【企業事例あり】2023年ライブコマースの動向や市場規模、国内人気サービスまとめ8選
2023/03/30
今盛り上がりを見せている「ライブコマース」をご存知でしょうか?
タレントやインフルエンサーがライブ動画を配信し、視聴者はリアルタイムに質問やコメントをしながら商品を購入できるという新しいEコマースの形。先行する中国では既に2時間で3億円を売り上げるようなインフルエンサーの実績も出てきており、日本でも関連するアプリが続々とリリースされています。
そこで今回は「ライブコマース」に関する基礎知識をご紹介しつつ、最新の関連情報をまとめてみました。インフルエンサーが力を増していく中で、ライブコマースが大きく成長していくことは間違いありません。取り残されることがないよう、今のうちから基本をしっかりと押さえておきましょう。
※2017年11月に行われたライブコマース事業者3社のトークイベントの記事はこちらです↓↓。
売れる配信者は100人もいない。ライブコマース事業者3社によるイベントレポート【TechCrunch Tokyo 2017】
※更新履歴
2023年3月16日:最新情報をもとに、情報を更新しました。
2019年11月8日:最新情報をもとに、情報を更新しました。
2019年6月14日:一部サービスが終了となったため、情報を更新しました。
2018年3月26日:一部サービスが終了となったため、情報を更新しました。
1. ライブコマースとは?
ライブコマースとはSNSなどでライブ配信を行い、配信者と視聴者が双方にコミュニケーションをとりながらオンライン上で買い物ができる販売方式です。
テレビショッピングのインタラクティブ版のようなイメージで、視聴者はリアルタイムで出品者・販売者に対して質問やコメントをしながらショッピングができます。
従来のテレビショッピングは情報発信が一方的であったことと比較すると、ライブコマースは双方向のコミュニケーションによって商品を十分に理解でき、ライブの良さである「臨場感」も持ち合わせたハイブリッドなEコマースの形であるといえます。
またコロナ渦では外出禁止が相次ぎ、商業施設が休業や時短営業になった結果、販売業は甚大な影響を受けました。オンラインショッピングの需要は増大したため、多くの企業がライブコマースの導入を急速に進めた背景があります。
数年前よりSNS上でのライブ配信に注目が高まっているため、その後押しもあり、ライブコマースも一般に知られるようになりました。
ライブコマースの種類
ライブコマースと一言でいってもさまざまな形態があります。どのような形態でライブ配信を行っていくかを選択することは非常に重要です。
ECモール型
ECモール型は、ECモール(楽天市場やAmazonなどの複数ショップが出店しているネット上の百貨店)のライブ配信を使用する手法です。
SaaS型
SaaS型は自社の通販サイトやアプリにタグを埋め込むことでライブコマースの機能を使う手法です。
SNS型
SNS型はSNSに既存から設定されているライブ配信の機能を使用する手法です。ほとんどのプラットフォームが無料で配信をできるため多くの企業が導入しています。
キュレーション型
キュレーション型は、既存の配信者に対して販売を委託する手法です。
独自アプリ制作支援型
独自アプリ制作支援型とは、自社のオリジナルのライブコマースを制作できる手法です。ECサイトにリンクを飛ばすこともなく購入まで進めるので、離脱率が減り高い収入率を実現できます。
ソーシャルコマースとしてのライブコマース
今まで、基本的に1人で商品選定から購買までが行われていてネットショッピング。
そこに、人とのコミュニケーションを付加してより良い購買体験を実現する「ソーシャルコマース」という新しいショッピングの形が注目を浴びていることも、ライブコマースが流行り始めていることの理由の1つです。
そもそもですが、私たちが商品を購入するまでの行動は「社会的」なものです。友達や家族に評判を聞き、店員に詳細の説明を受けるようなコミュニケーションがあってから買うかどうかを決定します。
つまり、ショッピングには人と人とのやり取りが重要なのです。しかし、これまでのECサイトではそうした身近な人の評判を得たり、直接の説明を受けたりすることが難しくなっていました。
一方で、ソーシャルメディアで人と人とが常時繋がるようになってからは情報のやり取りを前提としたショッピングができるようになってきています。友達の「いいね!」やシェアの情報を簡単に手に入れることができ、それを参考に商品を購入できます。
ライブコマースもテレビ通販に人とのやり取りを足し合わせたようなもので、これまでのテレビ通販よりも「社会的」な特徴を強めているソーシャルコマースのひとつです。そういった意味で、eコマース業界全体の流れから言っても、ライブコマースは人とつながりつつショッピングをしたいという新しいニーズに応えていると言えます。
関連記事:
東南アジアで盛り上がる!ソーシャルコマースの解説と7つの分類
2.ライブコマースのメリット・デメリット
ここではライブコマースのメリットとデメリットについて、ポイントにまとめて紹介します。
ライブコマースのメリット
メリット①:配信者とのコミュニケーションによる購買体験が向上する
ライブ配信中はコメント欄で、インタラクティブなやり取りが可能です。「買います!」「ありがとうございます!」といったようなライブ感のあるコミュニケーションが購買体験を向上させます。
また、ただ商品を買うのではなく、「この人が紹介しているから買う」といったように、思い入れをもって商品を購入することもできます。
メリット②:EC特有の不安が解消する
ライブコマースでは、画像だけではわからない点を質問でき、その場で疑問や不安を解消できます。例えば洋服であれば、生地の質感や、着心地、サイズ感など、実際に商品が手元にないと分からないようなことも聞けるのです。
特に中国では、偽物が市場に広く流通しているため、ライブ配信を通じて「商品が本物である」という安心感を得られることが重要なポイントになっています。
メリット③:ライブ動画閲覧から購入までのスムーズな導線ができる
実際にライブをご視聴していただくと分かりますが、ライブ動画で紹介されている商品へのアクセス、購入までがとてもスムーズに設計されています。
例えばユニクロは、動画の配信を見ながらその場で購入できるように、紹介アイテムへの導線が視聴画面に組まれています。
アーカイブの動画に関しても、購入までの導線が非常にスムーズなのがポイントです。
ライブコマースのデメリット
デメリット①:ライブ配信特有のトラブルが発生する可能性がある
ネット回線の不調や、誹謗中傷のコメントなど、ライブ配信故のトラブルが起きる場合があります。配信者の不適切な対応によって炎上すると、最悪の場合はブランドのイメージダウンに繋がりかねません。
事前に入念な打ち合わせを行い、ガイドラインを用意するなどの対策が必要です。
デメリット②:配信の準備が大変
SNSや自社サイトでライブコマースを実施するためには、日ごろからSNSで視聴者のメリットとなる情報を発信しフォロー数を稼いだり、インフルエンサーにPRしてもらうなどが必要です。
また、商品の魅力を伝えることができる配信者を確保するにも時間がかかります。
デメリット③:配信中に注文が集中するため、しっかりとした運用体制が必要
配信後もそうですが、配信中に注文が集中するため、注文に滞りなく対応できる運用体制が欠かせません。
3.ライブコマースの認知率や市場動向
2017年ごろから日本にも浸透してきたライブコマースですが、サービスの認知率や利用者数の拡大がなかなか進んでいないという意見もあります。ライブコマースに関するデータから、現在の市場がどのような状況にあるのかを探ってみましょう。
ライブコマースの認知率や利用状況
マクロミルによる15歳から49歳の男女2万人を対象にしたライブコマース利用実態調査によると、ライブコマースの認知率は約43.2%でした。
認知率には年代差がみられ、最も認知率が高いのは10代で40.0%、20代が36.7%、30代が29.9%、40代が21.5%となっており、若い年代のほうがより認知率が高い傾向があります。
ライブコマース認知者のうち、実際にライブ配信を視聴したことがある人は41.1%、視聴したうえで商品を購入したことがある人は14.0%となっています。
購入者に今までに買ったことのあるものを聞いてみると、最も多いのが「服」で66.3%、「アクセサリー・時計」36.8%、「家電」29.8%、「書籍・雑誌・コミック」「音楽CD・DVD・ブルーレイ」27.0%と続きます。半年以内にライブコマースで買い物をしたユーザーの1ヶ月あたりの購入金額は、平均6,512円でした。
ライブコマース利用理由には「出品者が紹介する商品を買いたい」「商品の詳細(サイズ感、着心地/色、香り、味など)がリアルタイムで質問できる」「ショップ店員と話すように、買い物ができる」といったものも挙げられており、インターネット上でありながらまるで実店舗で買い物をしているような購買体験を求める層が存在することが分かります。
購入したことがある商品として「服」が多いのは、実際に手に取らないとわかりにくいサイズ感や、着心地などを直接質問できるというのが大きいでしょう。既存のECサイトでは見えにくい情報がその場で得られるのはライブコマースの強みであり、ファッション通販分野でのニーズの高さが窺えます。
また、「今後もライブ配信を視聴し、買い物をすると思う」が85%と利用継続の意向を示す人が多く、ライブコマース市場の広がりが予見できます。
ライブコマース市場に参加する企業
ライブコマース市場に参入する企業も増加しています。
ライブコマースサービスには、楽天やメルカリ、ヤフーショッピングなどのECモールにライブコマース機能が付いた「ECモール型」や、インフルエンサーをアサインして商品を紹介させる「キュレーション型」など様々なものがあります。
最近は、「SaaS型」のサービスを提供する企業も出てきており、自社ECにそういったサービスを導入し、ライブコマースを実施するケースも見られます。また、国境を越えて通信販売を行う「越境EC型」や、クラウドファンディングに特化した「クラウドファンディング型」など、特定の領域で独自色を出すサービスも増加しています。
さらに、コンサルティングなどを含めた「ライブコマース運用支援」サービスも生まれています。ライブコマースサービスや関連サービスを提供する企業が増えているという点では、まだまだこれから業界が盛り上がっていく可能性を感じられます。
ライブコマースを定着させるための課題
特に若年層に一定の認知率があり、参入企業も増加傾向にあるライブコマースですが、実践する企業は「売れる配信者が限られる」という課題を感じています。配信者は、商品を売れる人・売れない人で二分化され、売れない人が大多数を占めているのが現状なのだそう。インフルエンサーをアサインすれば動画の視聴者は増えるものの、購買に至らないケースも多いと言われています。
売れる人・売れない人の二分化が起こる理由として、視聴者とのコミュニケーションの難しさが挙げられます。ライブ配信で商品の説明をしてもスペックの話に終始してしまったり、視聴者が知りたがっている情報を提供できなかったりするパターンが多いのです。ライブコマースでは「配信者のファンだから買う」という購買行動が起きますが、視聴者の交流や商品の紹介が上手くなければファンもつかず、販売につながらない、という悪循環に陥ってしまいます。
こうした課題を改善するためには、配信者と視聴者の間で共感が生まれるようなストーリー作りが重要です。思わずハートやコメントを残したくなるような、ファンが増えるような配信をすることが、購買につながるカギと言えます。
また、ライブコマースのプラットフォームを提供する企業と配信者の連携や、プラットフォームとしての付加価値の向上、売れる人を育てる環境づくりなどが必要になってくるでしょう。
関連記事:
売れる配信者は100人もいない。ライブコマース事業者3社によるイベントレポート【TechCrunch Tokyo 2017】
参考:中国におけるライブコマースの市場規模
ライブコマース最先端であり、すでにスタンダードな販売・購入手法として定着している中国の市場規模についてご紹介します。
デロイトの発表によると、中国は世界最大のライブコマース市場を有しており、2018年には前年比32%増の44億ドルに達し、視聴者数は4億5,600万人と推定されています。毎日4,000以上のライブコマース配信者が、15万時間以上のコンテンツを生み出しています。
中国国内で圧倒的な人気を誇るECサイト淘宝(タオバオ)では、ライブ配信を通して60万以上の商品を購入可能です。
中国ライブコマースでのトップカテゴリーはファッション・美容関連ですが、生鮮食品のライブ配信にも人気が集まっています。食品の生産地・供給元に対する関心が高まっている中国の国内事情をよく反映しています。
このように、日本とはかなり市場の状況が異なりライブコマースが浸透している中国。日本でもこのように盛り上がる日はくるのでしょうか。
4. 国内のライブコマースサービス8選
それでは、現在リリースされている主要なライブコマースサービスを紹介していきます。
SHOPROOM
https://www.showroom-live.com/shoproom
- 運営会社:SHOWROOM株式会社
- 配信開始日:2016年9月7日
- 配信者:タレント、モデル
SHOPROOMはアイドルやアーティストの動画ストリーミングサービスを提供する「SHOWROOM(ショールーム)」から派生したサービスのため、タレントやモデルなど有名人による配信が中心です。過去には北川景子さんがドラマで着用した商品を紹介するなど、今後も話題性のある商品を紹介していくようです。
※画像は「SHOW ROOM」の配信画面です。
YouTube
https://www.youtube.com/channel/UC4R8DWoMoI7CAwX8_LjQHig
- 運営会社:Google
- 配信開始日:2011年4月
- 配信者:YouTuber、タレント、モデルなど
今や誰もが使ったことのあるYouTube。そのライブストリーミング機能である「YouTube Live」は誰でも無料で利用でき、スマホ一つあれば配信できるので気軽に始められます。
その手軽さから多くの企業が参入していますが、一方で集客のために、日ごろから動画投稿やSNS発信、YouTube内でのSEO対策が欠かせません。
スマフォアプリでLive配信するためには、チャンネル登録者数が1,000人以上必要です。
https://creators.instagram.com/live?locale=ja_JP
- 運営会社:メタ・プラットフォームズ
- 配信開始日:2017年1月
- 配信者:インスタグラマー、タレント、モデルなど
meta(旧:Facebook)が運営するInstagramのライブストリーミング機能である「インスタライブ」。こちらもスマホひとつあれば気軽に実施できます。
2021年3月から最大4人同時にライブ配信ができる「ライブルーム」機能を導入しています。この機能は同じ場所に集まらなくとも複数人で同時配信できるといったもので、それぞれのユーザーのフォロワーに認知してもらうことができます。
Instagramでは投稿した写真からブランドイメージが付きやすいため、ターゲットにしたいユーザー層にフォローしてもらうためにも日ごろから発信することが大切です。
CCHANNEL
- 運営会社:C Channel株式会社
- 配信開始日:2021年4月30日
- 配信者:インフルエンサー
C Channelは、女性をターゲットにしている動画メディアです。発信しているコンテンツはメイクやヘア、ファッションに関する動画が中心です。
20~30代女性の国内フォロワー数は2,600万人以上で、圧倒的な人気を博しています。
楽天ショッピングチャンネル
https://event.rakuten.co.jp/campaign/live-shopping/shop/
- 運営会社:楽天グループ株式会社
- 配信開始日:2021年11月15日
- 配信者:楽天市場に出店している企業
楽天市場では、各店舗ページにてライブ配信できる機能があり、最大90分間のライブ配信で商品を紹介しています。
また「楽天スーパーSALE」などのイベントと連動し、各店舗のライブ配信を紹介するページ「楽天市場ショッピングチャンネル」でも、最大30分間のライブ動画を配信できます。
楽天市場内での配信となるため、通常の客よりも購買意欲があり、販促しやすいプラットフォームとなっています。
BASEライブ
- 運営会社:BASE株式会社(BASE,Inc.)
- 配信開始日:2017年9月20日
- 配信者:商品販売者、タレント、インフルエンサー
BASEライブは、BASEで出店しているショップやメーカーが直接出演して商品の魅力をライブ配信できるというのが特徴です。インフルエンサーやモデルなどの限られた人でなくても配信でき、ユーザーはライブ配信を見ながら商品を購入できます。
ヤフオク!ライブ
https://auctions.yahoo.co.jp/topic/promo/yahuoku-live/
- 運営会社:ヤフー株式会社
- 配信開始日:2018年9月10日
- 配信者:商品出品者
日本最大級の老舗オークションサイトである「ヤフオク!」のライブコマースサービスです。商品出品者なら、誰でも手軽にライブ配信が可能で、毎日8時~25時まで多くのライブ動画が配信されています。終了間近のオークションでも、ライブ配信することで臨場感が倍増、落札の可能性が高まるかもしれません。なお、ライブ配信・視聴はアプリからのみ可能なので、注意が必要です。
au Wowma! ライブTV
- 運営会社:KDDI株式会社、auコマース&ライフ株式会社
- 配信開始日:2019年7月30日
- 配信者:タレント、インフルエンサー
KDDIとauコマース&ライフが運営するショッピングモール「au Wowma!」で2019年7月から提供が始まったライブコマースサービスです。ライブ配信された動画はアーカイブとして一定期間視聴でき、そこから商品を購入することもできます。ライブTVの視聴にはアプリが必要となります。
5. ライブコマースの企業活用事例3選
ライブコマースを取り入れて成功している企業を3つ紹介します。
ユニクロ
https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/live-commerce/
2020年に「UNIQLO LIVE STATION」というライブコマースを開始。
ファッションモデルやタレントがユニクロの商品を着てライブ配信を行い、視聴者の質問やお悩みにも適時答えつつ、服の特徴や着心地感、コーディネートについて解説しています。
Ya-man
美容健康機器メーカーのヤーマンは2021年9月にライブコマース特設サイトを公開。
中国ライブショッピング市場で培った知見を余すところなく発揮して、初心者でもわかりやすい情報提供と、質・量ともに高いレベルのライブ配信を行っています。
無印良品
https://www.muji.com/jp/live-commerce/index.html
2021年11月からライブコマースを開始。
なるほどと思える商品情報や使い方など、日々の生活に役に立つ情報も添えて配信しています。
6. まとめ
すでにたくさんのプラットフォームが生まれ始めているライブコマースですが、それぞれに特徴があり、売っている商材やアプリのテイストも異なります。そのため自分の商材であればどんなプラットフォームと相性がいいのかを見極めることは重要です。
今後ライブコマースを活用していくのであれば、リリースされるサービスやアプリの情報をキャッチアップし、それぞれの特徴を押さえていくようにしましょう。
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