メディアが言う「SNSで話題沸騰中」は本当? セブンイレブン「ホットビスケット」のSNS拡散の流れを調査してみた!
2017/11/29
SNSに投稿、シェアされることが商品ヒットの大きなきっかけとなる現在、商品そのものはもちろん、パッケージも含めていかにSNSに投稿してもらうかを考えることは、企業のマーケティング戦略のひとつとしてもはや当たり前となっています。
しかし「SNSで話題沸騰中!」といった言葉に振り回され、実際にSNSでの口コミがどの程度、商品認知につながっているのか疑問に思っている方も多いと思います。そこで今回はセブンイレブンの「ホットビスケット」を例にとり、具体的な拡散経路やSNSきっかけで人気商品が生まれるメカニズムを調べ、まとめてみました。
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- ■目次
- SNSをきっかけとしたユーザーの購買行動
- SNSで人気沸騰?! セブンイレブンの「ホットビスケット」を調べてみた
- 拡散されていく流れからわかったこと
- まとめ
1. SNSをきっかけとしたユーザーの購買行動
消費者の購買行動のプロセスは、大手広告代理店を中心にこれまでにも多く語られてきました。そのなかでも、まず広告を使って消費者から注目を集めて、欲求をかきたて、購買してもらう…というのが主流でした。
しかし現在、広告に大きな予算を割けない中小企業の商品やサービスが、TwitterやInstagramなどSNS投稿による拡散がきっかけでユーザーへ認知されることが増えているため、購買行動のプロセスが変化してきています。
SNSがユーザー行動のきっかけに
SNSが広く親しまれる現在、必ずしも注目や認知を集める手段は広告ではありません。
下記は、広告代理店でソーシャル部門の立ち上げなどを手掛けた経験をもつjigen_1さん(@Kloutter)が提唱するものです。SNSが行動のきっかけとなるモデルの一例として紹介させていただきます。具体的には次のようなプロセスです。
- UGC(User Generated Contents)
- LIKE(いいね!)
- Search1(Twitter、Instagramなど)
- Search2(Google、Yahoo! など)
- Action
- Spread(承認欲求をのせた拡散)
1のUGCとは、ユーザーがTwitterやInstagramに商品やサービスの画像や口コミを投稿することを意味します。そしてそれを見たフォロワーが「いいね!」やリツイートなどの反応をします。
次に拡散された情報を見たユーザーが、より詳しい情報を得るために検索をしますが、これまでであれば検索といえばGoogleやYahoo! といった検索エンジンを活用していました。しかし最近ではその前にTwitterやInstagramで検索をするユーザーが増えています。
まずTwitterやInstagramのハッシュタグやキーワードをたどって「自分の好みに合うか」「写真映えするか」など“感覚的な検索”を行い、その上でショップサイトや商品のスペックなどを知るためにGoogleやYahoo! で検索をするといった形で情報をしぼっていき、購入へと進んでいきます。
さらに購入した商品を気に入った、美味しかったといった場合、またTwitterやInstagramに投稿をします。この際、ShereではなくSpreadなのは、単なるおすすめではなく、拡散されることを強く求めた投稿であることから、承認欲求をのせた拡散(Spread)となっています。
参考:本当のインフルエンサーとは、自分の投稿をリツイートしてくれる人|ビッグデータを扱うjigen_1さんの語るTwitterオーガニック論とは? – marketeer
興味を持つきっかけとして最も多いのはTwitter
購買行動のプロセスからもわかるように、すべての行動はTwitterやInstagramなどのSNSが基点となっています。特にTwitterの影響力は高いようです。
BWRITEが2017年7月、SNSを利用する15~49歳の女性400人を対象に行った「SNSコンテンツについての意識調査」において「店舗やイベント、商品、サービス」などに興味を持ったきっかけになったSNSとして「Twitter」と回答したのが72.1%と2位のInstagramの17.4%を大きく引き離しています。
一般的に、気に入った商品やサービスの拡散に積極的な10代女性が情報源として活用していることからも、Twitterが話題のきっかけとして大きな役割を果たしているといえます。
2. SNSで人気沸騰?! セブンイレブンの「ホットビスケット」を調べてみた
そもそも題材の「ホットビスケット」とは
今回、検証を行う題材である「ホットビスケット」。この商品は2017年7月にセブンイレブンから発売された新商品の冷凍食品です。バター風味のチップマーガリンを混ぜ合わせ焼き上げたビスケットで、ホットと名がつくように、レンジで温め別添されたシロップをかけて食します。
ちなみに、温めると想像以上に甘く香ばしい匂いが広がります。撮影のためオフィスで温めて開封したところ、匂いにつられてすぐに人が集まってきました。
調査の概要
調査は2017年9月1日~10月31日までの2か月間。一般に公開されているTwitterの投稿数をウォッチします。
話題となった一般人の投稿
おやつ批評「温めてふんわり食感 ホットビスケット」。セブンイレブンの冷凍コーナーで発見した、ケンタッキー等でおなじみのお菓子2個セット。シロップも個別で使いやすい。もちろんコーヒーと合う。それにしてもビスケット以外のネーミングはなかったのだろうか。確実にビスケットではない。パン。 pic.twitter.com/lPLAz0DJr6
— ぬまがさワタリ@生きもの図解本12/15発売! (@numagasa) 2017年9月17日
▲9月17日に投稿されたもの
セブンの新商品のホットビスケットマジ美味い…。写真の見た目がスタバのバターミルクビスケット感あるから固いかな?って思ってたけどホットケーキよりももっちりしてるふわふわ食感。やばいわ〜こんなのバニラアイス添えたらやばいわ〜〜〜カロリーオフ?いいえ、カロリーオン!オン!オン!! pic.twitter.com/jsraMjektX
— 🐻毛の民・ぼさんぼん🐻 (@petra_159) 2017年9月18日
▲9月18日に投稿されたもの
この2つのつぶやきは、9月17、18日に投稿されたものです。ぬまがさワタリさん(上)は約4,000RT、毛の民・ぽさんぽんさん(下)は約24,000RTを獲得しています。
どちらの方もフォロワー数は多いですが、食品関連の専門家でもなければ、普段から食べ物に関するつぶやきが多いフード系のインフルエンサーというわけではありません。この時期からこうした一般の方によるつぶやきが、少しずつ増え出していきます。
第一波:ネットメディア
Twitterでのつぶやきが増えてきたことで、9月20~23日にかけてロケットニュースやトゥギャッチなどのネットメディアに取り上げられ、それを見たユーザーがその記事をTwitterで拡散する形で最初の大きな波がやってきます。
▼ロケットニュース
Twitterで話題のセブンイレブン「ホットビスケット」がめちゃウマ! ホットケーキの存在意義が根こそぎ消滅するレベル
https://rocketnews24.com/2017/09/20/957928/
▼トゥギャッチ
セブンの「ホットビスケット」にアイスを乗せて食べたら鬼ウマだった
https://togech.jp/2017/09/23/50780
第二波:公式投稿
その後、一旦、波はおさまりますが、調査終了間際の10月27日午前にセブンイレブンの公式アカウントがホットビスケットについて投稿(現在は削除)したことでリツイート数3,210、いいね! 数9,378を獲得し、第二波がやってきます。
編集部が企業の投稿管理ツールで確かめたところ、当時公開されていたツイートにも「話題沸騰の~」といった言葉が見受けられました。
「ホットビスケット」関連のツイート数の推移まとめ
今回の調査期間中のホットビスケット関連ツイート数を表にすると、Webメディアによる拡散と公式アカウントによるつぶやきによって大きなつぶやきの波が来ていますが、そのきっかけを作ったのは、メディアでも公式アカウントでもない一般ユーザーのつぶやきでした。
ユーザーのつぶやきによる初動以前(9/1-16)は平均4件ほどのツイート数だったものが、それ以降(9/18-10/31)、平均54件まで上昇し、ベースが13倍アップしています。これは確かに「SNSで話題沸騰」したと判断できそうです。
3. 拡散されていく流れからわかったこと
今回の調査結果からわかったことはSNSを通じて話題が広がり、それによって認知につながっていくことが実際にあるということです。
購買につながったかどうかのデータはとれませんが、ホットビスケット関連のつぶやきの多くが、実際に食べた感想であることから、多少なりとも購買にも寄与しているといえそうです。SNSをきっかけとした話題拡散のポイントををまとめます。
①拡散のきっかけは、専門家である必要はない
これまでSNSでの情報拡散のきっかけとなる人は、有名人やその道の専門家であることが多いと思われてきました。しかし今回の結果を見る限り、拡散のきっかけとなる人は、必ずしも専門家である必要はないことがわかります。それよりもその商品の魅力を存分に伝える実感のこもった言葉であることや、写真付きでその商品が一目でわかることのほうが重要になりそうです。
②影響力のあるメディアで取り上げられることで、ツイート数は激増する
先ほどの「初動」が来る前の1日の平均つぶやき数は4件。それがWebメディアに取り上げられた以降は平均54件となり、実に13倍にも増えています。またこれは公開アカウントの数字のみのデータのため、鍵アカウントも含めるとさらに増える可能性もあります。
③話題にしている人は自社のフォロワーとは限らない
通常、情報の拡散は自社のフォロワーから徐々に広がっていくと考えがちですが、今回の結果を見ると公式アカウントのつぶやきはTwitter上で第一波が過ぎた後です。ということは自社のフォロワー以外のかたから情報が拡散されていった可能性が非常に高いという推測ができます。
4. まとめ:企業としてできること
今回の調査でわかったことを基に、SNSから話題になるヒット商品を生み出すために企業ができることを考えてみましょう。SNS拡散を意図的に作り出すことは簡単ではありませんが、以下のようなことを実践し、少しでも話題が広がっていくように努力してみるといいでしょう。
①初動(最初の話題顕在化)を起こせるように工夫する
SNS拡散の初動は一般ユーザーになることが多く、企業ができることはないと思われるかもしれません。しかし重要なことは、ユーザーにTwitterに投稿したいと思わせることであり、そのためには商品やパッケージをいわゆる「SNS映えする」よう手がけるなど、企業としてやるべきことはいくつでもあります。
また、どれほど写真映えする商品でも中身が微妙だったら拡散する気は起きませんから、ほかの人にわざわざ勧めたくなるような商品力も必要です。
加えて、できるだけ早い段階で話題になっていることを察知し、そのつぶやきに対していいね! をしたりリツイートしたりなど常にアクティブに行動できるよう、チェックを怠らないことも大切です。
②メディアが取り上げやすいように情報をまとめる
SNSで商品が話題になり始めたら、リツイート数が多いツイートをURL付きでまとめてプレスリリースを打つなど、メディアが取り上げやすくする工夫をしてみるのもいいでしょう。
「ユーザーの声」「商品の公式な情報」がまとまっていれば、メディア側も記事を作る手間を省けるので、取り上げるインセンティブになるかもしれません。Twitterでは特定のツイートをまとめて表示できるモーメント機能があるので、それを使ってもいいかもしれません。
③自社の元々の顧客にも拡げる
Twitterは基本的に自分がフォローしているユーザーのつぶやきやリツイート、いいね! しか閲覧することはできません。そのため「SNSで話題沸騰中=自社のアカウントのフォロワーもみんな知っている」とはならない場合も多くあります。
自社の商品が話題になっているのであれば、必ずそれに乗っかって拡散することで、自社のフォロワーにも知ってもらえます。自社のフォロワーは元々がファンである可能性が高く、話題がさらに盛り上がり、好意的な口コミを増やせる可能性も十分にありえます。
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この記事を書いた人:小東真人
17年ガイアックス入社のデジタルネイティブ世代。靴磨きが大好きで、休日はInstagramで関連アカウントばかり見ている。