炎上はSNSアカウントを持たなくても起こるし、そもそも予防不可能。そして発生してからが本番
2019/07/25

- ■目次
- SNSのアカウントがないことは炎上リスクを大きくする?
- そもそも炎上を避けることが原理的に不可能になりつつある
- そもそも炎上を怖がらなくてよい理由
- 最も恐いのは、炎上への恐怖そのもの
- 価値観が共有されていた時代こそ例外だった
- ガイアックス 重枝義樹の過去記事
1. SNSのアカウントがないことは炎上リスクを大きくする?

2. そもそも炎上を避けることが原理的に不可能になりつつある
では、どのように炎上を避けたらよいのでしょうか? まず企業の不祥事ですが、これはソーシャルメディア上の問題ではなく、全社的な問題です。不正や社員の不品行を完璧に防ぐことなどできるでしょうか? イエスと胸を張って答えられる企業は少ないでしょう。百歩譲って不正に関しては完璧なコンプライアンス体制を敷けば防げるとして、社員の品行まではとても管理はできないでしょう。 ではSNSアカウントに限らず、メディアでの失言は防げるでしょうか? たとえば、批判や揶揄、パロディ、ジェンダーなど、明らかに炎上しやすいテーマを避けることは可能です。「男らしさ」や「女らしさ」の強制も、炎上している企業は過去に複数ありましたが、啓発やガイドラインの作成などの対応次第で多くは防止できるでしょう。 しかし、たとえば粉ミルクについて発言すると完全母乳主義の人たちから、毛皮製品の写った画像を投稿すると動物愛護主義の人々から、批判を受けるリスクがあります。マグロやウナギが美味しいとツイートすれば、海洋資源の保護の観点から非難されることだってあり得るのです。 普段からすべてに配慮できる企業はだんだんと少なくなっていくでしょう。炎上したとしても謝ったり、改めなきゃいけないのかも不明です。 よく炎上を避けるために、政治や宗教の話題は避けましょうというアドバイスするコンサルタントがいると聞きます。私はその話を聞くたびに、そんな誰でもできるようなアドバイスにとどまるコンサルだったら辞めてしまえと思ってしまいます。
“We are a brand with a proud history of championing diversity and inclusion. At Old Navy, everyone is welcome,(訳:我々はこれまで多様性を支持してきた誇らしい歴史のあるブランドです。OLD NAVYでは、どんなひとでも迎え入れられます。)” http://www.today.com/style/old-navy-ad-interracial-family-prompts-social-media-outrage-support-t90226と反論し、さらに該当ツイートのモデルを担当したプロサーファーのClay Pollioni氏も、
“I’m extremely proud to have taken part in a campaign that not only celebrates our nation’s diversity, but also unites families with multicultural backgrounds and promotes love of all kinds! ,(訳:自国の多様性をただ祝福するだけでなく、多文化的な背景を持った家族を一つにし、あらゆる愛情をプロモートするキャンペーンに参加できたことを本当に誇りに思う)“ https://www.instagram.com/p/BE6jUkbN3K2/と、とても率直に、前向きな発言をしました。 そしてその反論や発言に込められたスタンスに共感を覚えた多くの異人種家族が「#LoveWins」というハッシュタグとともに自身の家族の写真をSNSにアップロードし始めたのです。 その結果、今回の事案と同ブランドのスタンスやストーリーが様々なメディアに取り上げられることになり、同社に対する共感とともに世界中に拡散されるに至りました。批判的な声に屈せず、一貫したメッセージを伝え続ける企業は、共感され信頼されます。 あえて政治的なスタンスを強調することがマーケティングにとって有効なことは珍しくないのです。 日本でもあえて政治的な投稿を行っている企業があります。2019年参院選当日の7月21日に日曜日にも関わらず、従業員に投票へ行ってもらうため全直営店を休業することにしたパタゴニア。地球環境問題解決のための投票を投稿でも訴えています。
炎上するから政治的な投稿は避けましょうというようなアドバイスはパタゴニアのような勇気ある企業には不要です。 仮に炎上が起こっても、彼らにとっては追い風にしかならないでしょう。実際には炎上どころか、多くの共感が集まり、パブリシティの効果も、ブランド価値の向上も達成していると言えます。#私たちの地球のために投票しよう 気候変動の影響は、既に日本を含む世界の様々な地域・分野で現れています。今後、温暖化の程度が増大すると、深刻で広範囲にわたる不可逆的な影響が生じる可能性が高まるといわれています。#地球に投票するということの意味 #パタゴニア #voteourplanet pic.twitter.com/YYD6RTapCV
— パタゴニア (@PatagoniaJP) July 10, 2019
3.そもそも炎上を怖がらなくてよい理由
それでも自社が炎上すると、四面楚歌で社会全体から批判されている感覚になるものです。しかしながら、複数のデータから「炎上に実際に参加している人は、全体のごく一部である」ということがわかっています。 例1:メーガン妃に対するヘイト・ツイート 参考:https://www.newsweekjapan.jp/stories/woman/2019/03/720.php ヘイト・ツイート約5,200のうち7割ほどが、20のアカウントによるものだった事例。 例2:日本国内の炎上に関する調査結果 参考:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/48934 過去一年間に炎上に参加した人々は、ネット人口のわずか0.5%という調査も。 英語ではトロール、日本では炎上仕掛け人と呼ばれるような彼らは、実はマイノリティなのです。もちろん、「炎上は所詮ごく少数が騒いでいるに過ぎないから、気にしなくてOK」とは言えません。見極めるべきは、炎上している理由が「サイレントマジョリティも共感できるものなのか」です。 炎上仕掛人は正義感で炎上を起こしている場合もありますが、その正義感は時に先鋭的過ぎてひとりよがりの場合もあります。また、中には炎上のネタは何でもよくて、ターゲットをやり込め自らの力を示すことさえできればいいという、炎上が自己目的化していると見られるようなタイプもいます。 先鋭化し過ぎた正義感や、自己目的化した炎上は、炎上が目的ではないサイレントマジョリティにとっては当然共感可能なものではありません。共感できるかどうかは、炎上の「ネタ」の部分にかかっているのです。
4. 最も恐いのは、炎上への恐怖そのもの

5. 価値観が共有されていた時代こそ例外だった

6. ガイアックス 重枝義樹の過去記事
・自粛? 通常運転? 自然災害発生時のSNSアカウントはどう振る舞うべきなのか ・ビジネスチャンスは今。進行するダークソーシャル化と対応の仕方 ・5分でわかるソーシャルメディアマーケティング ・重枝のコラムが毎週読める限定Facebookページのご案内この記事を書いた人:重枝義樹

マーケター。ソーシャルメディアマーケティング事業部 部長。ガイアックスでは大手企業、官公庁中心にソーシャルメディアマーケティングの支援を行う。ガイアックスでの5年に及ぶ経験をもとに、本気でソーシャルをやりたい人のためにSNS禁止のガチ勉強会も行う。