担当者必見! Instagram発見タブのアルゴリズムの中身をエンジニアが徹底解説

2020/01/14


現在、国内SNSのなかで成長が最も著しいInstagramですが、エンジニアリングの視点からInstagram特有のアルゴリズムを理解している方は少ないかもしれません。


先々月、Instagramの公式開発者向けブログでは、「発見タブ(Exploreタブ、とも言います)」におすすめ表示される投稿のアルゴリズムに関する記事「Powered by AI: Instagram’s Explore recommender system(AIに支えられる:Instagramの発見タブシステム)」が公開されました。


発見タブの概要については別記事で以前紹介しましたが、今回は現役Webエンジニアの編集部員が公式情報をもとに、発見タブの詳細とInstagramを運用する上で押さえておくべき重要な点について、改めて掘り下げていきます。


    ■目次


  1. Instagramにおける発見タブの役割

  2. 発見タブのアルゴリズムの解説

  3. まとめ


Instagramにおける発見タブの役割


Instagramユーザーが投稿を閲覧する手段は、大きく分けると以下の3つになります。



  • 通常フィード(フォローしているアカウントの投稿)

  • ハッシュタグ検索

  • 発見タブ(Instagramが推薦してくれた投稿)


ひとつひとつの違いをみて行きましょう。



まず通常フィードとは、Instagramアプリを立ち上げると最初に表示される画面で、自分がフォローしているアカウントの投稿が表示されるメインページを指します。家族や友人、好きなアイドルや芸能人など自分と関わりが比較的深く、既に知っている人やモノ、ブランドのアカウントの投稿を表示する機能とも言い換えられます。


次にハッシュタグ検索とは、虫眼鏡アイコンをタップすると出てくる検索窓に、任意のハッシュタグ(たとえば「#焼肉」「#サッカー」など)を入力して検索すると、そのハッシュタグが付いている投稿が表示される機能です。これは言い換えると、ユーザーのなかで「明確に探したいものが決まっている」場合に活用する機能とも言えます。


最後に本記事のトピックである発見タブとは、ハッシュタグ検索と同様、虫眼鏡のアイコンをタップすると表示される画面で、Instagramの独自のアルゴリズムで推薦された投稿が表示されます。つまり、まだ認知していない(フォローしていない)かつ明確に検索するほどでもないが、興味を持つ可能性が高い情報を発見するための機能と言えます。



ちなみに、こちらは私の発見タブ画面です。ぶっちゃけると、Instagramでは美女の写真をよく閲覧しているため、コスプレイヤーやアイドルと思われる素敵な女性が中心に表示されています。このように発見タブでは個人の興味関心を汲み取って、しっかりレコメンドしてくれます。


発見タブについてもう少し深ぼってみます。発見タブは活用するユーザーが年々増えており、公式ブログの情報によるとおよそ50%以上のユーザーが月に1回以上は使うそうです。

こうした特徴から、たとえユーザーから指名検索があまり行われていない企業や有名タレントやインフルエンサーなどを起用できない予算規模の企業でも、ユーザーの興味関心ごとにもとづいた投稿が表示される発見タブ経由で投稿が表示されることで、より多くの感度の高いユーザーの認知を獲得できる可能性があると言えます。


ここからは、冒頭でお伝えしたInstagramの発見タブの推薦アルゴリズムに関する公式記事をもとに、発見タブに投稿が表示される仕組みを解説していきます。


発見タブのアルゴリズムの解説


発見タブの内部構造を理解する上で、重要なポイントは以下の3つです。



  • アカウント同士の類似度の計算方法

  • 実際に表示される投稿候補を絞り込む工程

  • 意外性のある発見がなされる工夫


それではひとつずつ解説していきます。


2-1:アカウント同士の類似度の計算方法


まずここが1番重要なのですが、発見タブで表示される投稿は、ユーザーが過去にエンゲージメントした投稿と内容が似ているものを表示しているわけではなく、過去の閲覧履歴などをもとに興味関心が近い「アカウント」を特定し、そのアカウントの投稿を表示しています。


発見タブでは、投稿ではなくアカウントの類似点が見られているのです。



たとえば、ラボ子さんがInstagramを開いてから閉じるまでの間、アカウントA,B,Cさんの投稿にエンゲージメントしたとします。そうするとこのアカウントA,B,Cさんは、Instagram全体の無数のアカウントの中において「ラボ子さんが興味を持つような、近しい傾向の投稿を行っている」という観点から、類似したアカウントである可能性が高いと判断します。


Instagramでは、このような情報を内部で無数に保持しており、また独自開発した検索エンジンにより、数百・数千万のアカウントについて、アカウント同士の類似度を裏側ですぐに計算できるような工夫をしています。そして、このアカウント同士の類似度を用いて、アカウントごとにInstagram(発見タブ)を開いて閉じるまでにユーザーがやり取りする可能性のあるアカウントの予測等を行います。


2-2:実際に表示される投稿候補を絞り込む工程


次に、実際に表示される投稿がどのように選定されているのかを解説します。いくらInstagramが素晴らしい計算システムを保持していたとしても、発見タブを表示するたびに、数百/数千人のアカウントの類似度を都度計算するわけにはいきません。


そこで、アカウントひとつひとつの発見タブに投稿が表示されるまでに、以下のような段階を追った絞り込みを行うことで計算にかかる負担を最小限にしています。



まず、推薦候補となるアカウントをリストアップします。具体的には、Aさんが過去にエンゲージしたアカウントを並べて、2-1で解説した類似度計算方法によって、ひとつひとつのアカウントから、より類似するアカウントがないかを洗い出します。


次に、作成された推薦候補アカウントリストから、数千/数万の投稿を抽出し、ポリシー違反の可能性のあるコンテンツや誤った情報のブロック、スパムなど悪質コンテンツの検出、フィルタリングを施し、500投稿まで一気に候補を絞り込みます。


続いて、500に絞り込んだ候補投稿のなかから、発見タブを開いた時に上位に表示される25投稿を絞り込みます。具体的には、各アカウントが発見タブで行うアクションの傾向を分析し、候補者のなかからアクションが行われる可能性の高い投稿を選定します。たとえば、発見タブを開いた時に「いいね」よりも「保存」することが多いアカウントには、過去に保存した投稿の傾向から「保存」されやすい投稿を選定して表示します。


2-3:マンネリ防止と意外性のある発見がなされる工夫


最後に発見タブでは、ユーザーが既に認知しているコンテンツとまだ知らないコンテンツの両方をバランスよく発見できる工夫がなされています。



たとえばコンテンツの多様性を高めるために、発見タブに表示される投稿は同じアカウントから複数の表示されないようになっています。具体的には、ユーザーが画面を下にスクロールした時に、同一アカウントからの投稿が続いた場合は必要に応じて間引きされるイメージです。


これにより、Instagramユーザーは発見タブを通じて、意外性のある発見が常にできるようになり、新たな繋がりが育まれるようになっているわけです。


まとめ



今回はInstagramの発見タブについて、公式ブログの内容をもとに、どのような選定基準で投稿が表示されているのかを解説しました。特に注目すべきは、投稿単位の類似度ではなくアカウント単位の類似度に重点をおいている点と、既知のコンテンツで埋め尽くされない工夫が施されている点です。


「どんなユーザーの発見タブに自社が運用するアカウント投稿が表示されているのか?」


これを想定し、届けたいターゲットユーザーに対して、ブランドコンセプトを明確にしてアカウントを運用すれば、まだフォロワーになっていない新規のユーザーにも情報が届き、フォローしてもらえる機会が増え、アカウントを育てていくことができるでしょう。


この記事を書いた人:澁谷海渡

アニメとラーメンをこよなく愛するデータサイエンティスト。学生時代は主にデータマイニング技術に関する研究を行なっている研究室に在籍し、類似数式検索技術に関する研究に従事。ガイアックスに新卒入社後は、データ収集基盤の構築や社内システム開発を行うエンジニアとして活動。現在はソーシャルメディアマーケティング事業部で主にソーシャルリスニングの研究などのデータ分析業務に従事。