花王から学ぶ「絆づくり」のためのコミュニティ運用術【前編】|こうして「製品の事を語りたい!」とユーザー自ら言ってくれるようになった。
2012/08/02

お話を伺った方

1.ソーシャルメディアとクローズドコミュニティの使い分け
GaiaXソーシャルメディア ラボ(以下、ガイアックス)井出 : 花王さんでは、企業コミュニティサイトや複数のTwitterアカウントを活用されていますが、それぞれどのような位置づけで取り組まれているのでしょうか?

花王株式会社 本間さん : ヘルシアに関連するアカウントは中長期的に運用していますが、その他のリセッシュやサクセスなどのアカウントは、キャンペーンの時に短期的に活用しています。キャンペーンでの利用は、まだ実験的な側面が強く、しばらくはテストしながら、どういう使い方が効果的か見ていきたいと考えています。 「GO GO pika★pika MAMA」は、クローズドなプライベートコミュニティサイトとして、2004年から運用しており、板橋さんが中心になって運用しています。
2.ママのためのクローズドコミュニティ「GO GO pika★pika MAMA」とは?

ガイアックス 井出 : それでは「GO GO pika★pika MAMA」のコミュニティサイトとしての成り立ちや、特色などについて教えて頂けますでしょうか?
花王株式会社 板橋さん: 「GO GO pika★pika MAMA」は、同じ月齢の赤ちゃんを持つママ同士が集まって、育児などに関する様々な情報や意見を交換するクローズドコミュニティサイトです。2004年に開設しました。 意識したのは、花王製品の「クイックルワイパー」「メリーズ」などのブランドの切り口ではなく、新米ママに必要な家事・育児の情報を月齢に応じて発信する事です。そうする中で、花王と消費者の間の絆づくりをしたいと考えていました。
ない情報はお客様につくってもらう!
ただ、月齢に応じて必要な情報を発信すると言っても、花王に全ての情報がある訳ではありません。例えば、ベビーカーの事とか、赤ちゃんのあやし方とか。 そういった花王にない情報は、ユーザー間コミュニケーションで解決して貰えるといいなぁ…と思っていました。「ない情報はお客様に作って貰おう」と。 例えば、「夕暮れ泣き」という特定の月齢の赤ちゃん特有の行動があります。病院にいくようなことではないけれど、毎日のことだと困ってしまう。でも、ママ同士で話題になると「うちはレジ袋をシャカシャカすると、泣き止むよ!」というような、育児書にはないような、都市伝説みたいな情報が出てきて、実際に効果があったりする。 同じ状況にあるママが楽しくおしゃべりする中で、悩みを吹き飛ばそう、というようなゆるいコミュニティを目指しました。花王だからこそ持っている情報の提供も!
花王では、各ブランド製品に紐付いた子育てノウハウは一杯あります。そういった企業発信の情報も、コミュニティ内では発信しています。 例えば、- クイックルワイパーを使えば、赤ちゃんが寝ている時間に赤ちゃんを目覚めさせないで手軽にお部屋のお掃除ができるよ。
- 哺乳瓶などの赤ちゃん用製品は、こうやって消毒すると清潔に保てるよ。
3.サークル数26個!コミュニティ設計の基盤づくりの工夫
ガイアックス 井出 : コミュニティサイトの設計として、どのようなところに特徴がありますか?
花王株式会社 板橋さん: 月齢別に細かく分かれているのが特徴の一つだと思います。 ターゲットは、妊娠中の「プレママ」から、初めて子育てをする0-2歳の子どもを持つお母さんなのですが、月齢別に24個の部屋(サークル)があります。

4.参加したくなる雰囲気作りの工夫
ガイアックス 井出 : コミュニティを活性化させるための施策としては、どんなことをしていますか?
花王株式会社 板橋さん: コミュニティの活性化には、コミュニティ内の船頭役であるモデレーターの働きが大きく貢献していると思います。
共感性を高めるために「子育て経験がある人」をナビゲーターに。
モデレーターは、「ハナコさん」「月子さん」「えまさん」の3人のキャラクターがいるのですが、彼女たちは3人とも子育て経験のある、いわば「プロのママさん」です。 実際に経験がある人だからこそ、月齢に応じた話題を提供して話を盛り上げていく事ができます。赤ちゃんが産まれたらプレゼントも。
それから、プレママの時から登録していただいているユーザーには、赤ちゃんが誕生したらメリーズのおむつをプレゼントしたり、歩くようになったらパンツタイプのおむつをプレゼントしたりしています。 また、ママたちは子育てをして当たり前というところがあって、毎日大変な思いをしているのに、なかなか感謝されることがありません。なので、お誕生日には、ママたちに「たまにはゆっくりしてね」という思いで入浴剤やボディシャンプーをプレゼントしています。 実際に喜んでくれている方々も多く、絆づくりに貢献できている取り組みだと思っています。離れるのが寂しくなるくらいの強い関与度
ガイアックス 井出 : お子さんが2歳になると卒業との事でしたが、ユーザーの反応はどんなものがありますか?
花王株式会社 板橋さん: おっしゃるように2歳になると卒業してしまうのですが、卒業時にはユーザーさんから、 「2年間ありがとうございました」 「お別れなんてさみしい」 「夫に良いサイトを見つけられてよかったね、と言われた」 「これからもがんばります」 というような声をたくさん貰っています。 ▼実際にユーザーから集まった声の例

5.相談センターへの電話でわかった事実:お客様は製品について語りたがっている
ガイアックス 井出 : 花王さんのメーカーからの立場として、情報発信で気を付けていることなどはありますか?
花王株式会社 板橋さん: 開設した当初2年間くらいは、製品について語っていただく場の設置を求めないようにしていました。「売るためのサイト」と思われて、せっかく集まってくれた方をがっかりさせたくなかったからです。例えば、「メリーズについて語ってください」というようなやり方は、避けてきたのです。 ところが、ある時お客様相談センターにお電話をいただきました。 「コミュニティの会員になってしばらく経つけれど、どうしてモニターになったり、製品についての意見を聞かれないの?」 というようなご意見でした。それが1件ではなく複数件あって、「もしかして、ユーザーは製品についても語りたいのかな」と思いました。 そこで2007年3月に初めて「ハミングフレア」について語る場所として「聞いて!聞いて!私のお洗たく」というサークルを3ヵ月の期間限定で作り、そこで初めて製品について語り合う場を設け始めました。

6.製品のためのサークルを運用して驚いた3つのこと
花王株式会社 板橋さん: ここでは「ハミングフレア」のサンプルを希望者に配布し、意見を交換できるようにしました。モデレーターは「フレアくん」で、彼がテーマを投稿して、それに対して発言して貰います。 このサークルを運用して3つの驚きがありました。 1つは、なんと参加者の66%がなんらかの発言をしてくれたという事です。「製品について語りたい」という人が多いことがわかりました。


以上、『花王から学ぶ「絆づくり」のためのコミュニティ運用術【前編】|こうして「製品の事を語りたい!」とユーザー自ら言ってくれるようになった。』でした。 続いてインタビューの後編をご覧下さい。 ↓前編も気に入って頂けたら、お友達におススメして頂けると嬉しいです。
この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部

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