■交渉決裂、だがなぜ創業2年の米グルーポンは、Googleから5,000億円もの評価を得たのか?
(画像引用:THE WALL STREET JOURNAL)
先週、Googleによる米Groupon買収というニュースが話題になりました。その提示額は、2,100億円とも5,000億円とも言われています。
ただ、日本時間2010年12月4日の各メディアの情報によると、この話は破断に終わり、グルーポンは独自で上場を目指すとの事でした。
グルーポンからオファーは断られてしまいましたが、なぜGoogleは、5,000億円をかけてまで、グルーポンを買収しようとしたのでしょうか?
その理由をラボで考えて見ました。
▼Googleが買収したかった理由
- 理由1 :ローカル広告の強化
- 理由2 :グルーポンセルフ広告との相乗効果
- 理由3 :世界35カ国の地域に密着した営業網
- 理由4 :ジオソーシャルデータ
- 理由5 :1,500万人分とも思われる決済情報
- 理由6 :月額42億円の売上
- 理由7 :Google未だここにありき!というブランディング
それでは、以下にて各理由の詳細と、その背景にある、Googleの買収前のめり姿勢・ソーシャルメディア界隈での数々の後塵の歴史を見てみましょう。
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■目次■
1. Googleのこれまで。(買収の遍歴、ソーシャルメディア界隈での後塵の歴史)
2. Googleが米グルーポンを5,000億円かけてまで買収したかった7つの理由
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■1.Googleのこれまで。(買収の遍歴、ソーシャルメディア界隈での後塵の歴史)
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▽1-1:Googleの買収の遍歴
Googleはこれまでにどれだけの企業を買収して来たのでしょうか?
その答えが以下のエントリーを見ると分かります。
詳細は上記のエントリーをご覧頂ければと思いますが、
「Jambool買収」、「Slide買収」、「Zynga出資」、「DoubleClick買収」、「YouTube買収」など、Googleは数多くの買収・投資の話題を世の中に提供して来ました。
最近は、twitter社買収にまた動き出したか?というニュースも流れてますね。
また、米規制当局への提出書類によると、
2010年の最初の9ヶ月間で、20以上の企業に16億ドルを費やしているようです。
(引用:SFGate)
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▽1-2:Googleのソーシャルメディア進出の長い歴史
Googleのこれまでのソーシャルメディアでの取り組みは決して平坦ではありませんでした。
以下のインフォグラフィックは、TECH DOLL.JPでも
「Googleのソーシャルメディア史」というエントリーで紹介されていたものですが、これまでのGoogleによるソーシャルメディアサービスへの挑戦の歴史が見れます。
▼Google’s LONG HISTORY OF FORAYS INTO SOCIAL MEDIA
(引用:Mashable)
2000年~2005年までは、「Blogger」、「Friendster」、「Orkut」、「Google Talk」などを。
206年~2010年までは、「Writely」、「Picasa」、「Feedburner」、「jaiku」、「Google BUZZ」など、様々なソーシャル系サービスをリリースしたり、買収していきました。
ただ、その後の状況は皆さんのご存じのところです。
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■2. Googleが米グルーポンを5,000億円かけてまで買収したかった7つの理由
本エントリー冒頭で上げた買収理由はこちらです。
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▼Googleが買収したかった理由
- 理由1 :ローカル広告の強化 ong>
- 理由2 :グルーポンセルフ広告との相乗効果
- 理由3 :世界35カ国の地域に密着した営業網
- 理由4 :ジオソーシャルデータ
- 理由5 :1,500万人分とも思われる決済情報
- 理由6 :月額42億円の売上
- 理由7 :Google未だここにありき!というブランディング
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以下にてそれぞれ、詳細を見ていきましょう。
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▽理由1 :ローカル広告の強化 (Googleプレイス、地域情報検索のスタンダードサービスを目指して)
本題の『地域情報検索のスタンダードサービスを目指して』に入る前に、まずは、Googleプレイスについて、どういったサービスなのかを確認していきましょう。
≫Googleプレイスとは?
Googleプレイスとは、「店舗情報を集約したアグリゲートページ」です。そのアグリゲートページの利用を促すために、Google検索・GoogleMAPからの誘導口も設けています。
□Googleプレイス :店舗情報を集約したアグリゲートページ
以下のようなページを、ぐるなび・ホットペッパー・食べログ等から情報を引用して作成しています。
オーナーであれば、このプレイスページの管理も出来るようになっています。
□Google検索・GoogleMAPからの誘導口
Google検索・GoogleMAPで、「場所」+「サービス名」で検索すると、プレイスページが表示されます。
a. Google検索での表示例 - 「new york sushi」と検索
b. GoogleMAPでの表示例 - 「渋谷 ラーメン」と検索
※ちなみに、日本のGoogle検索で、「渋谷 ラーメン」と検索しても検索結果ページにはプレイス情報は何も表示されません。以前は出てたのですが。。
Google社によると、地域情報の検索が全体の約20%を占めています。(引用:ITmedia)
今年の8月23日から9月30日まで、渋谷の5つの商店街に協力を得て、「Googleプレイスキャンペーン」というキャンペーンを行うくらい、日本でもGoogle肝入りのサービスです。
現在はページの編集は無料で出来ますが、今後はここでのマネタイズも考えている事でしょう。また、Googleプレイスが普及すれば、そのページの告知用にとGoogle AdWordsの利用も増える事が予想されます。
≫『地域情報検索のスタンダードサービス』を目指して
地域情報向けサービスの強化は、前述の
『Googleプレイス』を始め、
『Google おみせメモ(Google Hotspot)』や、現在準備中の
『Google Store View』などと着々と進んでいます。
ただ、海外では分かりませんが、少なくとも日本では、「Google検索・Googleマップでレストランを探す」といった行動習慣は根付いていません。Googleもそれを課題として認識していたのではないでしょうか。
グルーポンを買収し、Google検索・Googleマップと連携させれば、グルーポンのクーポンをGoogle経由で探させることも出来るはずです。
その結果、『Googleでレストランを探す』といった行動習慣をユーザーに刷り込む事も出来たのではないでしょうか。
以下にあるGoogle code labsの「Google Coupon Feeds」と、「Googleマップへのクーポン情報の表示」をご覧頂けると、そういった展開もイメージして頂きやすいかと思います。
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▽理由2 :グルーポンセルフ広告との相乗効果
≫Facebookとの位置情報、ローカル広告を巡る戦い
「ローカル広告の強化」の件とも絡みますが、Googleは地方の中小企業、特に店舗を持っている企業に広告を出稿して貰いたがっています。
ただ、店舗にとってはGoogleに広告を出稿する、というのはあまりメインストリームの行動ではありません。
やはり、ビラを配ったり、会員を集めてメルマガを配信したり、twitterでフォロワー増やしてツイートしたり、といったマーケティング活動の方がやりやすいです。
そこに来て、世界で流行っているFacebookが「Facebook Place」、「Facebook Deals」をリリースしてきました。
しかも、Facebook Dealsは無料で提供されています。
こういった店舗の現状、Facebookのローカル広告への参入などを考慮すると、既にリアル店舗との関係性も強いグルーポンを買収してしまい、Facebookに一気に差をつけたかった、という思いがあったのではないでしょうか。
米グルーポンでは、「Groupon Stores」、「Deal feed」という、店舗向けのセルフ広告サービスの準備が始まっています。これがリリースされると、店舗はこぞって利用するでしょう。
Gogoleプレイスと連携出来れば、Googleが受ける恩恵は計り知れないものだったはずです。
▼Groupon Deal Feed
(引用:TechCrunch JAPAN)
※「Facebook Place」「Facebook Deals」について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧頂くと分かりやすいと思います。
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▽理由3 :世界35カ国の地域に密着した営業網
前述のように、Googleは
ローカル広告のサービス拡充と拡販に力を入れています。
日本でもそうですが、まだまだ地方の中小企業にはネット広告の利用は根付いていません。
現状はあまり中小企業による利用は多くありませんが、もちろん3年、5年スパンでみると、地方の中小企業というテールが広がっていく事は予想されます。
Google日本法人では、中小企業をターゲットとしたAdWordsの代理店サポートの強化も行っていますが、今後は直接の営業網の強化も行いたかったのでしょう。
(以前、Googleが直接リスティングの営業をかけているという話を聞いたこともありますし。)
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▽理由4 :ジオソーシャルデータ
本エントリーでは、ジオソーシャルデータの定義を、
『位置情報に紐付いたソーシャルメディア利用ユーザーの諸情報』としています。
※諸情報とは、氏名・住所などの一般的な個人情報から、メールアドレス・twitterアカウント・Facebookアカウントなどのコミュニケーションツール情報、どの地域のお店なら出向くか?という行動範囲情報などを指しています。
グルーポンは、地域ごとのクーポン発行・販売を行っているため、地域ごとのジオソーシャルデータを握っています。
日本の某クーポン共同購入サイトでは、既に取得しているそのジオソーシャルデータを売りにして、各地域の店舗に営業をかけていると言われています。実際にその営業手法も成功しているようなので、その価値の高さも認められているのでしょう。
(例えば、船橋市の飲食店のクーポンを発行すれば、その地域のジオソーシャルデータが取得出来ます。そのデータを持っていますよ!というのを売りにして、船橋市の他の飲食店に営業をかけたりしています。)
しかも、35カ国以上でビジネス展開しているグルーポンは、Googleにとってはいくらお金をかけても変えられない価値があったのでしょう。
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▽理由5 :1,500万人分とも思われる決済情報
グルーポンは、世界で1,500万人以上の利用
者がいるとされています。
(引用:グルーポン・ジャパン)
※ラボ編集部注:2016年7月現在、上記URLが閲覧できなくなっているため、修正しました。
グルーポンで実際にクーポンを購入する方の大半がクレジットカードを利用していると思われます。
その決済情報を握る事により、AdWords・AdSenseで法人向けの課金市場を、グルーポンで個人向けの課金市場を支配する、と言った事を考えていたのかもしれません。
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▽理由6 :月額42億円の売上 ong>
米グルーポンの収益は、全世界で
売上:月額42億円(5,000万ドル)、粗利:月額21億円規模だと予想されています。
(売上の引用:TechCrunch)
年間約250億円の粗利なので、もちろん5,000億円という買収費用を考えると割高になります。しかし、Googleの各事業との相乗効果での成長も見込んでいた事でしょう。
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▽理由7 :Google未だここにありき!というブランディング
よくネット界隈では
ソーシャルメディアの台頭により、Googleの勢力が落ちているのでは?といった話が出ていると思います。
そんな中、ソーシャルメディアの恩恵を最も受けていると言われているクーポン共同購入サイトのNo.1、Grouponを買収する事により、”Google未だここにありき”という存在感を示す、といった意図もあったのではないでしょうか。
(写真引用:Twitter足跡を追うサービス停止と FacebookのSKYPE,BINGの連携の真意はGoogle退治!)
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▽Google×グルーポンには、こんな相乗効果も!
≫相乗効果1 :クーポンをさばく量が増える。
前述の米グルーポンの「Groupon stores」「Deel deed」がリリースされれば、クーポンの供給過多になり、1つ1つのクーポンが売れる量が大幅に減ってしまいます。
Googleの検索エンジンと連携され、さらに、レストラン情報はGoogleから探す、という行動習慣が根付けば、クーポン情報をさばく量も増え、グルーポンにとってもメリットがあったと思います。
≫相乗効果2 :グルーポン事業の広告費用減による、利益率向上!
グルーポンは、Googleアドワーズ、アドセンスに大量に広告出稿しています。
皆さんも、以下のようなアドセンス広告を良く見かけるのではないでしょうか?
(引用:ネタフル)
Googleがグルーポンを買収すれば、グループとしてはキャッシュアウトが減ったり、出稿量によってはその費用もグループ企業利用という事で、裏では調整出来ると思います。