Netflixおすすめ映画3本。ソーシャルメディアの本質を学べる映画をプロが厳選!【書き起こし】
2020/05/22

1. ソーシャルメディアマーケティングの視点から見る映画
Netflixで見られる映画3選
今、Netflixの視聴時間がかなり上がっているみたいですね。皆さんも#おうち時間を過ごすことが多いと思うので、この機会にNetflixで見られるおすすめの映画を見ていただければいいなと思います。どこに注目すべきかを、ソーシャルマーケティングの視線で紹介したいと思います。 紹介する映画は3つです。1つ目は「グレート・ハック SNS史上最悪のスキャンダル」という映画です。トランプ大統領が当選した大統領選挙に関与したケンブリッジ・アナリティカという会社のお話です。 2本目は感染拡大という意味の「コンテイジョン」という映画ですね。「グレート・ハック〜」はドキュメンタリー映画で「コンテイジョン」はストーリー映画です。 最後はドキュメンタリー映画「ビハインド・ザ・カーブ-地球平面説-」です。この3本を通じて、ソーシャルメディアマーケティングのコアの部分をお話ししたいと思います。2. その1「グレート・ハック SNS史上最悪のスキャンダル」
ケンブリッジ・アナリティカ事件を題材にターゲティングを考える

診断アプリのデータを利用して浮動層にターゲティング
ケンブリッジ・アナリティカがFacebookのどんなデータを使ったかというと、Facebook上で診断アプリといわれるものです。性格診断とか心理テストみたいなものをして、あなたはこういう傾向がありますねというようなお楽しみアプリで、どんどんユーザーが拡散していくというものがありますよね。そのデータを使ってそのユーザーに有効な広告を当てるのです。 当時、大統領選挙の最大の焦点はトランプ対ヒラリーでした。トランプ大統領支持者とヒラリー支持者はあまり動かないけども、どちらか分からない浮動層はその場の雰囲気や、直前に見た意見とかで投票先を変える。この浮動層の人たちをいかに動かすか、あるいは動かさないか。 これが選挙を攻略する鍵となるので、浮動層の人たちがどういう人たちかというのを見極めて、その人たちにトランプへの投票を促すとかヒラリーに投票させないようにする広告を打ちます。そういう意図のあるコンテンツをどんどん見せるわけですね。
ターゲティング自体は悪いことではない
この映画の奥深いところは、最後までこのことが悪かったと断罪していないという点です。確かにユーザーの個人データを無断で使いましたが、広告への使用でした。 デジタルマーケティングでは、個人データを分析して広告のメッセージングやターゲティングを変えることは日常茶飯時。日常業務の延長線上にあるものなのです。だから、どこからがブラックでどこからがホワイトなのかは分からないし、グレーゾーンも結構ある。 ケンブリッジ・アナリティカは今ではものすごく悪い会社ということになっているのですが、この映画はドキュメンタリーでしかもかかわっていた人が登場しているので、グレーゾーンもあるよねという点もちゃんと描かれていて、我々としても身につまされる話です。 ということで、やはり気をつけよう、同意を得た上でデータを使おうなどと考えるわけですが、問題はその同意の取り方にも色々あって、今すごく議論になっていることですね。 主人公として描かれる女性の人生も描かれていますが、彼女はもともと慈善活動をしていた人で、政治的にはアクティビズム(積極的行動主義)でした。どちらかというと世の中を良くしたいと考えていた人であるわけです。そういう人が最終的にケンブリッジ・アナリティカ事件にかかわってしまったということも詳細に描かれていて、本当に悪い人が起こした事件なのかというところもすごく考えさせられます。 ソーシャルメディアマーケティングにかかわっている人や、デジタルマーケ、メディアにかかわっている人は、この「グレート・ハックSNS史上最悪のスキャンダル」をNetflixで契約して見てみてください。3. その2「コンテイジョン」
コロナ禍を予言? ポストトゥルース時代を描く映画
次におすすめする映画は「コンテイジョン」。スティーブン・ソダーバーグという有名な映画監督が作った映画ですね。マット・デイモンやグゥイネス・パルトロウなど、有名な俳優も数多く出演しています。 タイトルの「コンテイジョン」は感染拡大という意味です。 ストーリーは致死率20%くらいという、新型コロナウイルスの数百倍の強さを持った謎のウイルスが流行して世界中が大変なことになるというもので、今まさに起こっているようなことと近いことが描かれています。 2011年の映画ですが、今見ると「そうそう、分かる分かる」と言いたくなる映画です。ポストトゥルース(脱真実)という点から注目するとおもしろい役の人が出てきます。 二枚目俳優のジュード・ロウが演じるアラン・クラムウィディというブロガーは、ウイルスが流行り始めた頃からブログでそのことを書いています。世界中に感染が広まり、死者が増えてパニックになる中で、最初からウイルスについてブログを書いていたということで、アランはカルト的な人気を誇っています。 1,000万人単位の人がブログに訪れて、政府の言うことは信じられない、CDC(Center of Disease Control、疾病対策センター)の言うことは信じられない、アランだけが本当のことを言っている、アランが陰謀の裏側を知っている……と、カルト的な信望を集めるブロガーです。 現実でもこのような人物はいますよね。例えば政府やクラスター対策班などの権威ある機関は本当のことを隠している、本当はもっとひどい状況なんだと言って注目を集めて、ウイルスの拡散より情報の拡散、情報感染の方がひどいのではないかと思わせるような情報を発信する人たち、まさにそういう面々をなぞらえられる存在です。カリスマブロガーの嘘とそれを信じる人々

ポストトゥルースはネットやSNSで引き起こせる
これはまさにポストトゥルースだなと思いました。人々は自分の信じたいものを信じるということで、カルト集団とかでもこういう傾向があります。カルトの預言が外れるとカリスマ性を失うのかと思いきや、集団のなかにいる信者はカルトの預言が外れるほどに信仰を強めていくということはじつは昔からよくあります。 これと同じような事が起こっているわけですが、これが今ではネット上、ソーシャルメディア上で起こってしまうがすごく興味深い。人間がカルトを信じてしまう心理状態は昔からありますが、それが今では情報空間で引き起こせるということです。 こういったことが描かれていて、2011年の映画ながらすごくおもしろいのが「コンテイジョン」です。4. その3「ビハインド・ザ・カーブ-地球平面説-」
地球が平面だと信じる人たちの戦いと葛藤

賢いがゆえに地球=球体と証明してしまう
そんな説を信じているということは、もしかすると彼らはアホなんじゃないかと思うのですが、地球平面説を信じる一人ひとりの話を見てみると結構賢いのです。 論理立てて地球は平面であるということを語り、それを証明するためのいろんな実験をクリエイティブに思いついていきます。そしてそれら実験はクリエイティブで正しいがゆえに、ことごとく地球は球であるという証拠ばかりが出てくるという、ちょっとおもしろい展開になるのですが、そういう実験を思いつけるぐらい賢い。 例えば、地球が平面であると証明するために、まっすぐに進むレーザービームをものすごく遠いところへ平行に飛ばすというものがあります。もし地球が平面だったら飛んでいった先で地面から同じ高さのところにある穴を通過するはずですが、もし球体だったらその穴を通過しないでずれるという実験を思いつきます。そしてやってみたら実際にずれてしまい、地球は球なのではないかと証明することになるのですが、そんな実験を次々に思いつくのです。 ほかには地球が平面だという理屈に辻褄を合わせるために、地球儀ならぬ地球平面儀というすごく分かりやすい教材を作ります。そんなことをやるすごく賢い人たちなんですね。その賢い人たちが地球は平面じゃないと証明されればされるほど、物理学者に否定されればされるほど、躍起になって信じていく。まさにこれもポストトゥルースですよね。オピニオンリーダーたちのボスゲーム

5. 最後に
本記事の内容は「ガイアックス ソーシャルメディアラボ」の公式YouTubeチャンネルでも配信しています。 同チャンネルではSNSマーケティングの基本から、世の中で話題のケーススタディを取り上げて分かりやすく解説しています。ぜひチャンネル登録をよろしくお願いいたします!この記事を書いた人:重枝義樹

マーケター。ソーシャルメディアマーケティング事業部 部長。ガイアックスでは大手企業、官公庁中心にソーシャルメディアマーケティングの支援を行う。ガイアックスでの5年に及ぶ経験をもとに、本気でソーシャルをやりたい人のためにSNS禁止のガチ勉強会も行う。