【事例付き】すべてのSNSを使いこなす! 2017年度版SNS活用の先進企業3社
2017/03/08
カメラアプリがSNS機能を持ったり、日本企業が海外SNSを利用し始めたりと、これからもますます増えていくことが予想される企業のSNS活用。企業は、数多くのSNSをどのように使いこなしているのでしょうか。
今回はSNS活用の先進企業を3社取り上げ、それぞれの運用するSNSを分析・考察していきます。
- ■目次
- 調査の概要
- キリンビバレッジのソーシャルメディア活動
- Amazon japanのソーシャルメディア活動
- H.I.S.のソーシャルメディア活動
- まとめ
1. 調査の概要
今回紹介する3つの企業がすべて共通して使っているのは、Facebook・Twitter・Instagram・LINE・Youtubeの5つのSNSでした。本記事では、各企業のこれらのSNSを分析し、考察していきます。
また、なるべく公平を期すため、比較項目に挙げた「1投稿or1ツイートに対するアクション」は、調査時点で最新の投稿から1つ前の投稿について調査しました。コンテンツ内容によっても大きく差がでるところなので、あくまでも参考数値としてご覧ください。
参考にした数値は、すべて2017年2月23日時点のものです。
2. キリンビバレッジのソーシャルメディア活動
https://www.youtube.com/user/KirinCompanyChannel
https://www.facebook.com/kirinbeverage
ページいいね!数:246,095人
更新頻度:3~4日に1投稿。1日に2回投稿する日もあり。
テキスト:キャンペーンや商品についての文章が4~6行程度(+リンク)
写真:イベントや自社商品に関する画像が必ず付いている。リンク付き画像もあり。
誘導先:自社Webページの商品紹介ページなど
1投稿に対するアクション:いいね!451人・シェア27人・コメント4件
https://twitter.com/Kirin_Company
フォロワー数:347,740人 フォロー数:67,998人
更新頻度:1日平均3~4回
テキスト:Facebookに比べてややフランクな雰囲気。宣伝感が若干強めものやbot化したツイートが見受けられる。内容は1つ1つが長くないため、タイムラインの中にあっても違和感なく、読みやすい。また、ハッシュタグを用いた投稿もある。
写真:ある場合とない場合で半分ずつくらい。自社商品を飲みたくなるような状況を商品写真と共に紹介している。
誘導先:商品紹介ページやキャンペーン特設サイトなど
1ツイートに対するアクション:リツイート177人・いいね!343人・コメント14件
https://www.instagram.com/kirin_beverage/
フォロワー数:2,068人 フォロー数:412人
更新頻度:不定期。更新回数は少なめ。
内容:イベント告知や商品紹介
1投稿に対するアクション:いいね!153人・コメント0件
ハッシュタグ:「#午後の紅茶」、「#生茶」、「#世界のKitchenから」などの看板商品にちなんだものが中心。毎投稿5~10個
LINE
※LINEのみ「キリン」の公式アカウント。しかし、投稿では、「キリンビバレッジ」商品が多数登場
友だち数:17,485,309人
投稿数:183
投稿頻度:1週間に1回程度
1投稿に対するアクション:いいね3923人・コメント103件・シェア313
Youtube
https://www.youtube.com/user/KirinCompanyChannel
チャンネル登録者数:9386
動画数:118本
合計視聴回数:7,285,415回
1つの動画に対するアクション:good 9・bad 0
考察
キリンビバレッジは、今回ご紹介した5つのSNSのみの運用を行っています。
「午後の紅茶」や「生茶」、「世界のKitchenから」など、多くの人気商品を持つため、自社商品ブランド1つ1つを活かした投稿が多く見受けられました。そして投稿のみならず、Facebookなどではブランド自体を主軸としたアカウントも見られました。
このように世間の誰もが知っている人気商品自体が1つのブランドとして成り立っており、独立したアカウントとして運用されています。人気商品を数多く持つキリンビバレッジだからこそできる戦略といえるでしょう。
また、SNSの種類によって投稿内容にも違いがありました。Facebookでは企業とのコラボイベントやキャンペーンの告知が多く、Twitterではタイムラインに馴染むように口語体で、Facebookよりもフランクなツイートが多く見られました。
人気商品の「午後の紅茶」にちなんで、毎日の午後の始まりを知らせるというようなユーモアを感じさせるツイートもありました。そして、Youtubeでは、放送しているTVCMを常に見ることができるようにしてあり、TVでは知ることのできないCMのメイキング映像などの裏側を公開することでユーザーを引き付けています。
3. Amazon.co.jpのソーシャルメディア活動
https://www.facebook.com/AmazonJP
https://www.facebook.com/AmazonJP/
ページいいね!数:1,288,768人
更新頻度:1時間に1~2件の投稿。更新頻度が高い。
テキスト:3行程度の商品説明が中心。発売日時や使用する状況など様々な情報が盛り込んである。
写真:投稿には写真か動画が必ず付いている。
誘導先:商品紹介ページ
1投稿に対するアクション:いいね!12人・シェア0人・コメント0件
フォロワー数:357,621人 フォロー数:22人
更新頻度:1時間に平均2件の投稿。頻繁に投稿を行っている。
テキスト:2~3行のテキスト。商品の説明や割引情報。広告感に強い内容のツイートも見受けられる。
写真:投稿には必ず写真が付いている。
誘導先:商品紹介ページやキャンペーン特設ページなど
1ツイートに対するアクション:リツイート22人・いいね!31人・コメント0件
https://www.instagram.com/amazonjapan/
フォロワー数:269人 フォロー数:1人
更新頻度:不定期で規則性なし。
内容:自社商品や自社サービスの紹介。最近は、「#アマゾンペット」にちなんでペットとアマゾンに関するものが一緒に写っている写真などが連続で投稿されている。
1投稿に対するアクション:いいね!23人・コメント0件
ハッシュタグ:最近は、「#アマゾンペット」というハッシュタグがシリーズ化しているが、他のハッシュタグは投稿の内容によって異なり、テンプレートは無い。毎投稿5個程度。
LINE
友だち数:25,128,573人
投稿数:371
投稿頻度:不定期。投稿は2日連続のときもあれば、2週間の間隔が空くときもある。
1投稿に対するアクション:いいね1032人・コメント45件・シェア120
Youtube
※amazon japanでは無いため、amazonのアカウント
https://www.youtube.com/user/amazon
チャンネル登録者数:193,917
動画数:899本
合計視聴回数:428,931,646回
1つの動画に対するアクション:good 232・bad 43
考察
Amazon.co.jp 自体が運営しているSNSはFacebook・Twitter・Instagram・LINEですが、amazon本社の運営するSNSを見てみると上記の代表的な4つのSNSはもちろん、多くのチャンネル登録者数を持つYoutubeチャンネルや、その他にもGoogle+やpinterestなど複数のSNSを運用していることがわかりました。
さらに、Instagramにおいては、「amazon」、「amazon fashion」「amazon music」など多くのアカウントに派生して分かれており、それぞれのアカウントで多くのフォロワーを抱えています。Amazon本社のアカウントにはどのSNSをとっても非常に多くのフォロワーや登録者が存在し、世界中に人々の生活に深く浸透していることがうかがえます。
一方、amzon japanでは、FacebookとTwitter、LINEの運用に重点を置いているようです。どの投稿においても、取り扱う商品のプロモーションやキャンペーンのプロモーションに関する投稿がほとんどで、投稿に付いているリンク先は、直接商品を購買することのできるWebページにつながっています。やはり、商品紹介ページに直接誘導できるSNSは、運用価値が高いと捉えられているのでしょう。
この3つと比較し、Instagramではフォロワー数が少なく運用にさほど力を入れていない印象を受けました。この要因としてInstagramの投稿では、プロフィール画面にしかWebページへのリンクを貼ることができず、1つ1つに投稿内容に対応したリンクを併記できない点が考えられます。
しかし、Instagramは近年大幅に成長しているSNSであり、20・30代の女性を中心に利用者の幅を広げています。また、新機能も次々に追加されており、現地時間2月22日には同じ投稿に複数枚の写真を同時投稿できる機能が追加されました。
商品を様々な角度から見せたり、機能の説明をしたりなど、amazonにとっても大きなメリットを持つ機能であるといえます。このように現在は直接消費者による購買につながらないSNSもこれからの成長度合いによって、必要不可欠なものになるかもしれないので、アカウントを成長させておくことも1つの戦略ではないでしょうか。
他の事例に比べてamazon japanの投稿内容は商品の紹介をしている場合が非常に多く、広告感が強い印象を受けました。SNSでの投稿にはできるだけ広告感を出さないようにすることが当たり前という風潮があるなか、振り切ったSNS活用だといえます。
投稿に付いているリンク先も、商品をすぐに購入できるようなWebページになっており、SNSを商品の直接的な購買手法として見ている表れと捉えることもできます。これを踏まえると、リンクを貼ることのできないInstagramにあまり力を入れていないことにもうなずけます。
4. H.I.S.のソーシャルメディア活動
http://www.his-j.com/socialmedia/
https://www.facebook.com/H.I.S.Japan/
ページいいね!数:348,574人
更新頻度:1日1~2件の投稿。投稿時間も決まっていて昼間12時と夕方18時台のいずれか。
テキスト:ツアーや旅行プランに関する文章がかなりのボリュームある。必ず「もっと見る」ボタンをおさないと全文表示できないようになっている。
写真:写真か動画が必ず付いている。
誘導先:ほぼすべての投稿に、同じリンクURLが2つ付いている。投稿タイトルの下に1つとテキストの一番下部に1つ。「テキスト→URL→テキスト→URL」の順番でURLが常に見えるような工夫。
1投稿に対するアクション:いいね!616人・シェア19人・コメント4件
フォロワー数:94,146人 フォロー数:1868人
更新頻度:まれに3日ほど間隔が空くことはあるものの基本的には平均して1日に2回程度の投稿。
テキスト:観光地や人気スポットを紹介する文章が4行ほど。
写真:投稿には必ず付いていて、基本的に複数枚で投稿されている。
誘導先:自社メディアの記事や旅行プランのWebページなど
1ツイートに対するアクション:リツイート12人・いいね!82人・コメント0件
https://www.instagram.com/his_japan/
フォロワー数:27,800人 フォロー数:112人
更新頻度:1週間に3~5投稿
内容:一般ユーザーから特定のハッシュタグに関連する写真を募集し、選抜して投稿。
1投稿に対するアクション:いいね!564人・コメント3件
ハッシュタグ:「#ネコタビのセカイ」「#ミュージアムのセカイ」など一定期間ごとにハッシュタグを指定し、シリーズ化している。ほかには、「#travel」「#holiday」「#instagood」などのInstagramの中では比較的一般的なものが付けられ、1投稿に約30個のハッシュタグが付いている。
LINE
友だち数:7,812,170人
投稿数:206
投稿頻度:不定期。1週間に1投稿程度。
1投稿に対するアクション:いいね210人・コメント0件・シェア6
Youtube
https://www.youtube.com/user/HISjapan
チャンネル登録者数:2998人
動画数:491本
合計視聴回数:3,941,938回
1つの動画に対するアクション:good1 ・bad 0
考察
H.I.S.は、2010年から「旅行といえばHIS」を想起してもらうことを目的とし、FacebookやTwitterでの情報発信の強化を始めています。現在では、今回ご紹介した5つのSNS以外にもGoogle+やカカオトーク、pinterest、mixi、tab、Weiboなど非常に多くのSNSを運用しています。
また、Facebookでは公式Facebookページに加えて「いいね!旅行シリーズ」というアカウントが併設されていたり、Youtubeでも公式チャンネルの他に国内旅行専用のチャンネルがあったりと、ターゲットに訴求する情報別にアカウントを使い分けている点が印象的でした。特にLINEにおいては、公式アカウントの他に支店別のアカウントが数多く併設されており、消費者の細かなニーズをキャッチアップできるようになっています。
SNSごとの使い分けに関しては今回ご紹介した事例の中で最も細かく行われていたように感じます。Facebookでは、長めのテキストの中に旅行プランやツアーの詳細情報を盛り込んで旅行パッケージが掲載されているWebページに誘導しており、1つ1つの投稿に読み応えがありました。
また、Twitterでは短文の文化にならい、短いテキストでリンクへと誘導しています。短いテキストでは自社商材の魅力を十分にアピールできないとの考えからか、こちらでは「○○厳選!○○4選!」などの記事やコラム的要素の強いツイートが多く見受けられました。リンクは同社運営のメディアの記事になっており、その記事から商品ページに誘導するという仕組みになっています。
https://like-world.his-j.com/story/2193
「Twitter→自社メディア→旅行パッケージ掲載ページ」の順番でユーザーに回遊してもらうことで、お客様にサービスを売るだけでなく、HISがどのような会社なのかを知ってもらうというブランディングをすることもできることがポイントです。
さらに、Instagramでもハッシュタグ文化をうまく利用し、一定期間ごとに特定のワードを設定して、ユーザーにそのハッシュタグ付きの写真を投稿してもらい、その中から選抜したものを公式アカウントが投稿しています。
ユーザー参加型の運用方法をとることでユーザーとの関係性構築にも役立つと考えられます。現在では、「#ネコタビのセカイ」で募集された写真の募集が行われています。
5. まとめ
ご紹介した事例からSNSを効果的に使い分けるため気を付けるべきポイントを2つご紹介します。
自社特有の戦略をもつこと
事例に取り上げた企業はそれぞれ強みを活かした戦略を持っていました。
キリンビバレッジは、世間に浸透している人気商品を主軸の投稿をし、一部の商品では独立したアカウントを設立していました。Amazon japanは、ネット通販業界で確立している地位があるため、ブランディングの手段というよりはSNSを商品購買の手段として捉え、ほぼすべての投稿内容を商品紹介にし、ユーザーをリンクで商品のWebページに誘導していました。
H.I.S.では、「旅行といえばHISを想起してもらう」という明確な目標のもと、自社メディアをも回遊経路に組み込みブランディングに力を入れ、また、ユーザー参加型の運用を行うことでユーザーとの関係性構築にも力を入れていました。
このように、自社の強みや目的を理解することでしっかりと統一されたSNS運用を行うことができるのです。
各SNSの特徴を理解すること
Twitterは短文向きでフランクな印象、Instagramは写真中心でハッシュタグ文化があるなど、ユーザー自身もなんとなく理解しているSNSそれぞれの特徴があります。この特徴をしっかりとおさえた投稿をすることでユーザーへの伝わり方は大きく変化します。
上記の「自社特有の戦略をもつこと」で述べたことはSNS運用全体での戦略ですが、複数のSNSすべてに力を注いで運用する場合は、SNSそれぞれに対する戦略も必要になるでしょう。事例で取り上げたHISは、企業のブランディングを重視しているということもあり、各SNSの使い分けが秀逸で、特徴を理解している最も良い例だといえます。
多くのSNSを運用する企業にとっては、それぞれのSNSの文化や特徴を理解することは重要なことです。このポイントを理解したうえでより良いSNS運用をしてみてください。
この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部