2週間でトレンド入り8回、150万シェア!Twitterでバズりまくった”キットカット”のバレンタインキャンペーンのヒット要因を探る
2017/04/20

- ■目次
- プロフィール
- ネスレのバレンタインポストのキャンペーン概要
- シェア150万回!トレンド入り8回!企業のキャンペーンとしては驚異的な拡散を記録
- なぜここまでヒットしたの?【狙い通りだったポイント】
- なぜここまでヒットしたの?【ぶっちゃけ予想を超えていたポイント】
プロフィール
中村 大祐氏:株式会社パーティーアソシエイトクリエイティブディレクター/テクニカルディレクター
ネスレのバレンタインポストのキャンペーン概要
大久保:まず簡単に、キャンペーンの概要を教えてください。 中村氏(以下敬称略):大枠としては、SNSを通してバーチャルチョコを送りあえるキャンペーンです。プロモーションする商品はネスレさんの”キットカット ショコラトリー(※)”でした。キャンペーンページでSNSアカウントにログインすると自動でバレンタインポストが作成され、バーチャルチョコをおねだりしたり、誰かに贈ったりできます。 でも、ただ「バーチャルチョコをおくり合いましょう!」と言っても参加してもらえないだろうと思いまして、「チョコをおくり合うサービス」ではなく「チョコをもらえるサービス」という設計にしたんです、具体的には、最初に「おねだり投稿」をする設計になっています。おねだり投稿のリンクをクリックすると、チョコを贈る画面に遷移

シェア150万回!トレンド入り8回!企業のキャンペーンとしては驚異的な拡散を記録
大久保:キャンペーンがヒットしてかなりシェアされたとお伺いしたのですが、最終的にどれくらい拡散したかなど、可能な範囲で数値を教えていただけますか? 中村:トータルシェア数が150万回に到達しました。 通常のキャンペーンだと、シェア率は高くて5%くらい。10万人が参加して5,000シェアくらいが平均ですね。でも今回のシェア率は、なんと30%くらいにまでなりました。参加者は約62万人で150万シェアなので、1人で何回もシェアしているということになります。これは今までに無かったと思います。 大久保:たしかに企業のキャンペーンでそれだけのシェア数は聞いたことが無いです。 中村:しかも150万回のシェアは公式ページからのものだけで、その他の関連ツイートは含んでいないんです。「バレンタインポスト見てたら食べたくなって、”キットカット”買ってもうた(´・ω・`)」みたいなツイートもされているので、実際はよりたくさんのシェアやリーチが生まれています。 あとはキャンペーン期間中に、関連ハッシュタグが8回もトレンド入りしたのも異例かなと思います。「#バレンタインポスト」や「#バーチャルチョコ」などでトレンドの1位に8回も入りました。 大久保:それはすごい広告効果ですね!なぜここまでヒットしたの?【狙い通りだったポイント】
大久保:ここからは「なぜキャンペーンがここまで当たったのか」を伺えればと思います。キャンペーンの設計や拡散手法で工夫した部分などを教えてください。 中村:機能が結構多くて複雑なので、「明確にこの要素が良かった!」とはいいにくいのですが、大きく分けて4つのポイントを解説しますね。
おねだりから始まるチョコの贈り合いスパイラル
中村:まず冒頭にお伝えしたとおり、「おくりましょう」ではなく「もらいましょう」から始めたところ。「もらえるかも」という期待が参加の動機になるし、おねだりするから贈る側も贈りやすくなりますよね。バーチャルチョコをもらうとそのチョコをまた配れるので、おねだりしている人に贈ってあげようという流れになる。こうやってバーチャルチョコの贈り合いが活発化します。 さらに奏功したのが「みんなにおくる」機能。一人ひとりに贈るのではなく、置きチョコ的な感じでみんなに配れる機能を付けたんです。
▼みんなに贈ったときの投稿。商品画像の露出効果も期待できる。
ほどよい自由度のキャラやメッセージでアレンジの幅を作る
中村:キャラクターのデザインや設定にもかなりこだわりました。チョコを贈り合うということでポストモチーフを使ったのですが、キャラクターのデザインはちょうどLINEスタンプで人気があるような、かわいいんだけどちょっとシュールとかキモめとか、中高生がとっつきやすいものを意識しました。
レアチョコとチョコクエストで、遊びたくなるゲーム要素をプラス
中村:チョコクエストとレアチョコ集めもユーザーさんを喜ばせる機能として楽しんでもらえました。 チョコクエストは、「10人にチョコをおくる」などのミッションをクリアすると、”キットカット ショコラトリー”の店舗で本物のチョコを受け取れる引換券をもらえる機能、レアチョコは”キットカット”を使った珍しい架空のチョコで、チョコルーレットで当てたり交換したりすることで、全種類をコンプリートできる機能です。
Twitterど真ん中世代から火をつける
中村:最後のポイントは、バズのきっかけを人気YouTuberの動画にしたことです。 このキャンペーンは商品の引換券をもらえるものなので、一歩間違うと30代~40代くらいの懸賞好きユーザーにヒットしてしまうんですが、それは避けたかった。下の世代で火がついて上に広がることはあっても、上の世代でヒットしたものが下の世代で広がることはほぼ無いからです。10代くらいの子たちの中には「大人がやっていることはかっこ悪い」みたいな雰囲気がありますから。 そこで人気YouTuberに動画を作ってもらって拡散しました。これが380万回再生されて、最初のバズが始まりました。 このプロモーションをキャンペーンのローンチから間もなくにもってきたことで、狙い通り10代から20代前半までの若い層から火をつけられました。 大久保:ありがとうございます。キャンペーンの設計からプロモーションの方法まで、かなり細かい狙いをもって作り込まれていたんですね。それが驚異的な結果に繋がった。 中村:もちろん、元々気持ちを贈りあえるツールとして親しまれている”キットカット”だからこそ、ここまで拡散されたと思いますし、色々と狙いは当たったんですが、正直ここまでのヒットは予想外でもあって……(笑)。
なぜここまでヒットしたの?【ぶっちゃけ予想を超えていたポイント】
大久保:狙い通りだった部分もそうでなかった部分もあったということですね?具体的に「予想を超えていたな」というポイントはどのようなところですか? 中村:これも色々あるのですが、3つのポイントに絞って解説しますね。絵師クラスタにクリティカルヒット!2次創作祭りに
中村:想像以上に盛り上がったのがイラストの2次創作です。もちろんキャラをいじってくれることやイラストを書いてくれる人がいることは予想していましたが、数えるほどかなと思っていたんです。 でもフタを開けてみれば、相当数のバレンタインポスト関連のイラストが生まれました。ポストキャラをアレンジして絵にしてくれるのはもちろん、アニメキャラにまつわる妄想をチョコ名につけて絵師(※)さんに贈り、それを絵師さんがイラスト化するなど、かなり濃厚なコミュニケーションが発生していました。 ※絵師とは もとは絵を描く人という意味だが明確な定義はない。Twitterなどではマンガやアニメ、ゲームに関するイラストを描く人を「絵師」と呼ぶ傾向がある。▼キャラ画の2次創作
▼ユーザーが送ったチョコ名から、絵師さんが作成したイラスト

Twitterユーザーのコミュニケーションハードルの低さ
中村:前述の、絵師さんとファンのコミュニケーションもそうなのですが、知らない人同士のコミュニケーションへの心理的ハードルがものすごく低いというのも想像以上でしたね。じつはみんなコミュニケーションが取りたい、そのきっかけが欲しいんだなと。 僕たちの世代ってまだリアルな友だち、知り合いの延長でSNSがある感覚が強いと思うのですが、今の若い子たちは全然違う。ネット上のコミュニケーションに抵抗がない分、「みんなにおくる」機能なども抵抗なく使えるんだと思います。 上の世代になると、「送る相手が決まってないのに、なんでシェアしなきゃいけないの?」となる。そこを感覚的に理解して受け入れられる素地ができているんです。 チョコクエストやレアチョコ集めでも、フォロー/フォロワーの関係以外の人とも協力していたりして、純粋に「すごいな」と。友だちの範囲内で完結させないんですよね。 今回はバレンタインがうまい口実というかきっかけになって、多くのコミュニケーションが生まれました。企業のキャンペーンであっても、それがいいきっかけになっていれば、勝手にユーザー同士がコミュニケーションをとって楽しんでくれるんだっていうのが新しい感覚ですね。複雑な機能を使いこなすリテラシーの高さ
中村:最後が、本当にリテラシーが高いな、ということです。このキャンペーンは「何ができるか」を理解するのが少し難しいんですよね。機能や要素が結構多いので。目的を達成するためにそうせざる得なくてそうしているんですけど、その難しさを軽々と超えてくるユーザーが多いことに驚きました。 スマホゲームなどで「チュートリアルを見て、やりながら覚える」というのに慣れているからなのかなと思うのですが、機能ややり方をすぐに理解して使いこなしてくれる。このキャンペーンも、まずはチョコをおねだりするという簡単な操作から入れるようにしたのが良かった。そこからやりながら覚えてくれているんだと思います。 あと、もしわからなくてもTwitterで助けを求めるし、そうすると誰かが助けるんです。こういうのって上の世代だと意外と難しくて、僕のまわりでも「この次どうすればいいの?」となって止まってしまう人が多い。このつまずきを、若い世代は超えてきますね。 というように、色々な要素が「予想以上」だったのが正直なところです。このキャンペーンを通じて、10代くらいの若い世代にバズを起こす方法は理解できてきたかなと思います。Twitterの爆発力は本当にすごいんだと実感しました。
この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部

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