SNSの企業アカウントはもうオワコンかも知れない。
2018/01/31

- ■目次
- 企業は公式アカウントをつい運用しがち
- 消費者が公式アカウントを敬遠する理由
- 分かっちゃいるけど、止められない公式アカウント
- 変わりゆく消費者
- 人を動かすのは人
- なぜ人は人で動かされるのか
- どのように「公式情報」っぽさを回避するか
- なぜ露骨にやるとまずいのか
- 主体性のある情報発信のパターン
- マーケターの役割は?
- 結局公式アカウントはオワコンなのか?
- まとめ
1. 企業は公式アカウントをつい運用しがち
マーケ担当者の立場を想像すると、公式アカウントって発想になりがちなのもよくわかるんです。 先行事例も豊富、バズコンテンツと違ってコントロールも効きやすい。インフルエンサーはなんか怪しいし、広告は広告じゃんということですね。担当者本人は違うよなぁと思っていても、こういうこと言いがちな役員なり上司なりがいるとついつい忖度してしまう。 でも、公式アカウント運用で実際に狙う効果をヒアリングしてみると、話題作りだったり、ブランド想起向上だったり、売上向上だったりするので、やっぱり他の手法に予算かけた方が効くんじゃないかということも結構多い、というのも変わりません。しかしSNSを使おうという話だけは社内で進んでいくので、何かしらみなの納得する「無難」な答えを出さざるを得ないというジレンマですね。2. 消費者が公式アカウントを敬遠する理由

3. 分かっちゃいるけど、止められない公式アカウント
マーケティングやブランド担当者の考えなくてはいけないことは、「安全」な情報をいかに作るかという話ではなく、「本音」かつポジティブな影響力を持つ情報をいかに作るかということです。 ここが歪められて、ついつい安全を志向してしまいがち。日本経済が輝いていた80~90年代(記号消費の時代)にかけてはたしかにマスメディアの一方通行のよくコントロールされた「安全」な情報でもよくモノを売ってくれました。表層的なイメージさえ整っていれば、ちゃんと憧れてくれたのです。でも、すべて過去の話です。 その時代のままのやり方で、現代でもうまく行くと思っている人も本当は多くありません。パラダイムシフトしなくてはいけないという意識も広く共有されています。でも、その抜本的な変革の旗振りを買って出る人はあまりいない、というところでしょう。 そして足踏みしている間に、コンプラだったり、(過分な妄想も含む)炎上への恐れだったり、前例主義への過剰適応だったりがその上から絡まり、がんじがらめになってしまっていているのが現状です。 そんな中でSNSマーケと言われても、社内で完璧にコントロールできる公式アカウントで発信しましょうとなってしまうのは、いたしかないのかなとも思います(実際にその制約の中でどこまで頑張れるかというマーケのコンサルもうちは結構多いです)。変わっていく状況に適応するための、妥協案です。4. 変わりゆく消費者

5. 人を動かすのは人
ではどうしているかというと、ここで再度「人」が登場するわけです。 さて、冷蔵庫の話に戻ると、あなたにはラッキーなことに家電マニアの知り合いがいました(とします)。相談を持ち掛けると、そんな間取りで、そんな買い物頻度で、家族はその人数ならこれがいいよ、とある冷蔵庫を奨めてくれるわけです。予算内だったら即決だし、多少予算をはみ出ていても、家電マニアくんがその冷蔵庫のチルド室のすごさを熱っぽく語ってくれたら、納得して買ってしまうわけです。 冷蔵庫は大きな買い物ですが、例えば日用品の卵にしたって、いろいろうんちくだったり、栄養価、トレーサビリティだったりで情報満載のパッケージよりも、なんか信頼できそうな農家の人の顔のラベルがペタっと貼ってある商品の方が売れていく。 ここで重要なのはその情報が本当の「本音」「リアル」なのかという真実性の証明よりも、「納得」という感情が重視されることです。究極的には自分自身に冷蔵庫リテラシーを身に着けなれば、いくら家電マニアの言っていることとは言え、その情報が真実かどうかなんて分からない。卵だって、作り手が本当に信頼に足るか、もっと言ってしまえば、そうは表示してあるけど本当に養鶏家の○○さんが作っているのかさえ分からない。 でも、現代社会は自分に必要な情報すべてに自分だけで通じることができるほど単純ではない。だとしたら、なんとなく人を信頼しよう!ということなのです。6. なぜ人は人で動かされるのか

7. どのように「公式情報」っぽさを回避するか
ではどうすればいいか。超当たり前の話ですが、ブランドのファンやその商品ジャンルに詳しい人に、「これはいいよ!」と情報を発信してもらえるようになるように、商品やサービスを徹底的に磨けばいいのです。そして発信してもらうのを待っているのもいいですが、できればそれだけでなく、情報を広めてもらいたい人に、スマートに嫌味なくアプローチしましょう。 アプローチした結果でも、勝手に商品を発見してくれた結果でもいいですが、うまい具合に磨き抜かれた商品・サービスに感動してくれた人は、主体的なインフルエンサー(アンバサダー)となって、積極的に商品を売り込んでくれやすいでしょう(NPS調査が役に立つのもこういう理屈でしょう)。なんなら「#NotSponsored」「#ステマじゃない」なんてハッシュタグまでつけて熱狂的な投稿をしてくれるかも知れません。 そもそも、これはアパレルやコスメ業界なんかでは昔からある手法ですね。芸能人などに商品を送って、気にいってもらえたら、その人からのクチコミだったり、あの人も使っているというブランド向上を狙うというやり方です。さらにその昔は貴族だったり、大名だったりに絵だったり茶器だったりを贈呈して市販品の値を吊り上げるというようなマーケティングも行われていたというので、手法としては古典中の古典とも言えます。 ネット時代になってからは「商品あげるから、気に行ったら投稿してね」と、商品をもらってもらう人を募集する手法も増えています。 ただし、これらはあまりに露骨にやるとちょっとまずいのです。8. なぜ露骨にやるとまずいのか

9. 主体性のある情報発信パターン
逆に言えば、例えお金や現物支給が発生しても、この「やらされている感」のない主体的な情報発信ができるのであれば、現代に通用する効果の高いマーケティングは可能だということになります。 具体的にはどうなのか、大別して整理すると3パターン考えられます。- 中の人パターン
- ファンパターン
- オピニオンリーダーパターン
①中の人パターン
1の「中の人」とは従業員です。広報の人でもいいですし、前述の冷蔵庫の例をふまえると、冷蔵庫の開発者や宣伝担当の人がアカウントを作って消費者と直接コミュニケーションをするというやり方です。 従業員は企業から報酬をもらっている超ステークホルダーですし、中の人活動が成功すればボーナスをもらえるかも知れません。でも、商品の強みだったり、時には弱みなどを率直に語れば、それはやらせなしの「本音」「リアル」として消費者に届くでしょう。そのような情報発信を行うというのは中の人としてはけっこう勇気が要るもの。しかし、その壁を乗り越え消費者の側に歩みよれば、消費者は心動かされます。 公式アカウントではあるものの、コントロールされた公式情報の枠を乗り越え、ひとりの個性を持った人間として、最初から振る舞うというのもありです。書類上の存在である法人の冷たい仮面を脱ぎ捨て、血の通ったひとりの人間が体温の伝わるコミュニケーションをすれば、それは当然共感を呼びます。発信においてはより突き刺さり、受信においても、パネル調査や投書はおろか、グループインタビューで得られるVOCよりもリアルなものが手に入ることも少なくありません。 また、直接商品と関係なくても、中の人の属する企業が訴える価値(ミッション、コアバリュー、フィロソフィーなど)を体現した人物を配置するという手もあります。その場合は特に、CEOや社内の有名人などのアカウントを使うのもいいでしょう。ウェブサイトや会社案内にキレイゴトが文字でちょろちょろっと書いてるだけよりも、普段の発言や行動に節々に、その価値をにじみ出ている方がよっぽど効果が高いということです。②ファンパターン
2のファンパターンは、商品の熱狂的な利用者に語ってもらうというものです。ここで重要なのは、単なるレビュアーではないということでしょう。この商品はこんな優位性があるというような冷静な批評は、そのレビュアーの知り合いには届いても、そのレビュアーのことを知らない人には効果が薄いでしょう。でも、なんだか分からないけど一生懸命愛を表現しているということになればその「熱」が伝播していきます。 ファンパターンの場合はその熱にあてられる人が出てくることを狙っています。もちろん、ファンの一般的な影響力(フォロワー数、フォロワーの質、その他有名性や好感度)は高い方がいいでしょう(仮に影響力がネガティブ、つまりマイナスの場合は褒め殺しのようなネガティブキャンペーンにもなりかねません)。 しかしそこは機能としてはレバレッジで、そもそも熱量が閾値を越えない限り、レバレッジも無意味でしょう(効果=熱量×影響力 ただし 熱量>0)。ファンのフォロワーが少なくても、親密度の高いフォロワー(強いソーシャルグラフのノードである)をたくさん抱えている人なら、温度が保たれたまま、あるいは加熱しながら情報が伝播しやすいということも考えられます(A「このチョコうめー!チョコ嫌いのBも絶対食うべき」→B「Aが言ってたこのチョコ、たしかにチョコうめー!」→C「あのBを感動させたチョコってどんだけうめえのかと思ったら、ほっぺ激おち」) またこの場合、報酬は高すぎないもの、できるだけお金に換算できない価値を持っている場合がいいでしょう。そのブランドの非買の限定品など。これは消費者にやらせという印象を抱かせないというよりも、金額に換算して、商品を広めるという純粋な喜びに水を差さないようにするためです(参考:https://kotobank.jp/word/アンダーマイニング効果-178707)。純粋な喜びが減ると、当然熱量も下がります。オピニオンリーダーパターン
3のオピニオンリーダーは、その商品ジャンルに関して影響力をもった人に協力を仰ぐパターンです。前述の冷蔵庫×家電マニアもその一部ですし、モデル×美容サービス、ライフスタイルが共感を呼んでいる有名人×ファッションアイテム、料理研究家×食品などが考えられます。 あるいは特定のコミュニティに影響力を持っている人もオピニオンリーダーとして定義できるでしょう。しまパトで人気のインスタグラマー×プチプラEC、映画クラスタの有名ツイッタラー×新作映画などの組み合わせが例えば考えられます。 これらの人たちには情報発信してもらう際に気をつけることは、ちゃんと商品を理解してもらうことでしょう。この人たちは優秀なレビュアーなので、熱量は必ずしも必要はないでしょうが、いいところを的確に訴求してもらう必要があります。 もちろん、熱量があればプラスに働くでしょう。しかし、この分野の人たちに訴求して欲しいのは「ベネフィット」であり「シーン」です。ベネフィットは他の商品との「比較」でももちろんOKですし、なぜそれがいいのかの説明やストーリーを語ってもらうというのもありです。 シーンとは何かというと、ファッションだったらその商品を身に着けたり、食品だったら使ってみたりをする提案型のアプローチになります。これも熱量というより、使用の卓越性が重要でしょう。 この主体性を重視したインフルエンサーマーケティングを上手にSNSにも取り込めれば、公式アカウントの価値もそれにつられて上がります。商品に興味をもった人が、そのアカウントをフォローして情報を追ったり、問い合わせてきたりするようになるからです。 オピニオンリーダーには、自らのブランドを使ってもらうわけですから、それなりの報酬は必要でしょう。しかし、そのブランドを切り売りするのではなく、ブランドを毀損しない、なんならむしろプラスに働くと納得してもらって広告塔になってもらうことが必要です。 なので、その表現方法も、思いっきりオピニオンリーダーにまかせてしまうことが重要です。1と2の人々は、表現のクオリティを高めるためにマーケター側からの支援が必要な場合も時にあるでしょう。しかし3のオピニオンリーダーは、そもそも普段から発信を行っている人です。結局、その人が納得する方法でやってもらうことが主体性を保つし、そのオピニオンリーダーとエンゲージしている「普通の人々」も裏切らないということになります。 マーケターの倫理としては、そのオピニオンリーダーの「信用」を燃料に焼き畑農業をやっていくような破壊的な方法ではなく、コミュニティのエコシステム(≒文脈)を保存する、できればその活性化に貢献するようなやり方でマーケティングを行っていくことが求められるでしょう(インフルエンサーと呼ばれる人たちを焼き畑農業モデルでどんどん食っているのが現状です。これは将来的にマーケットに大きな爪痕を残すでしょう)。10. マーケターの役割は?

11. 結局公式アカウントはオワコンなのか?
公式アカウントを結局オワコンなのか? 中の人パターンの説明で答えを言ってしまっていますが、公式情報を発信するための公式アカウントはオワコンだが、人を立たせた情報発信を行う公式アカウントなら全然オワコンじゃないということです。 また、仮に中の人を立たせないとしても、主体的に発信してくれる人たちが拡散する、記事や動画、キャンペーンなどのコンテンツのハブとしての機能する公式アカウントもありです。具体的には例えば、その企業やブランドや商品について発信されたリアルな情報を次々にシェアしたりRTしたりするアカウントということです。人を通じて興味関心を触発され、商品、ブランドや企業とのエンゲージメントが生じた消費者は、公式アカウントの情報をフォローしたり、問い合わせしたりということにもなるでしょう。 つまり、公式アカウントを包含する形で、人の体温のあるコミュニケーションのエコシステムが生まれる。そのエコシステムを作るということにフォーカスした場合、公式アカウントは企業で一つだけ作るよりも、ブランド単位や商品単位で複数立ち上げた方がいいかも知れません。どの程度の粒度でいくつ作るかを企画するところもマーケターの腕に見せどころでしょう。どういうエコシステムを作るかということに密接に関わってくる話だからです。12. まとめ
公式アカウントはそれだけだと役立たずだけど、人という要素を立たせたマーケティングの設計があれば生きてきますという、実は当たり前のお話でした。いずれにせよ、人が持つ「リアル」「本音」がなければ情報発信は効力を持たないし、それらは人の「主体性」に基づかなければ生まれないということなのです。 ちょっと長くなり過ぎたので、このあたりで切り上げますが、次はどこかのタイミングでエコシステムってどうやって作るのさという話を掘り下げてみようと思っていたり、いなかったりします。SNS活用なら、ガイアックスにお任せください!

この記事を書いた人:重枝義樹

マーケター。ソーシャルメディアマーケティング事業部 部長。ガイアックスでは大手企業、官公庁中心にソーシャルメディアマーケティングの支援を行う。ガイアックスでの5年に及ぶ経験をもとに、本気でソーシャルをやりたい人のためにSNS禁止のガチ勉強会も行う。