SNSで自社商材のユーザー投稿(UGC)を増やす方法。企業が取り組むべきブランディングについて【書き起こし】
2020/06/18
どうも、ガイアックスの重枝です。今日は事例から見るUGC(口コミ)が自ずと生まれるブランド作りの話をします。
どのような商品やサービスがソーシャルメディアで口こまれて、自分たちの商品にお客様がつくのか。ソーシャルメディア運用をやらなくても、お客さんが勝手にお客さんを連れてきてくれるブランディングの話をお伝えします。
※本記事は「ガイアックス ソーシャルメディアラボ」の公式YouTubeチャンネルで配信した内容を書き起こしてまとめたものです。
1. トリプルメディア理論
まずソーシャルメディアというものは、どのようなものかということを分類して考える必要があります。
インターネット上のメディアを3つの機能に分けるトリプルメディア理論というのがあります。ソーシャルメディアはインターネット上のメディアだけとは限りませんが、インターネット上のメディアで考えていきたいと思います。
1つ目はオウンドメディアです。これは自分たちで所有して自分たちで発信しているメディアです。
2つ目がペイドメディアと言って、CMや広告のように、自分たちがお金を出して配信の枠を買うメディアです。
3つ目がアーンドメディアです。アーンドっていうのは獲得するという意味で、自分たちではオウンド(所有)もペイド(払う)せずに、メディアで取り上げられたり、ユーザーが口こんでくれたりする形のものです。つまり、自分以外の第三者が広めてくれて注目をアーンド(集める)してくれるという概念のメディアです。
※この3つのメディアに加えて、シェアードメディア(Shared Media)という考え方もありますが、分かりにくいので、いったんオウンドメディア、ペイドメディア、アーンドメディアの3つで考えていきます。
自分たちで発信するオウンドメディアやお金を払って情報を発信しているペイドメディアでは、顧客獲得のために情報を発信してしまっているので、ソーシャルメディアが勝手にお客さんを連れてきたということは言えません。
しかし、アーンドメディアはお客さんを勝手に連れてきてくれるということが起こります。そしてこのアーンドメディアでは、お客さんが自分たちの商品を勝手に口こむような文脈作りができているかどうかということがポイントになってきます。
2. アーンドメディアの事例
ソーシャルメディア上では、さまざまな商品やサービスが口こまれているアーンドメディアがあります。このアーンドメディアが非常にうまくいっている事例をいくつか紹介します。
事例:コストコ
まずはコストコです。
コストコは、TwitterやFacebookで、アーンドメディアとして勝手にメディアが機能していて、お客さんに対してPR効果が高く出ていると思います。
例えば、Facebookグループには、コストコの情報を交換するためのグループがいくつもあります。そのうちのいくつかは数万人の会員を超えるグループで、グループ内で商品の情報を交換しています。
「こんな商品を買いました!よかった」という口コミのほか、「この商品前に買った人、どうだったか教えて」という投稿に対し、それを買った人がよかったよ、悪かったよという情報を教えてくれることもあります。
Twitterでは、コストコで買ってよかった商品をどんどん紹介するアカウントがあり、エンゲージメントやフォロワーをたくさん集めています。これは、コストコが何かをしているわけではなく、ユーザーが勝手に商品の情報を広めてくれています。その結果、後出の消費者に「大量に買うと安い」という得をさせています。
一方でコストコの消費者は、購入を失敗したくないという心理があります。コストコの商品は安いですが、一つ一つの商品の量が多いので、買って失敗してしまうと大変です。このような買い物を失敗したくないという状況は、情報交換を積極的に行うことの動機付けになります。
ユーザー同士が、「この商品どうだった?」「よかったよ」「じゃあ買ってみよう」というようなやり取りをし、情報を元に実際に買ってみた人が「言われた通りよかった」というようなコンテンツをまたあげる。
このように情報が伝播し、さらに物が売れていく。これがコストコのアーンドメディアが盛り上がる理由です。非公式のSNSグループが盛り上がっていると、公式がソーシャルメディア運用やペイドメディア運用をやらなくても、勝手に口コミが広がっていきます。
事例:サイゼリヤ
別の事例では、サイゼリヤの例があります。
TwitterやInstagramには、「サイゼ行った!」という話があがっています。コストコの場合は「この商品よかったよ」「この商品どうだった」という商品情報の交換だったのに対し、サイゼリヤのアーンドメディアは、「サイゼリヤでご飯を食べました」という写真や、「○○を食べました」という投稿が次々にあがっています。
そして、このような何を食べたのかという日記のような投稿にもかかわらず、エンゲージメントがついている。なぜそのようなことが起こるのかというと、「サイゼリヤ=安くておいしい」だから誰もが食べられるという共通前提がみんなの中にあるからです。
そのため、サイゼリヤで何を食べたのかという日記のような投稿があがった時に、以前食べたことがある人は「私も食べた!」という反応をしたり、まだ食べていないけれど食べたいという人は「今度食べよう」という反応をしたりします。
要するに、サイゼリヤそのものが巨大なミーム(meme)のプラットフォームになっていて、その中でコミュニケーションが起こりやすくなっているというわけです。
事例:コンビニスイーツ
サイゼニアと似た状況にあるのがコンビニスイーツです。
コンビニスイーツには、「コンビニで買える手軽さがあるのに、本格的でパティシエが作ったみたいにおいしい」という共通認識がみんなの中にあります。それがプラットフォームとなっていて、コンビニスイーツが投稿であがると、非公式のSNSグループ上で、「それおいしかった!」「おいしそう」という反応が返ってきます。
もしも、コンビニスイーツはおいしいという認知が取れていない状況であれば、かつて食べた人からは「おいしかった」という反応があるかもしれませんが、これから食べようとする人の食欲を刺激することはなかなかできないでしょう。
しかし、綺麗な器に盛りつけてあるわけではない、ただコンビニのパックに入っているだけのスイーツでも、コンビニスイーツ=おいしいというパーセプション(認知)がユーザーの中にできているので、それを見ると「これおいしそう」とか「今度食べよう」という気持ちにさせることができます。
このように、コンビニスイーツやサイゼリヤのコンテンツを発信するユーザーは、相手と文脈が共有できているため、その文脈を共有する人たちの中で、「こういう投稿をしたらこういう反応が返ってくる」というような、期待と報酬という関係が成り立っています。これは共通言語のようなものです。
パーセプション(認知)があるからUGC(ユーザー投稿)があがる状況を作っていれば、ソーシャルメディアをやらなくてもアーンドメディアとしてユーザーがお客さんを連れてきてくれます。
3. 一から認知をつくるには?
実際に自社の口コミをこれから増そうと、一から認知をつくるにはどうすればよいのでしょうか。
コストコやサイゼリヤやコンビニスイーツのように大きくは展開できないという場合も多いと思います。UGCをあげるために、自分たちがどの文脈を利用するか考えることが大切です。
自分たちで巨大な文脈を作っているコストコやサイゼリヤと同じように行うのは難しいと感じるかもしれませんが、コストコやサイゼリヤの文脈も、掘り下げるとさらに大きな文脈があります。
サイゼリヤの場合は、「安くておいしいものを食べたい」という人々の共通の思いがある。また、コストコの場合は、「安くて良いものを買いたい」という人々の共通のプラットフォームがあります。
これからUGCをあげるためには、自分たちのビジネス規模に合わせ、どの文脈に乗せていくか選ぶことが大切です。例えば自分のカフェを宣伝したい場合、どういうカフェかを考えて、「こういうカフェにはこういうファンがつき、こういうUGCがいっぱいあがっている」ということをイメージする必要があります。
表参道にありそうなおしゃれ系のカフェなのか、それとも子連れOKでママ友同士と気軽に利用できるカフェなのかで文脈は異なります。それぞれのカフェで、それぞれ違う文脈ができていて、文脈に応じたコミュニケーションがされているわけです。
そしてそのコミュニケーションに乗るようなサービスを展開したり、店作りをしたり商品を出す必要があります。その上でUGCをあげてもらえば、同じ文脈に属している人が見ると瞬時に理解してくれるので、刺激を呼び、お客さんを呼んできてくれるということが成り立ちます。
アーンドメディアを使う場合に重要なことは、どこの文脈に乗せるかを選び、その文脈に乗るような商品やサービスはどれかを、徹底的に考えて展開することです。これがソーシャルメディアが勝手にお客さんを連れてくるブランド作りです。
4. 最後に
本記事の内容は「ガイアックス ソーシャルメディアラボ」の公式YouTubeチャンネルでも配信しています。
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この記事を書いた人:重枝義樹