Snapchatはもう死んだ!カイユリコ氏が語る、まだ伸びるInstagramマーケティングの今後
2016/11/22
最近続々と新機能をリリースし、進化をつづけるInstagram。今回はInstagramの分析ツール・キャスティングサービス運営し、企業のマーケター2,500人が参加するFacebookの非公開グループ“Instagramマーケティング勉強会”の管理者も務める株式会社PASTUREのカイユリコ氏にInstagramマーケティングの現状と今後についてお伺いしてきました。
Interview / ソーシャルメディアラボ編集長 大久保亮佑
- ■目次
- プロフィール
- 今年に入って本格的に事業化したInstagramマーケティング
- 無理にInstagramを使う必要はない
- Instagramがうまく機能するポイントで活用すること
- インスタグラマー活用のポイントとは
- “流行っている感”を醸成するマイクロインフルエンサー活用
- まだまだ伸びるInstagram
- 今後の展望
プロフィール
株式会社PASTURE 代表取締役 カイ ユリコ氏
今年に入って本格的に事業化したInstagramマーケティング
大久保:カイさんはこれまでどのようなことをやってこられたのでしょうか?
カイ氏(以下敬称略):今年の1月頃まではアパレルのeコマースをやっていました。売れ残った若い女性向けのアパレル商品を業者から引き受けて、東南アジアに向けて販売していました。2年くらいその事業をやっていたのですが、東南アジアのeコマース市場の成長は予想以上に遅く、ここで急成長を目指すのはキツイなと感じて日本に帰ってきました。
大久保:それからどういった経緯でInstagramの事業を始められたのですか?
カイ:もともとそのeコマース事業でもInstagramは活用していたんですよね。東南アジアでは”eコマース = Instagram”というくらいオンラインでの商品購入にも使われていて、日本以上に文化として進んでいました。そこでInstagramをプロモーションのチャネルとして使っていくことについては知見が溜まっていたことと、Instagram上に投稿されている画像データには消費のトリガーを引く要素がたくさん詰まっているのに全然分析も活用もされていなくて、これはもったいないなと感じていました。
大久保:そんなきっかけだったんですね。
カイ:そうですね。でも当初はサービス提供しようというよりは、“Instagramの無料分析ツールを作ろう”ぐらいの気持ちでした。海外だと無料で使えるような分析ツールが、国内だと数十万円したのがすごく嫌で。API叩くだけで課金するなんて許せないなと。
そこで作ったサービスが「PONY(ポニー)」という無料のInstagram診断ツールです。7月リリースから4ヶ月で、現在1,300社ほどが使ってくださっています。他にも「ROOSTER(ルースター)」というインスタグラマーの検索ツールも提供しています。こちらも今4ヶ月目で、約400社が使ってくれています。
その他、今月11月からは、Instagram上の画像解析や、Instagram上で話題になった動画や人を検知するようなトレンド発掘ツールについても、一部の企業に提供を始めたというところです。
無理にInstagramを使う必要はない
大久保:Instagramマーケティング支援をし始めてから気づいたことはありますか?
カイ:Instagram活用について誤った認識している企業が多いということですね。商材の向き不向きの理解や、マーケティングにおいての活用目的の部分で特に感じます。
大久保:商材の向き不向きとは具体的にどのようなものでしょうか?
カイ:Instagramの特性上、
- インスタ映えしないもの
- 単価の高いもの
- 実体の無いもの
は商材としてあまり向いていません。例えばファッションならコーディネートでいろんな見せ方がありますが、テレビなどの家電製品は見た目より機能ですし利用シーンに多様性がなくインスタ映えしないので、タイムラインの中で浮いてしまいます。また、単価の高いものはサンプリングしづらいため、インスタグラマーに配布して投稿をしてもらうことも難しい。あとアプリなどの実体のない商材も難しいですね。
そのような商材だと、たとえ広告で出したとしても広告感がより出てしまいます。ですので、無理にやろうとするよりも“やらないという選択”をすることも重要です。
Instagramがうまく機能するポイントで活用すること
大久保: Instagramの活用目的については?
カイ:Instagramが購買に直結するという認識は間違いです。InstagramはいわゆるAIDMAの購買プロセスの中だと、“関心・欲求”の部分で活用することが効果的です。
参照:http://www.slideshare.net/YurikoKai/instagram-67879988
Instagramのユーザーは興味関心で繋がっているので、その興味関心軸でアプローチできるところが強みです。例えばインテリア系で人気のアカウントに家具の商材を投稿してもらうと、そのインテリアのテイストが好きな人に向けて、そのインテリアのトレンドリーダーから信者へおすすめするようなイメージで、すごく刺さるレコメンドができる。濃厚な興味関心のコミュニティにダイレクトでアプローチ出来るというのがInstagramの良さですね。
大久保:それを踏まえた上で、購買にうまくアシストさせるための工夫などはありますか?
カイ:例えばECサイトの場合、Instagramで見た画像とECサイトの商品画像が違うと、そこでギャップが生まれてしまいます。なのでInstagramの画像をサイトでも活用するなどの工夫をして、一貫性をもたせることで購入に繋がりやすくなります。あとはユーザーが投稿してくれた画像をサイトに掲載することも効果的ですね。海外だとLike2Buy、国内だとOWNLYみたいな仕組みはCVR改善に大きく貢献しています。
Instagramで投稿が数多く集まっているブランドや商品であれば、キュレーションサイトで「インスタで話題の〜」という紹介の仕方で訴求してもらうというやり方で最後の購入まで導くのは効果的だと考えています。10万投稿近く集まっている「#ユニジョ」とかはこのあたりのメディア連携が非常に上手だったと思います。
参照:インスタグラムで「#ユニジョ」と検索した結果
インスタグラマー活用のポイントとは
大久保:キャスティング事業もやられていますが、インスタグラマーの活用においては何かポイントがありますか?
カイ:まずは、Instagramを使う目的を明確にすることです。ブランディングなのか、購買なのか、自社ブランドをハッシュタグ検索をされたときに美しい写真の投稿を露出させたいのか、目的によって起用するインスタグラマーは全く異なってきます。
ブランディングであれば、テレビや雑誌でよく見かけるような、Instagram上でも30万人フォロワーはいるような認知度と好感度のある有名人が良いでしょうし、購買であれば、そのような有名人に投稿させた後、マイクロインフルエンサーと呼ばれるフォロワー1万人前後の読者モデルや一般のおしゃれな方約100名に「有名人の〜さんが使っていたコスメを私も使ってみた」という旨の投稿をしてもらい、さらにキュレーションメディアで「インスタで話題」と取り上げてもらい、トレンドを演出して購買まで導く。
さらに最近は、若年層はYahoo!、Googleでの検索よりもTwitterやInstagramといったSNSでの検索を重視しています。ユーザーがブランド名や商品名をInstagramで検索した際に適切な投稿が表示されていないと離脱が起きてしまうのです。なので、検索時の表示内容をコントロールする必要があり、このためのインフルエンサー活用も進んでいます。
大久保:目的によってプローチ方法もかなり変わるんですね。
カイ:そうですね。目的が明確になったら、次は商材にあったインスタグラマーを選定することです。先ほどのインテリア系のアカウントのように、そのジャンルの教祖的な人に適切にアプローチすることで、目的への効果を最大化することができます。
大久保:インスタグラマーの活用においてもやはり商材との相性は重要なんですね。
カイ:そうですね。プロモーションにかかるコストについても相性というのは大切で。相性の合わない商材を無理に投稿させると、効果が出ないだけでなく投稿の謝礼もかさむのでコストも大きくなります。
他にも小さなtips的な部分ですが、インスタグラマーの生活の一部としてストーリーを持って投稿してもらうことは重要ですね。炭酸水を宣伝したい場合、炭酸水のパッケージだけ投稿してもらっても、魅力は伝わらない。炭酸水をおしゃれなグラスに入れ、ライムを絞り、テラスで飲む、みたいなシーンやストーリーの演出もInstagramという世界観の中では大切にすべきだと考えています。
“流行っている感”を醸成するマイクロインフルエンサー活用
大久保:最近はマイクロインフルエンサーが注目されていますが、その点についてはどのようにお考えですか?
カイ:インフルエンサーとマイクロインフルエンサーはもたらす効果が違うので、目的に合わせて使い分けることが重要だと思っています。”インフルエンサーはブランディングやイメージ作り”、”マイクロインフルエンサーはアクションのトリガー”というように使い分けています。
大久保:アクションのトリガーとは具体的にどういったものでしょうか?
カイ:顔認識アプリのSNOWの事例が分かりやすいです。
SNOWはユーザー数を伸ばすために、多くの女子大生にアプリで加工した画像をInstagram上にアップしてもらいました。そして“流行っている感”や“みんな使っている感”を醸成して新規ユーザー数を伸ばしていったのです。つまり身近な人が多く使っていると、自分も使ってみようという行動のきっかけになるのです。Daniel Wellingtonという時計ブランドも、ちょっとやりすぎちゃいましたが、最初はすごくこの演出が上手なブランドでした。
参照:http://www.slideshare.net/YurikoKai/instagram-67879988
まだまだ伸びるInstagram
大久保:Instagramは今年国内月間アクティブユーザー数1,200万人になりましたが、まだ伸びると思いますか?
カイ:そうですね、まだ伸びると思います。
大久保:8月にリリースされたSnapchatに似た「Instagram Stories」も好調ですよね。
カイ:はい、それはすごく感じています。実際に私のSnapchatのアカウントを見ると、最もアクティブだった人でも最終ログイン日がStoriesリリース以後止まっている人が多いです。
参照:ストーリー機能リリース後、友人の最新ログイン日が止まっているカイ氏のSnapchatアカウント
先日の「Snapchatマーケティング勉強会」でもお話ししましたが、Instagramのストーリー機能とSNOWが流行った日本においては、Snapchatは流行らないと思いますね。WeChatが日本に来る前に、LINEが日本で浸透してしまったと同じ構図だと思います。
今後の展望
大久保:企業のInstagram活用の観点だと今後どのような点に注目していますか?
カイ:SNS全般に言えることですが、動画やライブ配信機能は注目しています。ブランディングにおいて動画がより効果的なのは言うまでもありませんが、なによりも、写真1枚に限られていた広告枠が15秒、60秒、と増えてきて、広告主にとってはよりリッチな情報を伝えながらも、インフルエンサーはより自分たちの文脈で伝えられるので彼らのイメージ毀損が軽減されるようになると思います。
現状、ほとんどPR写真の投稿で埋まっているインフルエンサーもいるんですが、そんなのもう誰も興味ないじゃないですか。実際にエンゲージメントレートもどんどん下がってる。そういった背景もあり、企業のブランディングも画像から動画中心にシフトしていくと考えています。それにより、今までの画像メインのインスタグラマーではなく、動画メインの新しいインスタグラマーも登場してくると思います。
大久保:従来のインスタグラマーが画像から動画にシフトするのではなくですか?
カイ:そうですね。インフルエンサーマーケティングについては中国のWeiboをベンチマークしているんですが、Weiboは日本のそれよりも3年先を行っていると言われています。そこでは、これまでインスタジェニックな写真を上げていたり、もともと静止画で可愛いと人気があったようなネットアイドル的な方は、もはやあまり活躍していません。
年間で数億、数十億と稼ぐ人たちは、コメントが上手で、静止画で活躍していた人たちよりも外見が良く、タレント性の高い、彼らの動画やライブ動画をもっと見たいと思わせられる人たちなんですよね。なので、ちょっと定性的になりますが、Instagramがサービスとして動画を強化していく伴い、いま活躍しているインスタグラマーとは違う形の、アートなInstagramの世界観に合うYouTuberみたいな方が出てきても良いのかなと思っています。
大久保:なるほど、その話は面白いですね!
カイ:自社の今後の展開としても、より早く新しいインフルエンサーになりえるユーザーを発掘して、インフルエンサーとしてのキャラを確立し、マーケティングに活用するための仕組みを考えています。
また、“PONY”と“ROOSTER”を統合して、インスタグラマーの影響力を見える化した上でのインフルエンサーマーケティング支援もしたいと思います。
この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部