稿だけに反応する人もいるということ。
やはり、音楽という括りの中でも、楽器ごとにファン層が別れていることが分かりました。
投稿時間も変えて反応を見ていますが、やはり夜の反応が良いことがわかりました。一方で朝、昼は重い投稿は反応が悪くなります。
リレーションを深めるためのツールとしてのFacebook
ヤマハ株式会社 鞍掛 さん :
Facebookページはいろいろな指標があるので、これまでとは違った視点から評価できるので参考になります。ユーザーの反応が製品サイトのコンテンツを作る勉強になりますし、メーカーが思っていたところと違うところに、反応のポイントがあるので、勘を養うことができます。
最初はファン数1万、2万を目指していたこともありましたが、今はじっくり集めて、ユーザーと密にコミュニケーションをして、リレーションを作るためのツールとして使っていこうと思っています。その方向での活用方法を模索しているところです。
29万人のメルマガ購読者、2,500人のTwitterフォロワーとの違い
ガイアックス 井出 :
Facebook以外にもTwitterやメール配信などの取り組みをされていると思いますが、受け手側の消費者の方々の反応に違いはありますか?
ヤマハ株式会社 タケさん :
メルマガは、製品購入者に向けて配信していて、現在29万人会員がいるのですが、非常に読まれていますし、クリックもされています。
Twitterは現在2,500人くらいフォロワーがいますが、ボーカロイドなど特定のトピックに反応が良く、Facebookとは違うユーザー層が集まっています。Twitterのほうは、基本的に現在はFacebookページと同様の投稿を流しています。
ただ、メルマガでFacebookページへの誘導告知をすでに6回ほど行っているのですが、反応は悪いですね。メルマガ読者は製品を購入してくれたユーザー層であることや、年代も異なるため、Facebook利用者層と異なって来ているのが理由でしょう。
6.ヤマハ流ファンベースの育て方
ヤマハ株式会社 タケさん :
集客方法としては、以前Facebook広告を試験的に配信したこともありましたが、瞬発的に集める力はあるのですが、こちらも魂を込めて運用している分、興味がない人に来て貰ってもしょうがないというのもあって、今は配信していません。
また、JAL(日本航空) Facebookチームとコラボ企画による取材記事があって、その時にJALさんのFacebookページから音楽部へユーザーが来訪してくれて、音楽部のファンになってくれることもありました。
結局は、「いいね!」のリファラーを見ると、Facebookからが一番多くなっています。
日々の投稿をして、シェアされて、友達が見に来てくれてというユーザーが一番深く付き合えるのかと感じています。良い投稿をして音楽が好きな人を少しずつ集めていくのが結局一番だと考えています
7.ページごとのターゲティング設定
ガイアックス 井出 :
ターゲットについても興味があります。どういうターゲットを想定していますか?
ヤマハ株式会社 鞍掛さん :
ヤマハのユーザー層でいうと、中高年の方、母親世代(子供向け)、中高生(ブラスバンド部員など)という3つに分かれます。
Facebookページでいうと、『ヤマハ音楽部』は「音楽をやっている・やっていた大人」に向けて運営していますし、『ファミリーアンサンブル』は子どもを持つ親御さんに向けて、子どもと一緒に家族で演奏しようよ、というコンセプトで運営しています。一方で、中高生はまだそんなにFacebookにいないので、そこはメインのターゲットになっていません。
ヤマハ株式会社 タケさん :
現状では年齢がやや上の層の方がアクティブに参加されています。以前の広告出稿時には若い層のユーザーも集まってくれましたが、現状アクティブに参加されるのは、中高年の方が多くなっています。
また楽器演奏したくなるようなページ
ガイアックス 井出 :
今は働いているけれど趣味で楽器をやっている人や、今はやっていないけれど昔はやっていたという方も多いのでしょうね。
ヤマハ株式会社 ハルさん :
『音楽部」のFacebookページを見ていて、また楽器をやりたくなったという方もいましたよ。
楽器をやりたくなった人の背中をそっと押すイメージで、「大人が再び楽器を演奏するきっかけ」をつくっていきたいです。
8.今後のFacebookページ戦略
ガイアックス 井出 :
最後に2012年後半、あるいはこれからの目標を教えてください。
ヤマハ株式会社 タケさん :
「部活動」なので、もっと部活っぽい楽しい記事づくりにパワーを増やしていきたいです。やはり、リアルなイベントをもっと増やしていきたいですね。やはりオンラインだと、ライブ感覚は伝わりにくいので、みんなで一緒に楽しめるような企画を考えていきたいです。
音楽を演奏する人と、演奏を聞く人が集えるようなイベントをやって、音楽を楽しむ人、楽器を演奏する人を増やしてつなげていきたいです。
以上、『みんなで部活やろうよ!ヤマハがFacebookページで仕掛ける『音楽を楽しむ』場づくり戦略』でした。
(執筆/編集 井出一誠 :Facebook、Twitter )
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この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部