ソーシャルメディアガイドラインとは?内容や作成方法、企業事例を紹介

2022/01/03


こんにちは。ガイアックスでSNSマーケティングコンサルタントをしている高橋です。最近弊社では大企業から中小企業まで幅広く「ソーシャルメディア(SNS)ガイドライン」作成のご相談をいただきます。

その中で見えてきた企業が抱えているソーシャルメディア周りの問題について、ソーシャルメディアガイドラインを作成する場合、どうしたら良いかを中心にお話したいと思います。

※編集部注
2021年12月20日:「ソーシャルメディア(SNS)ガイドラインに関するよくあるお悩み」を追加しました。
2020年6月24日:画像や文章を加筆修正しました。

    ■目次

  1. ソーシャルメディア(SNS)ガイドラインとは?ソーシャルメディアにまつわる3種類の文書
  2. ソーシャルメディア(SNS)ガイドラインを作る目的
  3. リスク許容度別、適切なソーシャルメディア(SNS)ガイドラインのタイプ
  4. ソーシャルメディア(SNS)ガイドライン作成の手順
  5. ソーシャルメディア(SNS)ガイドラインの導入事例と効果
  6. ソーシャルメディア(SNS)ガイドラインと企業の「炎上対策」
  7. ソーシャルメディア(SNS)ガイドラインに関するよくあるお悩み
  8. ソーシャルメディア(SNS)ガイドラインの雛形(テンプレート)について
  9. まとめ

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1. ソーシャルメディア(SNS)ガイドラインとは?ソーシャルメディアにまつわる3種類の文書

ソーシャルメディアにまつわる会社の文書には、主に3種類があります。ステークホルダーなど社外を対象とした「ソーシャルメディアポリシー」と「コミュニティガイドライン」、従業員や社員など社内を対象とした「ソーシャルメディアガイドライン」です。これらは混同されやすいため、各文書の対象者、定義された内容、目的と機能の違いを押さえておきましょう。

なお、特に社外向けの2種類の文書はどちらかしか作成しないケースも見られます。3種類すべてを必ず作らなければならないというわけではありません。

ソーシャルメディア(SNS)ガイドラインとは?

従業員や社員を対象に作成する、ソーシャルメディアの利用に関する指針とルールです。

ソーシャルメディアの利用をめぐるトラブルを未然に防ぐためのルールや手順、禁止事項のほか、クレームや炎上が発生した場合の対処方法など詳細な内容が盛り込まれています。後に解説するソーシャルメディアポリシーなどと比較すると実用向けです。

ソーシャルメディア(SNS)ポリシーとは?

ソーシャルメディアに対するスタンス、態度、心構えを表明するものです。会社としてどのように考えているかを社外に示す役割を持っていますが、あまり明確なルールを設けると、ソーシャルメディアを運用する際に、柔軟な対応が困難になる可能性もあります。

コミュニティガイドラインとは?

ソーシャルメディア及びオンラインコミュニティを利用するユーザーを対象に、免責、削除方針、禁止事項、調停などの規約を明示するものです。

主に、ユーザーの動きに対する会社側のリスクヘッジとして機能します。ソーシャルメディアポリシーは抽象的ですが、コミュニティガイドラインは厳格で具体的な内容であることが多いです。

2. ソーシャルメディア(SNS)ガイドラインを作る目的

なぜ、企業にはソーシャルメディアガイドラインが必要なのでしょうか。その目的を整理します。

①SNS運用ルールを統一化する

一つの会社の中で、事業部や部署ごとに、商品、サービス、媒体等によって、さまざまなSNSのアカウントを運用するケースが増えています。この場合、運用担当者の数も多く流動的であるなかで、企業としての指針やルールを統一しておくことが重要です。

SNSアカウントの開設や情報発信のための社内手順、発信していい(or発信してはいけない)テーマを明文化しておくと、運用担当者が変わっても、共通基準に従って情報を発信できます。運用ルールの統一化はSNS運用の基準を定め、安全かつぶれない発信をするための拠り所となります。

②炎上の防止と発生した際の対応を明確化する

 

炎上リスクを減らすためには、炎上を未然に防ぐためのルールづくり等の防止策に加え、炎上が発生した際にはすみやかに対処できるよう、事前にエスカレーションフローを定めておくことが大切です。

SNSの炎上は企業に対して甚大な被害をもたらすことが多く、どの企業でもセンシティブになる部分です。炎上には様々な要因があるため100%防ぐことは不可能ですが、リスクを抑えることはできます。さらに、炎上時でも対応によっては悪影響を減らし、むしろイメージアップにつなげられることもあります。

関連記事:【保存版】SNS炎上を防ぐ4つの対策と、炎上発生時の3つの心構え
関連記事:【担当者保存版】Facebookの乗っ取りは思ったより簡単?!今すぐやっておきたい5つの対応策
関連記事:企業活用でも要注意! Twitterアカウントの乗っ取りの原因と対策まとめ

3. リスク許容度別、適切なソーシャルメディア(SNS)ガイドラインのタイプ

ソーシャルメディアガイドラインは、攻め・中間・守りと大きく3タイプに分けることができます。平時と有事に、「やってはいけない禁止指定項目」と「やるべき行動指定項目」のどちらを設定しておくか、日ごろの運用の自由度、炎上時のリスク許容度など、自社に合った適切なタイプを選択して作成しましょう。

3タイプそれぞれの特徴と採用されることが多い業種を解説します。

攻めタイプのソーシャルメディアガイドライン

攻めタイプのソーシャルメディアガイドラインの場合、平時・有事に関わらず、やってはいけないことだけを定めます。禁止とされていること以外は、運用部門や担当者が現場で判断して動くことができ、自由度が高いという特徴があります。

事業内容における炎上リスクが比較的少ないIT系企業や、ソーシャルメディア運用者のリテラシーが高いマーケティング系、スピード対応が求められるメディア系などで採用されることが多いです。

中間タイプのソーシャルメディアガイドライン

中間タイプは、平時はやっていけないことの禁止するだけにとどめて自由度を高めつつ、有事はやるべきことだけを定めるというもの。炎上が発生した際などの対応に自由度はありませんが、対応にあたっての行動が明確で、逆効果になるような対応は起こしにくいと言えるでしょう。

小売、食品、メーカー業など、普段はユーザーと交流したり、柔軟な対応が求められたりする一方で、有事には厳粛な対応が求められる業界で多く採用されています。

守りタイプのソーシャルメディアガイドライン

最後に、守りのタイプ。平時と有事に関わらず、やるべきことだけが定められています。3タイプの中でもっとも自由度が低く、発信する内容や対応に対する炎上のリスクも低いと言えます。

このタイプは、製薬会社や保険業など、情報の正確性とミスの無さに重きを置く業界で多く採用されています。

4. ソーシャルメディア(SNS)ガイドライン作成の手順

ソーシャルメディアガイドラインを実際に作成したい場合の手順を解説します。

  1. 目的と方針の整理
  2. ガイドラインの対象を設定
  3. 関係各部のヒアリング
  4. ガイドライン骨子作成 
  5. 現場との擦り合せ 
  6. 骨子に基づくガイドライン制作 
  7. 現場・関係各所との擦り合せ 
  8. 対象範囲への共有&浸透

①目的と方針の整理

前述の「ソーシャルメディアガイドラインを作る目的」と「リスク許容度別、適切なソーシャルメディアガイドラインのタイプ」を参考にしながら、まずは、ガイドラインを作成する目的や自社に合ったタイプを選びます。

②ガイドラインの対象を設定

次に、作成するソーシャルメディアガイドラインを適用する対象を設定します。全社、一部の事業部、特定の部署、ユーザーと交流が多い担当者単位など、対象範囲を決めましょう。

③関係各部のヒアリング

適用対象者が決まったら、次の項目を中心にヒアリングします。

  • 現状の活用方法
  • 要望
  • 何が足りないか
  • 何が手間になっているか
  • 何を禁止されると困るか など

併せて炎上発生時のエスカレーションフローについて、どの部門が主体となるのか、意思決定者やメンバーの確認も行いましょう。管理側と現場側の要望や考えを擦り合せる場であることに注意しながら、ヒアリングを進めることが大切です。

メディア対応は広報部、対策の考案は経営企画部、カスタマーサポート等を行う企業であればそこでの対処も含め考えるようにしましょう。場合によっては経営判断を必要とする場面もあるので、それを含めてガイドラインに記載し、経営陣の了承もしっかりととっておきましょう。

<エスカレーションフローの例>

④ガイドライン骨子作成

ソーシャルメディアガイドラインの策定目的、タイプ、適用範囲を整理し、ヒアリングが終わったら、骨子を作成します。一例までに、弊社制作時の目次はこちらです。

⑤現場との擦り合せ

骨子ができたら、もう一度ヒアリングを行います。管理側と現場側で、相互の認識のずれや目次構成の変更希望などがあれば骨子を修正して、再度ヒアリングする手順を繰り返し、実際に作成に入るまでの精度をできるだけ高めていきます。

⑥骨子に基づくガイドライン制作

管理側と現場側の双方が納得のいく骨子ができたら、制作に入ります。

⑦現場・関係各所との擦り合せ

制作したガイドラインに基づき、現場および関係各所と最終的な擦り合せを行います。ここで改めて調整が必要になった場合には、修正と擦り合せの手順を繰り返し、認識が一致し相互に納得できれば制作作業は完了です。

⑧対象範囲への共有&浸透

完成したガイドラインを指定の保管場所に格納します。そして、対象範囲となる部署やメンバーに研修や勉強会を開き、定期的に共有し、周知徹底を行いましょう。迷ったときや困ったときの拠り所として思い出し、参照してもらえるほど浸透させることができれば、ガイドラインを効果的に運用しているといえます。

5. ソーシャルメディア(SNS)ガイドラインの導入事例と効果

実際に、弊社でガイドラインを作成した6業界の事例を各社の課題と改善結果を合わせてご紹介します。

事例①:製薬業界

導入前の課題は、当時内資製薬企業ではSNS事例がないなかで海外支社は自主的に行っており、国内での初事例を安全に作りつつ、海外に睨みを効かす必要があった点です。

広く拡散させるよりも、炎上を防止する安全性を重視したり、グローバルでも理解されやすい明瞭で翻訳可能性の高いルール設計して、関係各所の理解を得やすくなり、内資としては初めてのSNSアカウントの開設に成功。現時点に至るまでトラブルなく運用できるように。また、海外支社のSNS運用に統制が利くようになりました。

事例②:放送業界

導入前の課題は、従業員の投稿や業務利用で実際に炎上する事例が相次いでいた点です。マスメディアは比較的炎上しやすいものの、SNSを有効に活用しなくてはならない側面もある十分にリスクを認知しつつ、積極的利用を妨げるものであってはいけない点に注意してガイドラインを作成しました。

ガイドラインのほか、ガイドラインの勉強会も通じてリスクの周知がされるようにしたところ、トラブル発生時の対応フローが整ったことで炎上発生時にもスムーズな対応が可能になりました。

事例③:通信業界

こちらは最初のガイドライン作成時よりも取り扱っているソーシャルメディアが多くなったので、それらの最新事情を酌み、有効に活用するアップデートされたものが必要になったケースです。

そこで各媒体の特性を十全に踏まえた運用のルールや、運用の外部委託業者にも分かる簡明な文章に注意して作成したところ、各媒体の仕様やアルゴリズムの特性を踏まえた細やかな運用が可能になり、外部委託業者とのコミュニケーションも円滑になりました。

事例④:化学工業業界

同社ではBtoCからBtoB、多数のブランドなど事業部が多岐に渡るなか、広報でSNSを管轄することが困難になっていました。また、既に行われている各事業部でのSNS運用やインフルエンサー活用の美点を残しつつ、安全性を高める必要がありました。

そこで各事業部の丁寧なヒアリングを通じ、各事業部の事情を酌みつつ、広報が現状をつかみやすくするため透明性を高めたところ、会社内では汎用性の高いガイドラインになり、新しいSNSの開設、不必要になったSNSの廃止などが容易になりました。

事例⑤:小売業界

こちらは各店舗や従業員のアカウントが乱立し、統制がとれなくなってしまったケースです。ガイドラインを作成する上で、SNSを有効に活用するために、さまざまな媒体の特性を踏まえた有効な活用法を分かりやすく伝える必要があり、顧客も多様なためリアルに劣らない接客をSNS上で行う必要がありました。

以上を踏まえて作成したところ、事例を交えた有効活用の解説で各店舗、従業員が有効な活用をできるようになりました。またアカウントの管理方法を整え、不要なアカウントの削除、トラブルを起こしたアカウントの追跡が容易になりました。

事例⑥:ホテル業界

最後に、同社ではグローバルホテルチェーンであるため、本社で一定のブランド管理を行う必要がありました。作成時のポイントとしてはアイコン、カバー画像などの品質を保つ必要があり、トラブル発生時には本社が速やかに把握し、指示を出せる環境を整える必要がありました。

ガイドラインを作成したことで、各ホテルのリテラシーの違いなどで生じていた運用の質の差が縮まり、トラブル発生時には本社を交えて、ブランド毀損を防止する円滑な対応が可能になりました。

6. ソーシャルメディア(SNS)ガイドラインと企業の「炎上対策」

こちらでは企業がソーシャルメディアガイドラインを策定する際にもっとも重視することが多い炎上対策について、SNSコンサルタントの立場からいくつかアドバイスをお送りできればと思います。

SNSを使わなければ、炎上リスクはゼロになる?

炎上によって、企業として甚大なダメージを受けてしまうことは少なくありません。その懸念からSNSでの活動が消極的になったり、参入自体をためらったりする企業があることも事実です。しかし、近年では上でも書いたとおり炎上の火種はSNSの領域にとどまらず、テレビやラジオ、個人の活動から発生し、SNSを通じて大炎上になることもあります。

社会活動をする限り、火種はそこらじゅうにあると考えたほうが良いでしょう。「SNSアカウントを運用しなければ、炎上リスクとは無縁でいられる」というのは間違った認識です。

ではもし炎上が起きてしまったらどうしたらいいのでしょうか。

関連記事:【SNS炎上の企業事例】SNSで企業が炎上する原因と過去の炎上事例まとめ

関連記事:Twitterの声を拾うだけでは終わらない!マーケティングと炎上対策に使えるソーシャルリスニングのススメ。

適切な炎上対策とは、事前に策定すること

炎上対策で大切なのは「焦らず、素早く誠実に対処する」ことです。

このことを心がけて対処すればいいのですが、いざ我が身(我が部署、我が社)に炎上が起きたときにはそう簡単に落ち着けるものではありません。

ですので、「炎上の際に気を付けなければいけないことは何なのか」「どう対処するのか」を事前に策定しておくことが大切です。この「事前に策定」を実現してくれるのが、ソーシャルメディアガイドラインと言えます。炎上が発生したときには、企業全体として対応しなくてはなりません。ガイドライン内で、対応部署をきちんと明記し、突然の事態にも対応できるようにしておきましょう。

関連記事:炎上はSNSアカウントを持たなくても起こるし、そもそも予防不可能。そして発生してからが本番

7. ソーシャルメディア(SNS)ガイドラインに関するよくあるお悩み

弊社では2021年初旬からほぼ毎月、SNSガイドライン作成や社内統治に関するウェビナーを実施して、述べ500人以上の広報やマーケティングご担当者のお悩みを聞いてまいりました。

同ウェビナーでは毎回さまざまなご質問やご相談をいただき、個社が特定されない範囲で即興でお答えする形式をとっております。そこで今回は、特に頻出する5つのご質問と弊社の回答をご紹介します。ウェビナーは随時こちらのページでお申し込みを承っております。

  1. 周知の仕方について
  2. 従業員のSNS利用について
  3. コメント対応について
  4. グローバル企業について
  5. 親会社子会社のルールの設け方について

①周知の仕方について

最初の質問は、社内周知の方法についてです。ソーシャルメディア(SNS)ガイドラインを作ったからといって、基本的に従業員がその内容をすぐに守ってくれるわけではありません。ルールの周知が必要です。

社内周知には主に二つの方法があり、両方行うとより効果的です。一つ目は実際にそのガイドラインを守るステークホルダーとなる、現場で運用する人や事業会社の人を巻き込み、その人たちの意見を吸い上げながら一緒にガイドラインを作ることです。

ガイドラインに巻き込む社内の関係者は、法務部門や広報部門、その他にもさまざまです。実際に使う人々の業務の実情や、意見を踏まえないガイドラインは当然使いにくく、守られません。新しいルールができても読まれない、読んだとしても現実的ではないため使われないことが起きるのです。そんな事態を起こさないためにも、最初から現場の人を巻き込み、その人たちの意見を反映させながら作っていくことが非常に重要です。

二つ目は、ガイドライン作成後に研修を行うことです。ガイドラインの説明会を開いたり、ガイドラインのEラーニング教材を作ったりするといいでしょう。またガイドラインを使わないとどうなるか、セミナーや勉強会形式で事例を交えて伝えることも大切です。

炎上が起こった時に、社内ルールに従わず適当に対処すると大変なことになるリアリティーや恐怖感を覚えてもらえると、社内周知がうまくいきやすいでしょう。

②従業員のSNS利用について

二つ目の質問は、従業員のSNS利用についてです。業務とは別に、従業員がSNSを利用している場合、ガイドラインで縛るべきなのでしょうか。ガイドラインを作ることは可能ですが、実際のところ従業員はSNSを利用してしまうでしょう。

最近はだいぶ減ってきたものの、従業員向けの規則として「SNS利用禁止」を挙げる企業は多数存在します。「SNSを利用して炎上した場合、会社のレピュテーションリスクにつながるため、Twitterを使ってはいけません」、もしくは「Instagramを使ってはいけません」といったルールを持つ企業があります。

しかし実情、従業員はSNSを使用しており、プライベートでのSNS利用は個人の自由に当たるため法的に規制できません。有名無実化した規則やガイドラインを作るのではなく、従業員教育やSNS使用を前提としたルール作成を行いましょう。

本人にとっても、会社にとっても不利益なことが起こらないように、使用方法を丁寧に教育する。もしくは、問題が起こった場合は速やかに会社に報告する、といったルールをあらかじめ作っておくことが重要です。また、次のルールも盛り込んでおくといいでしょう。

  • 実名で発信する場合は、すべて所属組織とは関係ない個人の意見である旨をプロフィール欄に明記しておく
  • 事業領域に関わる投稿の場合、所属組織とは関係ない個人の意見であることを付記しておく

企業の運用とは別に、従業員がソーシャルメディアやSNSを使う前提で「どうすればリスク軽減できるのか」という観点で作成する企業も最近は増えています。規則を作らずとも、そのリスクを正確に認識させる教育を行うことは有効です。規則を作る場合は、次の内容を記載しましょう。

  • 会社としての発信ではないと分かるように投稿する
  • 炎上が起こった際はコーポレーションのレピュテーションリスクにつながる可能性があるため、適切に報告する

③コメント対応について

三つ目の質問は、コメントや返信への対応についてです。具体的には商品・サービスへのネガティブなコメントや返信への対応を、ガイドライン作成時にどう記載しておくべきかという内容です。

ネガティブなコメントへの対応策は企業によってさまざまです。例えば製薬企業のような規制産業や医療業界、または賭け事に関する業界の場合は、コミュニケーションを取ること自体がリスクになります。このためネガティブな反応が届いたとしても、放置しておくしかないケースもあるでしょう。

また、有害事象の報告であれば、厚労省(グローバル企業の場合は各国の厚労省に当たる場所)に報告しなければなりません。この場合は、「各国の地域の法律に基づき、速やかに報告してください」と記載しておく必要があります。さらに、事実に基づいている場合は、真摯に受け止め、誤解に基づくものならきちんと誤解を解く投稿をするほうがいいでしょう。

また誹謗中傷や違法な内容が含まれていたら、「削除・非表示・ブロック」という対応を取ってもいいというルールも作れます。これらは商品やブランドの特性、業界がどういう規制を受けているか、運用状況のリソースの問題などに基づきます。

ガイドラインを確認すればすぐ対処できるように「コメントはネガティブなものか、ポジティブなものか」、「ポジティブなものならば、どういう内容か」というツリー構造で分け、業界や会社の体制に合わせて細かくフローチャートを作っておくと良いでしょう。

④グローバル企業について

四つ目は、グローバル企業のガイドラインについてです。グローバル企業には大分すると二つのパターンがあります。一つは海外に本社を持つ企業が、ガイドラインの日本国内版を作りたい場合。もう一つは日本に本社を置く企業が、各国の運用にも対応するグローバル版のガイドラインを作りたい場合です。

前者であればグローバルのルールを参照しつつ国内に合ったものを作成します。後者は、各国で事情が異なる場合が考えられます。

使用しているソーシャルメディア、およびソーシャルメディアに対するカルチャーも異なるケースです。ある国では問題になっても、別の国ではまったく問題ないと見なされる事象もあるのです。この場合は、憲法のようになるべく抽象度の高いガイドラインを作り、最低限守ってほしい内容を盛り込んでおくと良いです。

炎上が起こった際は、本社の広報部門やコーポレートコミュニケーション部門に報告するといったルールを作ります。さらに各国のリージョンごとの規制や事情に適応したものが必要であれば、ガイドラインを守りつつ、各国版の細かいガイドラインを作成します。その際は、本社がしっかりと取り仕切る状況作りがポイントです。例えば次の内容をガイドラインに盛り込むといいでしょう。

  • 炎上や問題が起こった時は報告する
  • アカウントを開設・閉鎖する場合は本社の許可を得る
  • IDパスワードや管理者権限は本社が持つ。※いざという時に対応できる状態にしておく

他には、各国の販社や提携企業が自国のブランドでソーシャルメディアを開設し、アカウントを運用している場合もあります。このケースはあらかじめ契約内容に反映させ、事業から手を引く際に本社へその所有権を移管するルールを設けておきましょう。

グローバルガイドラインは、基本的には各国に適用できる抽象度が高いものを作り、最低限守ってほしい内容を押さえておきます。より細かいルールが必要な時は、グローバル版のガイドラインに準拠した内容で各国版を作成します。

⑤親会社子会社のルールの設け方について

最後の質問は、親会社と子会社で統一した基準やルールをどこまで設けるべきかです。この場合は、まず親会社と子会社がどれだけ異なるのか確認が必要です。資本関係があるのみでカルチャーもブランディングもまったく異なる別会社なら、個別のガイドラインを作ったほうがいいでしょう。

しかし親となる持株会社があり、「○○食品」や「○○運輸」といった名前やアイデンティティーが共通した、世間的にもグループ企業だと見なされている子会社がある場合、全体に適用するガイドラインを作成します。例えば「○○運輸」の炎上が、「○○食品」に波及する事態も考えられるため、統一ルールを作っておくことが重要になるわけです。

先述したグローバルのガイドラインに近い内容ですが、憲法のように抽象度の高いものを作成し、各事業会社の事情に合わせたものを作るというパターンもあります。しっかりとブランド統一しておきたいなら、全社で合致したものを作ります。

しかし、全社で合致させると、各事業会社の自由度がだいぶ下がるため有効なソーシャルメディア活用ができるのかは疑問です。この辺りを考慮しつつ、しっかりしたルールを作るパターンも考えられるでしょう。一般的には「グループ会社と見なされる状況か、資本関係があっても別会社なのか」などの関係性で判断していきます。

8. ソーシャルメディア(SNS)ガイドラインの雛形(テンプレート)について

弊社では雛形(テンプレート)に頼ったガイドライン作成をおすすめしません。その危険性については別記事でまとめております。また、本来は下記3点がガイドラインに組み込まれ、徹底されることが求められます。

  1. ガバナンス体制の構築に必要な部門、役職者の巻き込み
  2. クライシス対応のルール
  3. 社内浸透の仕組み

関連記事:
ソーシャルメディア(SNS)ガイドライン制作における雛形の使用は要注意! 絶対に必要な3条件とは

https://gaiax-socialmedialab.jp/post-120532/

9. まとめ

SNSは、今や企業と個人とをつなげる重要なものとなっています。リスク軽減は企業として大切ですが、炎上を恐れるあまり参入せずにいることは、大きな機会損失に繋がるでしょう。

重要なのは、リスクを正しく認識し、準備しておくことです。きちんと準備して、積極的なSNS活用で企業利益に貢献できる仕組みを作りましょう。

SNSの炎上対策や企業統治の課題は、ガイアックスにお任せください!

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この記事を書いた人:高橋篤

ソフトウェア開発会社、広告業界を経て2013年ガイアックスに入社。2015年よりソーシャルメディアマーケティング部に参画し、以降SNSコンサルティング、ガイドライン関連の業務に従事。仕事はデジタルだが趣味は楽器演奏とアナログ。

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