アパレル業界に学ぶ! 従業員のInstagram活用事例6選。公式アカウントと併用して効果を最大化するには?

2021/07/19


近年、アパレル業界を中心に、従業員(ショップスタッフ、社員)が自社ブランド・商品の情報を個人のSNSアカウントで発信する動きが活発化してきています。


今回は、従業員アカウントの活用が注目されている理由や、特に盛んに活用されているInstagramを例にとりながら、人気ブランド、人気の店員アカウントの成功事例を紹介していきます。


    ■目次


  1. 企業アカウントと従業員アカウント、それぞれを運用するとは?

  2. 企業公式だけじゃなく従業員もSNS発信をする理由

  3. 従業員SNSの活用事例

  4. 実際に企業が行う上での注意点

  5. まとめ


1. 企業アカウントと従業員アカウント、それぞれを運用するとは?


そもそも、従業員のSNSアカウントの活用とはどういうものでしょうか?


明確な定義はありませんが、「あくまで個人のSNSアカウントでありながら、勤務している企業やブランド、ショップ(店舗)を明示した状態で、自社の商品を含めて発信している状態」が従業員のSNSアカウントを活用している状態と言えるでしょう。


企業が積極的に推進しているのか、個々が自由に取り組んでいるかなどは企業やブランドによって差がありますが、少なくとも「所属を明示した上でのSNS発信を禁止していない」企業であれば発生する可能性があります。



左:@gu_staff_kozue 右:@yumi.0527


前提として、SNSが広がりを見せた初期から個人のインフルエンサーは存在していました。しかし、勤務先などの所属情報を明かしているケースは少なかったのです。


対して、従業員アカウントの活用においては、自分が勤務している企業やブランド、ショップを明示して、自分のアカウントから自社の商品に関する情報を発信します。あえて勤務先や所属を記載し、従業員でありながら、ブランドのアンバサダー的な位置づけで個人アカウントを運用しているのです。


特にその動きが活発なのはアパレル業界です。


「カリスマ店員」という言葉の存在が象徴するように、ファッション・アパレル業界におけるショップスタッフは、これまでもアイコニックな役割を担っていました。つまりアパレル業界はショップスタッフの個性を活かした販売戦略の土壌がある業界。InstagramやWEARなどの浸透によって、それがオンライン施策と絡めて展開され、新たなSNSマーケティングの手法のひとつになってきています。


さらに、企業側が従業員のInstagram活用を推進する動きも活発になっています。ショップスタッフをインフルエンサーとして認定して活動しやすくする仕組みを提供するなど、体制構築に力を注ぐ企業が多くみられます。


2. 企業公式だけじゃなく従業員もSNS発信をする理由


ではなぜ今、企業はブランドの公式アカウントだけでなく、従業員のアカウント運用も促すようになっているのでしょうか。その背景にある4つの理由を解説します。


①企業よりも個人の方が親近感がわきやすい


一個人であるショップスタッフは、企業より身近な存在であり、親近感があります。企業だと宣伝だと感じられてしまうことでも、ショップスタッフの言葉として発信されることで、好きなインフルエンサーの発言として好意的に受けとてもらいやすい傾向があります。


また洋服のコーディネート画像は、ブランドが公式に発表している長身モデルの着こなしよりも、一般人であるショップスタッフの着こなしのほうが着丈感などを参考にでき、自分が身につけているイメージをつかみやすいでしょう。また子どもがいるスタッフのアカウントであれば、子どもと公園に行く日の休日コーデなど、実生活の場で活かせる投稿があり、同じような環境のユーザーはフォローするメリットがあります。


②顔や実名を出すことで、信頼感や安心感につながる


SNSには、なりすましアカウントなど営利目的のアカウントも横行しています。その点、ショップスタッフのアカウントは「顔出しや実名出ししている=自分の責任で発信している」ということになり、発信内容に対して一定以上の信頼感が担保されている印象を与えられます。


顔が見える発信者は、そうでない発信者より安心できるというのは、多くの人が感覚的に理解できるのではないでしょうか。


③「SNSで知った店員さんに会いたい」という来店動機が生まれる


InstagramやWEARなどでショップスタッフを知り、継続的に投稿を見る中でファンになると、そのスタッフに接客してほしいという来店動機が生まれます。さらに、ブランドへの愛着も強まり、スタッフだけでなくブランド自体のファンになっていく効果も期待できるでしょう。


④ 従業員のやりがいやモチベーションアップにつながる


遠方に住むお客様との接点を持つ機会ができたり、「~~さんが投稿でおすすめしてたから買った」「~の服めっちゃ気に入ってる」など、喜びの声がコメントで見られたりなど、接客・販売の喜びをオンラインでも感じられるのは、SNSならではといえます。


また自分の言葉や着こなしで、より多くの人に自社の商品の魅力を届けられるので、ショップスタッフは以前より大きな影響力を持ったと感じ、やりがいを増すと言えそうです。


3. 従業員SNSの活用事例


では従業員によるInstagram活用の事例を見てみましょう。特徴的な活用ポイントも取り上げますので、実際に取り入れる際の参考にしてください。


事例1:株式会社バロックジャパンリミテッド(rienda、y/m)


バロックジャパンリミテッドはMOUSSYやSLY、rienda、RODEO CROWNなど数十のブランドを展開する日本のアパレル企業です。今回はその中から、riendaとそのショップスタッフ、さらに同社が展開しているインフルエンサーブランドy/mを紹介します。


▼riendaのブランド公式アカウント




@rienda_official


 


▼riendaの従業員である村岡美里さんのアカウント


@misato_muraoka


riendaソラリアプラザ店の店長・村岡美里さんのInstagramアカウントはフォロワー数5.2万人。riendaのアイテムを使ったコーディネート投稿が中心ですが、メイクやランチなど日常生活の投稿もあり、自身のライフスタイルを含めて情報を発信しています。





 












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商品紹介を投稿するときも、気に入っているポイントが自分の言葉で語られているので、企業アカウントでは宣伝になってしまいそうなものでも、「好きなものを全力ですすめる」スタンスとして抵抗なく受け入れられています。





 












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ここで投稿しているデニムについては、ストーリーで質問を募り、回答したものをハイライトにまとめて、気になった人がいつでも商品情報に触れられるようになっています。丁寧に質問に答えてもらえるのはリアル店舗のような接客でもあり、さらにほかの人の質問への回答も参考にできる点は、店舗での接客では得られない利点にもなっています。Instagramのファンに寄り添った運用方法です。



https://www.instagram.com/stories/highlights/17881885742302488/?hl=ja


村岡さんをはじめ、同社の従業員のInstagramアカウントでは、着用商品をスムーズに購入できる導線も用意されています。


プロフィールに記載されたURLをクリックすると、バロックリミテッドジャパンのSHEL’TTER WEB STOREのスタッフコーディネートスナップページに遷移し、気に入ったコーディネートがあればそのECサイトから商品を購入できます。



左:スタッフ別のコーディネートスナップページ

右:特定のコーディネートと着用商品が紹介されているページ


さらに、人気店員の投稿はブランドの公式アカウントでも活用されています。


riendaのブランド公式アカウントでは、人気店員のお気に入りコーディネートをまとめて紹介するコンテンツとして、村岡さんの投稿を掲載しています。


このように人気のアカウントや、しっかり運用されている従業員アカウントがあれば、UGCのような形で活用できます。





 












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▼y/m(イム)のブランド公式アカウント


@ym.you_and_me


y/m(イム)は、村岡さんも携わるインフルエンサーブランドです。


インフルエンサーブランドとは、インフルエンサーが商品をセレクトしたり、企画段階からデザインなどに携わる形で企業とコラボレーションする形式のブランドです。ブランドとコラボレーションするインフルエンサーは従業員には限りませんが、y/mは村岡さん以外にも数名の社員が参加しています。




https://www.instagram.com/stories/highlights/17890311344127325/


また村岡さんのアカウントでもy/mについて投稿されています。





 












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ショップスタッフのSNSでの影響力を最大限引き出し、様々な方法でブランドのプロモーションに役立てていることがわかる事例です。


事例2:株式会社ジーユー(GU)


GUはユニクロと同じ株式会社ファーストリテイリングの子会社で、低価格でトレンド性のあるファッションを展開している若者層に人気のブランドです。


▼GUのブランド公式アカウント


@gu_for_all_


▼従業員のInstagramアカウント


左:@gu_staff_kozue 中央:@gu_staff_aki 右:@gu_staff_ryoko


GUでは「ジーユー公認スタッフインフルエンサー」という認定制度を採用して、従業員のアカウント活用を推進しています。


アカウントを見てみると、公認インフルエンサーはgu_staff_〇〇というアカウント名を使い、DMを返信できないように設定し、そのことをプロフィールにも記載するなどがルール化されているのがわかります。


GUもバロックジャパンリミテッドと同様に、従業員のコーディネートスナップから着用商品を見つけられる導線をプロフィールに設置しているので、Instagramで従業員アカウントの活用に力を入れる場合、着用商品の購入ページへの導線は欠かせない要素となっているようです。


https://www.gu-global.com/jp/ja/styling/store/10101239


GUの場合、遷移先でのファーストビューは該当スタッフのいる店舗情報なので、来店につなげることをより重要視しているかもしれません。


その他の事例


事例3:nano·universe


ナノ・ユニバースはオリジナルアイテムも充実した日本のセレクトショップです。


▼nano·universeのブランド公式アカウント


@nanouniverse_official


▼従業員のInstagramアカウント


左:@hikaru_ito_nu 右:@iguuuchii


メンズ、レディースどちらも扱っている店舗が多いと思われるnano·universe。男性のショップスタッフのInstagramアカウントもありました。


また、@iguuuchiiさんは「妄想コーデ」と題して、どのような場面で着たいかととともにコーディネートを紹介しています。従業員のアカウント運用を推進することで、スタッフの個性や発想力を活かしながら商品を紹介でき、公式アカウントのみで発信するのと比較して多様性が生まれます。





 












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事例4:WEGO


WEGOは古着テイストをミックスした個性あふれるストリートファッションを提案する、若者に人気のブランドです。


▼WEGOのブランド公式アカウント


@wego_official


▼従業員のInstagramアカウント


左:@iam_yumekya 右:@simi_chin_


若年層がターゲットのブランドとしてその世代に伝わりやすいラフな言い回しや言葉使いを使いたいところですが、企業公式アカウントだとあまりにくだけた表現は敬遠されることも多いでしょう。その点スタッフのアカウントであれば、若者らしい言葉使いでも違和感はなく、よりターゲットにとって受け取りやすい言葉で発信できています。





 












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事例5:ViS


ViSは、ジュングループが展開する、大人の女性向けのきれいめファッションをメインに扱うブランドです。


▼ViSのブランド公式アカウント


@vis_j


▼従業員のInstagramアカウント


左: @emmi_0513 右:@juri_vis


制作側の従業員の場合は、「めっちゃ作りたかった」とキャプションにある通り、作っている中の人の思いとともに商品を発信できます。ほかの投稿でも、作り手視点でのおすすめポイントが書かれているので、ショップで接する販売員とはまた違う視点の情報が得られ、コーディネートの参考にもなります。





 












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事例6:CIAOPANIC TYPY


チャオパニックティピーは、チャオパニックから派生したブランドで、主にファミリー向けにカジュアルテイストのファッションアイテムを提供しているブランドです。


▼CIAOPANIC TYPYのブランド公式アカウント


@ciaopanictypy


▼従業員のInstagramアカウント


左: @risakoizumi_typy 右:@ranstagram__f.mee


ショップ店員がSNSアカウントでコーディネートなどを発信していれば、場所という制約を超えてお客様とコミュニケーションをとれます。ターゲット層が広めのブランドであるほど、近くの店舗に自分と同世代や感性が近い店員さんがいないケースも出てくるはずですが、SNSであれば、自分の好みのコーディネートをしている人を選んでフォローでき、自分に合ったそのブランドの着こなしやスタイリングの情報を知れるのです。


midori kogaさんのプロフィールには「40代のきままな着こなし」とありますが、kogaさんのようなカジュアルかつ華やかな着こなしは、年を重ねてファッションに迷う方にとって参考になりそうです。





 












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4. 実際に企業が行う上での注意点


ここまで従業員がSNSアカウントを持つメリットを取り上げてきましたが、もちろんメリットばかりでありません。では企業はどんなことに注意していけばいいのでしょうか。


①炎上やブランド毀損を防止するためのルール作り


従業員に自由に任せるだけでは、些細なことから炎上が発生するなど、ネガティブな影響が大きくなる可能性もあります。勤務先を明示する分、対策が必要です。



まずは、炎上対策や従業員の不用意な発信を防止するためのガイドラインの策定やルール作り、研修の導入などの事前準備をしておくことが重要です。SNSアカウントの開設や情報発信のための社内手順を定め、発信していい(or発信してはいけない)テーマを明文化しましょう。



もし、従業員個人のアカウントで炎上が発生した場合に備えて、対応フローも明確化しておくべきです。誰にどう報告すべきか、どのように対応方針が決まるのか、それまでアカウント所有者はどのように対応しておくべきか、などを事前に定め、通達しておきましょう。


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②主体的に発信し続けてもらうための仕組みやモチベーション管理


SNS運用で大切なことの一つに「継続すること」がよく挙げられます。とはいえ、モチベーションを保って、ずっと投稿を続けていくのはたやすいことではありません。


そこで従業員に主体的にSNSで情報を発信し続けてもらうため、InstagramやWEARのフォロワー数を手当として給与に反映する企業も出てきています。


具体的には、企業が指定するSNSのアカウントを会社に申請して承認が得られると、フォロワー数がカウントされ、一定数のフォロワーが得られると、毎月SNS手当がつくというものです。


スタッフが会社に自身の個人SNS(「インスタグラム」または「WEAR」)のアカウントを申請すると、本部で審査が行われる。承認されると毎月フォロワー数が本部でカウントされ、1万フォロワーを超える(一部5000フォロワー以上)と月々SNS手当がつく。社員でもアルバイトでも同様の扱いで、フォロワーが多い人では月数万円が加算されるという。


出典:社員がインスタ1万フォロワー達成で給料UP!アパレル・パルHDの狙い


従業員個人の努力が必要な施策だからこそ、それを明確に支援したり、上述のような金銭面のインセンティブを制度化したりなど、企業としても対応を考えるといいでしょう。


5. まとめ



今回はアパレル店員のInstagram事例を取り上げて、従業員のSNSアカウント活用を解説しました。


個人のSNSアカウント運用を完全にコントロールすることはできないのでトラブルが発生するリスクもありますが、炎上対策やルールを定め事前準備を行えば、顧客との距離を縮めてよりファンになってもらえる効果的な施策になります。自社にあった取り入れ方を考え、ぜひ実践してみてください。


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