「感情」を揺さぶらないと情報を届けられない時代の到来

2017/07/21



昨日、あなたはSNSでどんなニュースを見たか覚えていますか?ニュースフィードには友達のシェア、お気に入りサイトの更新などたくさんの情報が絶え間なく流れてきますが、次の日まで覚えていられるような情報はほとんどないのが正直なところではないでしょうか。

企業側からみれば、たくさんの情報を発信したとしても、ユーザーの記憶にはほとんど残らない可能性があるということにほかなりません。こういった状況下では「どのようにユーザーの関心を引くのか」が、企業側にとっての大きな課題になってきます。


その一つの対応策として注目されているのが、「感情」に訴えかけるコンテンツを配信する手法です。情緒的な内容で感動を与えたり、驚きによってユーザーの心を動かすコンテンツが多数制作されるようになってきました。


今回は、こうした“感情的な”コンテンツが増えてくるようになった背景にあるSNSのアルゴリズムの変化を紹介しつつ、実際にどのようなコンテンツが作られているのか、具体的な事例を紹介していきます。


■目次



  • Facebookもユーザーの感情の動きを重視している

  • 海外ニュースサイトで見受けられる感情を揺さぶるコンテンツ

  • シェアが広がりやすい動画コンテンツ

  • 企業もユーザーの感情に訴えかけるコンテンツを

  • パターンで見る企業のFacebook動画投稿例

  • まとめ


1.Facebookもユーザーの感情の動きを重視している


感情を動かすようなコンテンツが増えている背景として、Facebookのニュースフィード表示順を決めるアルゴリズムが大きく関係しています。


例えば、投稿されたコンテンツがどれだけ興味を持たれたかを示す指標として、「エンゲージメント」があります。このエンゲージメントは「いいね!、コメント、シェア、投稿のクリック」などのユーザー行動を指し、エンゲージメント率が高ければ高いほどコンテンツがフィードに優先的に流れるようになります。その結果、トラフィックも多く集められるのです。


これによって増えてしまったのが「釣りタイトル」でした。実際にはないニュースを、あたかも本当に起こったことかのようにテキストで表現し、多くのクリックを集めるような手法が横行しました。Facebookもこの状況を問題視し、ニュースフィードから排除するようにアルゴリズムを更新したため、釣りタイトルでエンゲージメントを高めていくことは難しくなりました。


そこで今、「いいね」や「シェア」を引き出す手法としてとして注目されているのが、「感情」に訴えるようなコンテンツです。「怒り」、「笑い」、「悲しみ」など、人の感情に訴えるようなコンテンツは、ユーザーからの反応を引き出しやすい傾向があり、Facebookでも上位に表示されやすくなります。そのため、コンテンツも「感情」を動かすことを目標に制作されることが多くなってきているのです。


2.海外ニュースサイトで見受けられる感情を揺さぶるコンテンツ


この感情を動かすコンテンツほど上部に表示されるという仕組みを上手く利用するFacebookアカウントも出てきています。海外のニュースサイトでは、ある意味扇動的なコンテンツが広く拡散されている事例が多く見受けられます。

例えばアメリカのCNNが作成した、シリアにて化学兵器の攻撃を受けた少年の惨劇を伝える動画は、その悲劇性が話題になり、900万回以上再生され、88,000件もシェアされました。




上記以外でも、政治や経済といったテーマは、意見が衝突しコメント欄が盛り上がりやすいこともあり、ユーザーのエンゲージメント率が高くなる傾向があります。その結果ニュースコンテンツの中でも上部に表示される可能性が高くなります。


3.より情報を伝えられ、ユーザーに届きやすい動画コンテンツ


また、近年のインフラ環境の整備やメディアの成長により、動画コンテンツの総数が増え、それに応じて動画のシェア数も大幅に増えてきています。


下記のグラフはアメリカのNEWSWHIP社による、Facebookページ別の動画ニュース月間シェア総数の調査結果です。上段が2017年1月の月間シェア数、下段が2016年1月の月間シェア数となっており、ここ1年間の間で、動画によるシェア数が急激に伸びていることがわかります。




https://www.newswhip.com/2017/02/video-2016-2017-facebook/


動画はテキストや画像よりもより情報を伝えることができるため、よりユーザーの感情を動かしやすいコンテンツフォーマットですし、Facebookのニュースフィードアルゴリズムの観点でもユーザーに届きやすいです。今後もより動画コンテンツでの投稿が一般的になってくると予想されます。


4.一般企業もユーザーの感情に訴えかけるコンテンツに挑戦すべき


これまでニュース系サイトでの事例と傾向を見てきましたが、一般の企業はどのようなコンテンツを発信すればよいのでしょうか?


結論としては同じくユーザーの感情に訴えかけるコンテンツが重要です。ですがその難易度はニュース系メディアよりも上がることに留意する必要があります。


というのも、ユーザーは「広告」だと感じるコンテンツを避ける傾向があり、その避ける行動もほぼ無意識のうちに行われるため、どんなに情報を発信したとしても無視されてしまう可能性があるためです。


ユーザーにしっかりと情報を伝えるためには、「ちょっといい」「なんとなく共感できる」というレベルではなく、「ユーザーの心が揺れ動く」というレベルのコンテンツを作り、ユーザーに印象付けていく必要があります。(※ちなみに全ユーザーの心を動かすコンテンツを作成するのはとても大変ですが、”自社のファンだけ”などターゲットを絞ることで一般の企業でも実践可能なレベルになります。この点に関してはまた別途執筆します。)


Facebookの投稿は「量より質が大事」というのはすでに常識になりつつありますが、その「質」として求められるレベルがあがっています。昨今ではフィードに流れる情報が大量でフィードが混み合っている状況なので、感情を動かすようなコンテンツを配信しないといくらコンテンツを配信したとしても無視され、徒労に終わってしまう可能性があるのです。


5.パターンで見る企業の投稿例


それでは、これまで企業によって実際にどのような動画コンテンツが作られてきたのか、驚き系・感動系に分けてそれぞれのその事例を見ていきます。


驚き系


AIG:世界最強ラグビー軍団ALL BLACKSが通行人に突如タックルをし始めた真相とは。






再生1,638万回 シェア170,244件


ラグビー界で世界最強とも呼ばれるALL BLACKSが通行に次々とタックルを仕掛けていく動画です。


屈強な男たちが東京にいることがどこか不釣り合いで興味をそそり、タックルを仕掛けていく意味もなかなかわからないことが視聴者の関心を強くひきます。

そして最後には「そうだったのか!」と思わず言いたくなるようなオチが用意されており、その最初の感情と見終わった時のギャップがユーザーを大きく揺さぶり、広く拡散されたと考えられます。


Nissan:THE PROFESSIONAL OF JAPAN これが、日本の職人技。






再生724万回 シェア47,815件


驚くべき技を持った日本の職人を紹介した動画です。絶妙なタイミングで杭を打ち込み続ける土木工事員の人たちや、うずたかく積まれた荷物を一度に運ぶ女性の姿はつい誰かに伝えたくなってしまいそうです。


また、この動画を作ったのは意外にも自動車メーカーのNissan。その意外さと職人を応援するメッセージに感動して、シェアしたくなるような人もいそうです。


感動系


タカラトミー:空港で人生ゲームやってみた






再生91万回 シェア5,704件


ボードゲームとして有名な「人生ゲーム」を空港の手荷物受取コンベアーでやってみたという、ユニークな動画です。


お客さんが荷物を受け取ると、その台にはまるで人生ゲームのようなイベントがかかれ、例えば「有名シェフの高級デザート食べ放題」「有名人になれる!アツアツな2人に取材が殺到!」といったことが実際に起きるドッキリ風の内容になっています。さらに最後にはある男性へ感動のサプライズが…!

おもしろ企画かと思えば最後には感動する。このギャップに心を動かされる人も多かったのではないでしょうか。


SK-Ⅱ:母の日






再生152万回 シェア425件


母の日に合わせた商品プロモーションとして作成された動画で、普段見守ってくれている母の温かさ、愛おしさを表現した内容になっています。コメント欄には「自分のお母さんに会いたくなった」「お母さんいつもありがとう!」といったようなコメントが多くあつまっており、母を持つ子の感情を大きく揺さぶった結果、広くシェアされる結果となりました。


6.まとめ


「感情」を動かすコンテンツの重要性や事例を解説しました。多くのシェアを獲得するためには、コンテンツの質がどれだけ重要かをわかっていただけたのでないでしょうか。

時間を割いて投稿した内容を無駄にしないためにも、投稿する前にその投稿がユーザーの「感情」を揺さぶるかどうかを吟味するようにしましょう。