Pinterestを使わない理由はあるのか? Pinterestおじさんと中の人が語る真の使い方とは

2018/06/20


昨年、グローバルではMAU数が2億人を突破したPinterest。個人利用する人も増えて、認知もかつてより広まっているものの、国内企業の活用にはまだまだ成長の余地があります。


今回、ラボ編集部はPinterestをローンチ当時から使い続けている達人、自称「Pinterestおじさん」とPinterestの「中の人」の話し合いにお邪魔しました。そこで、Pinterestの現状と今後の可能性について熱く語っていただきました。


Interview / ソーシャルメディアラボ編集長 小東真人


    ■目次


  1. Pinterestの移り変わり

  2. 企業はなぜPinterestをやらない?

  3. 実際に流入を獲得している先進企業

  4. 最後に


1. Pinterestの移り変わり


世界観を作り込むツールから、好きなものを発見し行動するツールへ


小東:それではフリートークにお邪魔している感じでよろしくお願いします。


PinterestおじさんJ氏(以下J氏):いきなり投げやりな感じは、やっぱり元編集長の大久保君がダブルブッキングで来られなくなったから?


Pinterestの中の人O氏(以下O氏):編集長の任が終わるとこれだもんなぁw


小東:いやその……僕に経験を積ませるためかと……


J氏:いきなりこの現場かい、大変だねぇ。では、始めましょうかね。僕はPinterestの仕様や使われ方が最近変わってきているように感じる。



これは僕のボードなんだけど、以前はこういうふうにカテゴリーを分割してそれぞれ世界観を作って、それをユーザーが観て楽しむという使い方。ここが、特に変わってきていると思う。



たとえば、今表示されているこの画像。僕、まさしく同じブランド着ていたりするわけ。このとおりの服を持っている。それで次のコーディネイトをする際に何が自分のクローゼットに足りないのか、新しい選択肢をPinterestで探していると。それで今Pinterestでは、これを何て表現しているんでしたっけ?


O氏:「ディスカバリーエンジン」や「ディスカバリーツール」と言ってもらっていますね。


僕らのミッションが「Help you discover and do what you love」なので、皆さんが好きなものを発見して、そこから実行に移す。この「実行に移す」というのが多くの場合、「購買」にあたります。米国だと購入までできる環境が整っているので、そういう人たちが特に増えていますね。


J氏:たとえば、米国だとウェディングの時にパーティをどういうふうに飾りたいとかとか、ドレスは何を着ようとか、よく調べられているよね。2011年、僕が一生懸命Pinterest使っていた頃、ウェディングドレスのリピンの数が半端なかったよ。


ソーシャルネットワークではなくなった



O氏:Pinterestが始まった2010年当時は、ソーシャルネットワークのひとつだったんです。


なので、フォロワーがたくさんいる人のほうが自分のピンしたものが表示されやすかった。また、ピンをすると相手に通知が行くのですが「わたしもこういう写真好きよ」とか「このファッション、俺も好きです」とか「お、気に入ってもらえたんだ」といったことが伝わったんですね。今は無いですが、昔はいいね機能もあったんです。


J氏:そうそう、突然なくなったよね。昔あったのに。


小東:なくしたのは大体いつごろなんですか?


O氏:2017年の春頃ですかね。最近ですよ。いくつかある背景、理由のひとつは「ソーシャルネットワークじゃない」っていうこと。そうじゃない使われ方のほうがすごく多かったからなんです。


冒頭にありましたが、自分のアイデア集めのために使われているんですね。「こういうニットが欲しいから」とか「どのブランドが良いだろうか」とか、考えるために使われてきているんです。


結局、どちらかというと何が「いいね」なのかをもうちょっと掘り下げていくようなツールだったりするんですよね。センスで「あ、いいじゃん」って共感したり、賛同したりする。Pinterestが学習していくのは「この人がなんでこれに反応したんですか?」っていうその人自身の興味関心なんですよ。



だから、同じコンテンツをシェアしているのに、基本的にはPinterestは伝わる人が全然違う。これはフォロワーとか関係ない。コンテンツごとに、ピン単独にアルゴリズムが効いていて、その人に合ったアイテムが表示される。なので、たとえば同じカーゴパンツみても、私とおじさんじゃ、シャツが表示されたりジャケットが表示されたり、異なってくるんですね。


J氏:実際にフォロワーぜんぜん関係なくなったよね。前はトップページにフォロワー数が表示されてたけど、今はMonthly viewersになって「86k」とかになっている。つまり8万6千ビューってこと。僕は3.7万フォロワーいるんですよ。なのに、これしか見てない。


O氏:そうなんです、もはやフォロワー数の影響度は低いんです。僕は大体600フォロワーですけど、ビュー数は6万超えてますからね。


J氏:つまり、レコメンドされる画像が流れてくることの方が圧倒的なわけですね。


O氏:そうなんです、ですからフォロワーが10人とかでも見てもらうことはできる。他のソーシャルメディアはある程度のフォロワーが必要ですけど、Pinterestはそのハードルが低いから始めやすいんです。


2. 企業はなぜPinterestをやらない?


ブルーオーシャンなのに、企業はユーザー数を気にする


J氏:それで、ここからが本題なんだけど、Pinterestには日本語のコンテンツが少なくってレコメンドされて来ない。レコメンドされるのはほとんどが海外のコンテンツなわけ。


これ国内企業にとってチャンスじゃない?ライバルが少ないのにアップしてないと損。だって、アップすれば比較的高い確率でレコメンドしてもらえるんだよ、日本語設定している国内ユーザーに対して。


O氏:そうなんです。今、ユーザー向けには色々イベントをやっていて、どんどん盛り上がっているのを間近で見ていて。Pinterestのユーザーさんのインプット欲はますます高まっています。今度はコンテンツをアウトプットする企業側、うちではアップしてくれる側を「クリエイター」と呼ぶんですが、彼らにぜひ取り組んで欲しいんです。


J氏:ところが日本の企業っていうのは必ずこう言うんですよ。「Pinterest、ユーザー数ってなんぼ?」って。やはりLINEの国内MAUが7,300万人とか、Facebookが2,800万人、Twitterが4,500万人……その延長で「なんぼなんです?」って考えてしまう。


他の記事でも言っているんですけど、個人のアカウントでさえフォロワーが関係ないんです。重要なのはエンゲージメント率。


それで言うとユーザー数もあまり関係ないんですよ。たとえば日本の人口1億2,000万が全員ユーザーだったとして、それがそのまま1億2,000万人くるのかって言ったらそんなことはない。


そのうち、何十万人かに来てもらえれば万々歳でしょう。各種メディアからどのくらいの流入を見込むのかを逆算する発想も必要。Pinterestにはそんな可能性があるわけですよ、今後。だって日本語のコンテンツが少ないんだから。


小東:実際に、PinterestはソーシャルメディアのなかではFacebookに次いでトラフィックを生むというデータもありますしね。


Pinterestをやらない理由が的外れになっている


J氏:だから、そこのチャンスを取らないで「ユーザー数はどのくらいいるんですか?」って聞くのはもう思考停止。改めて、ソーシャルメディアの活用を理解した方がいい。


たとえばFacebookのニュースフィードにエッジランクがあるよね。今の企業投稿のエンゲージメント率はどんどん下降傾向にあると言われている。でもFacebook広告は左右されない。だから、企業は広告出稿すれば良いんですよ、ターゲティングの精度も高いし、しっかりコンバージョンも取れる。


Twitterならフォロワーにはダイレクトに投稿が届きやすい。ただし基本的にTwitterに買い物しに来ている人はいないから、オーガニックでコンバージョンさせるのは難しい。広告出せば良いのはFacebookに同じ。だからこそ、ブランディングとか認知を拡大するのには向いているわけだよね。


ソーシャルメディアにはそれぞれハックがある。「Pinterestは何なのか」っていったら、将来的に自分が欲しいものとか関心があるもののイメージを閲覧したり、検索したり、最終的には購買するきっかけになったりする。それがオーガニックで出来るのが非常に魅力的なわけ。


アップするだけで効果がでるのに国内企業がアップしていない



O氏:全ての商品の閲覧性がよくて、コレクション機能を持たせて、消費を喚起させるような新しいサイトを1から作れって言われても、すぐに「うん」とは言えないと思う。でも、その代わりにPinterestをまずは活用してほしいですよね。


小東:確かに、外部の閲覧機能として役立ちますね。


J氏:そう。だから、たとえばインテリアメーカーだったら色や季節、素材ごとに分けてボードを作ってみるとか。色々、試せる。閲覧性の良さを外部にアウトソーシングする感じで使えばいい。



実際に、先日もPinterestで服を買ったんです。それも日本のメーカーじゃない米国のやつ。米国ではPinterestでコンバージョンするのはもはや当たり前なんですよ。こういう画像(上図)見たことあるでしょう。


これを見て、僕がどうやって買い物したかというと。この全身コーディネイトの画像から、ズームイン機能で単体で商品を選んでいくわけ。でも米国の商品だから、リンク先で名前を見つけて、それをヤフオクで検索して新品を見つけて買ったんだよ。


ここに日本のお店が自社ECへ誘導できる単品画像をアップしていたらどうなる?他国でアップされたコーディネートを単品で絞り込んだときに自社の商品がレコメンドされるわけ。


Pinterestを活用している企業もあるけど、ほとんどがトータルコーディネイトだけをアップしている。それだと絞り込まれたときにレコメンドされない。だからボードには単品の画像を必ず置いとかないとだめ。これハックね。



小東:おお。ユーザーが画像を調べやすいように、色々なフォーマットを用意しておくんですね。


J氏:ここまで細かくしておいたら「これを買おう」ってなるじゃん?Pinterestで売りたいんだったらここまですべき。だから全体画像と単品画像を入れる。いつも「米国ではなんでこういうふうに分けて投稿する人がいるのかな」って思ったけど、こういうわけだったんです。


小東:この置き方に、そんな理由が隠されていたなんて……。


J氏:そうでしょう?でも日本企業はPinterestから流入がくるって知らないから、そこまで手を入れようと思わない。やはりソーシャルメディアってフォロワー施策をどうするかと考えてしまう。


でも、商品を紹介できるページ代わりになって、ユーザーに検索やレコメンドでイメージを持ってもらえて、ECサイトへの流入も見込めて、コンバージョンまでさせられるマーケティングツールがあるって言われたら、やらない人はいないでしょ?それこそ、Pinterestなのに。


3. 実際に流入を獲得している先進企業


RoomClipから見えてくるPinterestのパワー


O氏:では、Pinterestから流入させている国内事例について、RoomClipさんを見ていきましょう。Similar Webで見ると、月間約200万アクセス。このうち96%が日本から来ています。


(※Similar Webはこちらから登録すれば無料版を利用できます。)



▲Similar Webで確認したRoomClipの2018年3~5月のアクセス数




それでソーシャルからの流入は、断トツでPinterestなんです。



小東:おお!ソーシャル流入の約8割がPinterest経由ですね。



J氏:どういうふうに計算すればいいかだけど、ソーシャル流入全体はオーガニック検索の流入の大体9分の1だよね?だけど、ソーシャルのうち8割がPinterest。ざっくり計算すると、検索エンジンを含めた検索流入の10分の1ぐらいをPinterestだけでカバー。これは意外だなぁ。


O氏:実は、こういう企業さんが結構色んなジャンルにいるんですよ。


J氏:こういう事実を知ると「他のメディアはなんでPinterestボタン置かないの?」とか「Pinterestに画像をどんどんアップしていかないのか?」という話になるね。


アルゴリズムはコンテンツ数、頻度、質(関連性)か


J氏:ちなみに、毎日投稿している方がホームフィードに表示される確率高くなったりしない?


O氏:毎日っていうのが正しいか分からないですが、Pinterest上でアクティブなアカウントはアルゴリズム上、強くなりますね。つまりアップする「コンテンツ数」が多い方が評価されるんですよ。もちろん質がいい前提で。


J氏:じゃあ、画像いっぱいアップしたほうがいいってこと?


O氏:はい。いっぱいアップしたほうがいいですね。


J氏:それでいうと、僕が気になるのは「頻度」だよね。


O氏:量も頻度も両方重要になってくるかもしれないです。ひとつひとつのピンのリアルタイム性はあまりこだわらない。コンテンツの鮮度って、あまりアルゴリズムとして重視していないです。


むしろ、ユーザーのリアルタイムの興味関心を気にするんですよ。アップロードがアクティブで、投稿数が多いアカウントはやはり表示される確率は高まります。


J氏:RoomClipの例もあったけど、Pinterestのアルゴリズムはコンテンツ数と頻度ってわけね。


O氏:そこにもちろん、その人にとっていいものか、ユーザーにとっていいものかっていう(関連性の)「質」が関わってきますね。質も大事ですよ。



J氏:企業がもし画像をたくさん持っているんだったら、やはり数をアップするという。これがPinterestをハックする上では重要。


そうするとレコメンドされやすくなるので、自社のウェブサイトへの流入が多くなる。なぜなら、それらの画像をクリックするとウェブサイトの画像の当該ページに飛ぶから。それがEコマースだったら直接コンバージョンしちゃうってのが米国で起こっていることなんですね。


閲覧してもらう手段がいっぱいあるPinterest


J氏:ECでコンバージョンさせるって話になると気になるのはInstagram。最近はショッピング機能とか出たけど。


小東:はい。Instagramでは先日ショッピング機能が発表されましたね。Pinterestでは購買を促すような機能は他にありますか?


O氏:4月に発表した「アイテムタグ」という機能があります。


アイテムタグのついたピンに表示される、白いドットをタップすれば気に入ったアイテムを簡単に特定できるんですよ。



https://www.pinterest.jp/pin/490822059384128589/


たとえば、このフライングタイガーさんのピン。こちらでは、パーティの世界観を掴んでもらって、そこから気になるものがあれば各商品のリンクに飛ぶことも可能なんです。


小東:こんな機能があったんですね!知らなかったです……!


J氏:これは自社商品を固定でレコメンドさせて、詳細を見てもらえるのが良いね。


一方でさっきも言ったけど、Pinterestのアルゴリズムに乗っかって、アイテム単品をあげまくって他社のコーディネイト画像のズームイン検索結果に、自社商品を滑り込ませる攻め方もあるよね。


それだったらアイテムタグをひとつひとつ設定しなくても、ユーザーに見てもらえる。


もしかしたら全体像なんかアップしないで、このレコメンドされるためにだけ、この単品ばかりアップしている会社だってあるかもしれないよ?米国は相当Pinterestでコンバージョンしている国だから、こういうふうなハックの仕方をしている可能性は非常に高いな、と。


それだけに、日本企業がここに日本語の単品商品のリンクをアップしないのは本当もったいない。


小東:確かに他社商品の画像からのレコメンドも、自社商品のコンバージョンに繋がりますものね。Instagramに購入の導線ができたとはいえ、この使い方はPinterestにしかできませんね。


J氏:そう。となると、Pinterestに画像を大量に上げるAPIが公開されているかが聞きたいね。


O氏:はい。いくつか利用条件はありますがAPIは公開しているので、是非活用して欲しいです!


自社サイトに登録されている商品をPinterestにアップロードすることや、サイト上にあげたら自動でPinterestに反映させることもできます。


また、自社開発だって可能ですよ。たとえば、スタートトゥデイさんのアプリ「WEAR」では、Pinterestのアカウントと紐づけしておくと、WEAR上で作ったフォルダにアイテムを保存していく度に、Pinterest上で自動的にボードとピンにできます。


4. 最後に


J氏:ソーシャルメディアの活用において重要なのは勢いが増してきたところに乗るってこと。Pinterestは日本に来てから数年経つけど、これからが本番だと思っている。「昇りのエスカレーターに乗る」ってのはとても重要で、さらに歩いて昇れば他社に先んじることができます。でも危険だから実社会ではやらないでねw


小東:勉強になります、勢いがあるメディアの活用ですね。


J氏:これも繰り返しだけど、基本的にPinterestはフォロワーいらないんですよ。


僕たちはマーケターだから、何をハックすべきか考えなきゃいけない。メディア側は「こういうアルゴリズムになっています」なんて、絶対言わないからね。以前どこかの「Twitterおじさん」だって、そう言っていたよね?


O氏:あれも「Jさん」だったw


最近は多くのクリエイターの方にPinterestを活用して頂いております。また、Pinterestミートアップみたいなイベントも活発に行われるようになりました。様々な機能をリリースしていきますので、Pinterestに注目してもらいたいです。


小東:よく分かりました。Jさん、Oさん、本日はありがとうございました!


 


この記事を書いた人:小東真人

ソーシャルメディアラボ編集長。地方や中小ビジネス向けセミナーなどを担当。
17年ガイアックス入社のデジタルネイティブ世代。靴磨きが大好きで、休日はInstagramで関連アカウントばかり見ている。

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