データからわかる、YouTuberプロモーションの変化とポイントとは

2018/09/11



技術の進化により、時間場所問わず、スマホやタブレットで動画を楽しめるようになりました。人々の生活にますます動画が浸透した結果、企業のメッセージを動画で消費者に届ける動画マーケティングが多くの企業で積極的に採用されています。


今回は、ソーシャル動画分析サービス「kamui tracker」を手がける株式会社エビリーに、YouTuberを活用したプロモーションのポイントについてお話をお伺いしてきました。


Interview / ソーシャルメディアラボ編集部 大久保亮佑(@03rysk)

Text & Photo / ソーシャルメディアラボ編集部 大木一真(@whiskyjunky)


    ■目次


  1. データを元にしたYouTuberの選定に振り返り。kamui trackerの活用法

  2. YouTubeデータを蓄積してきた中で見えた、業界の変化とは

  3. 効果的なYouTuberタイアップのポイントとは

  4. タイアップ案件でなく、YouTuberから自発的に動画で取り上げてもらうには

  5. 株式会社エビリーの今後の展望


1. データを元にしたYouTuberの選定に振り返り。kamui trackerの活用法



株式会社エビリー 大谷洋平氏


大久保:まず御社のサービスについて、簡単にお伺いさせてください。


大谷洋平 氏(以下、敬称略):弊社全体としては、インターネットの動画マーケティングを軸にしたBtoBサービスを2つ運営しております。kamui tracker(カムイトラッカー)millvi(ミルビィ)です。kamui trackerはソーシャル動画の分析サービスという立ち位置です。YouTubeを主軸とした動画の視聴データや、インフルエンサーの「ポテンシャルデータ」を日々最新データにアップデートして、データベース化しています。


大久保:kamui trackerでデータを貯め始めた、その背景を教えてください。


大谷:国内でYouTubeが話題になり、YouTube上で動画コンテンツを投稿する企業が増え始めたことで、このプラットフォーム上での動画マーケティングを支えるツールが必要になるだろうと予測し、kamui trackerの開発を進めました。


大久保:kamui trackerはどのように活用するのでしょうか?


大谷:主にクリエイター選定、及びプロモーション後の振り返りに活用いただいております。5分程度で振り返りレポートも作成できます。YouTubeは基本的に総数値でしか数字を見ることができません。一方kamui trackerであれば、例えば、10人のYouTuberを起用したとして、各クリエイターが動画を投稿して1か月経ったときに、それぞれの数字がどのように上がったか確認することができます。


あとは競合のチャンネルの情報の活用です。どれぐらいの頻度で動画を上げているか、どういう動画が一番見られているか。自力で調べるのは結構大変なので、われわれのツールを使っていただくのが一番早いと思います。


2. YouTubeデータを蓄積してきた中で見えた、業界の変化とは



株式会社エビリー 原田大希氏


大久保:データを貯めはじめて2年間での、YouTuber起用のプロモーションの変化があれば教えてください。


原田大希 氏(以下、敬称略):元々、YouTubeプロモーションは、ゲーム系企業のプロモーションがほとんどでした。最近ですと、同じようなアプリ系でも非ゲームのサービスのプロモーションが増えてきています。ECやアフィリエイト系、マッチングアプリや動画配信サービスなどですね。


原田:他の変化としては、YouTuberがタレントと同様に新商品の発表会など、リアルでのイベントに参加する機会が増えてきました。YouTubeだけではなく、テレビCMや雑誌、街中の看板などで見かけることも増えたように思います。


大久保:タイアップが伸びている業界はありますか?


原田:美容系のタイアップ動画の数も伸びています。そうしたタイアップを請け負うクリエイターの数も伸びています。いまだにタイアップ動画はゲーム系が圧倒的に多いのですが、伸び率でいうと美容系は勢いがあります。





大久保:広告主の変化は何かありましたか。


和田洋祐 氏(以下、敬称略):大前提として、YouTuberを起用したプロモーションは今後ますます増えていきます。そうすると、企業は今後伸びていくYouTuberさんをどのように見つけてくるかが一つの課題になります。なので動画の一つひとつ、中身をチェックされて、きちんとYouTuberを選定されている企業はかなり増えているかなと。


今までは代理店様が、YouTuberと企業の間に入り、やりとりする形を取っていましたが、広告主様が直接YouTuberを選定される傾向にあり、独自にデータや数値を見て判断されるケースが増えてきているという実感はあります。


3. 効果的なYouTuberタイアップのポイントとは



株式会社エビリー 和田洋祐氏


大久保:自社の商品とYouTuberの相性は重要な点になるのでしょうか。


大谷:定性面の部分で、このYouTuberはどういった動画で自分の世界観を表現している方か動画内に登場している方なのかそれらが商品とマッチしているかは都度判断しています。あとは動画の企画力ですね。


大久保:定量的な面ではどのような指標を見ているのでしょうか?


原田:過去にプロモーションを実施した企業案件の平均視聴回数が多いですね。動画内や説明欄のリンク(短縮URL)からのクリック率やクリック数も重要です。そうした過去の実績の数字を掛け合わせて、プロモーションのインストール数を推定しています。


大久保:動画の企画のポイントはありますでしょうか?


大谷:どのような案件でも、重要なのはクリエイターさんの意向はなるべくくみ取ることです。プロモーションの狙いや動画のテーマ軸、NG表現等だけ伝えて、あとはクリエイターさんの世界観の中で動画を作ってもらっています。企画内容に細かいところまで指示してしまうと、クリエイターさんの世界観が崩れ、結果的に視聴回数が大きく下回る傾向があります。


大久保:その他気をつけておいた方がよいポイントはありますか?


原田:細かいところではありますが、YouTuberのスケジュールです。動画投稿までの準備期間が短ければ、YouTuberも、それなりの企画しかできません。


また、他の企業から声がかかるような年末、月末、金曜日のタイアップ企画は注意が必要です。そのあたりは人気のある期間なので、あえて避けたりする場合もあります。タイアップ動画の投稿が連続してしまうと、低評価がつく原因にもなりますし、CVも低くなる傾向があります。そういうスケジュール調整は、特に大きいクリエイターとかになってくると大事になってきます。


4. タイアップ案件でなく、YouTuberから自発的に動画で取り上げてもらうには


大久保:タイアップ案件ではなく、自発的にYouTuberが取り上げる商品と、取り上げない商品、この違いはどこにあるのでしょうか。


原田:前提としてYouTuberは自分のチャンネル登録者数や視聴回数を伸ばしたいと考えています。人気のゲームを投稿すれば伸びるのではないか、新作のゲームを誰よりも早く投稿すれば伸びるのではないか、そうしたことを考えた上で企画し、動画を制作しています。


例えばゲーム動画ですと、ゲームの中でオリジナルの企画が立てられる、自由度が高い、みんなで遊べる、そうしたゲームが取り上げられやすい傾向にあります。Minecraft(マインクラフト)はその王道です。ゲーム内で建築する人がいれば、サバイバルをする人、みんなでだべる人もいます。2~3年前はMinecraftの動画だけ上げていれば伸びるとまで言われていたんです。




大谷:
最近の例だと荒野行動です。「最後まで生き残る」が基本ルールなのですが、殺し合わずにフィールド上で写真を撮ったり、車でレースをしたり、自分たちでいろんなルールを作って楽しんでいるクリエイターさんが増えています。そうした遊びの幅がある、自由度の高いゲームはクリエイターさんに取り上げられやすいと思います。


大久保:ゲーム以外の商材ではどのような特徴がありますか。


原田:最近ですと、ショートケーキ味の焼きそばなど、変わった味の食品がよく発売されていますよね。こういった面白い商品、いわゆる「動画映え」する商品はよくYouTuberに取り上げられていました。こうした商材が人気YouTuberに取り上げられると、今度は他のYouTuberが、その動画の関連動画枠に載りたいと考えるので、人気YouTuberと同じ商材を扱った動画を撮影し、似たタイトルをつけた動画を投稿しはじめます。こうしてその商材の話題が拡散していきます。ですので、商材的にはまず人気YouTuberに取り上げてもらうことが、ポイントになると思います。


5. 株式会社エビリーの今後の展望


大久保:最後に今後の展望について教えてください。


和田:今まではkamui tracker1本だったのですが、そこに付随するYouTuberのキャスティングやYouTube広告にも力を入れていきます。代理店側の立ち位置というよりはお客様サイドでのサポートをしていきます。提案したクリエイターの動画が、数値として伸びているのか、コストパフォーマンス的にはどうなのか、チャンネル登録がどこまで伸びているか。客観的に、数値的にレポートで振り返るお手伝いも強化していきたいですね。


また、「かむなび」というYouTuberやマーケター向けのYouTube総合情報メディアをスタートしました。

クリエイターやチャンネル運営を経験した人の知見を取り入れた記事や、YouTuberの方の寄稿も企画しています。


大谷:YouTubeに関するkamui trackerのデータを使ったコンテンツや実際の広告主サイドの事業の成功事例も紹介していきます。我々の強みを活かした、広告主様や代理店様だけでなく、クリエイターさんにも参考にしていただけるようなコンテンツを作っていますので、ぜひ弊社のメディアを活用していただければと思います。


この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部

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