ショップ機能のアップデート総まとめ。Facebook社が目指すコロナ以降のオンラインの購入体験とは
2020/09/24
新型コロナウイルス感染症の拡大が小売業に大きな影響を与える中、Facebook社はFacebook、Instagramにおいて数々の機能アップデートを行いました。
6月中旬からFacebookとInstagram共通で使用できる新しい機能「Facebookショップ」が日本でも提供開始され、7月31日にはInstagramにおけるショッピング体験をさらに充実させる新機能「Instagramショップ」が「発見タブ」からアクセスできるようになりました。利用者がこれまでとは違う方法でブランドを「発見」し、よりブランドの世界観を体験しやすいUIになったといいます。
今回はこの「Facebookショップ」の新機能と、今後実装が予定されている機能、企業がFacebookやInstagramでECを行う上で注意すべきポイントについて、コマース事業部のインダストリー マネージャを務める丸山 祐子氏にお話を伺いました。
Interview / ソーシャルメディアラボ編集部 小東 真人 (@gxsoc_kohigashi)
Text / ソーシャルメディアラボ編集部 大木一真
- プロフィール
- コロナ禍を受けての大幅アップデート。Facebook社が取り組むEC支援
- ショップ機能が充実し、より世界観が伝えやすいUIへ
- 今後実装が予定されている、3つのコマース機能とは
- 海外の成功事例に見る、Instagramでのショッピング体験の可能性
- 最後に:「機能」ではなく、「顧客」にまず向き合うべき
1. プロフィール
コマース事業部 インダストリーマネージャ:丸山 祐子氏
大学卒業後、人材会社で法人広告営業担当に就き、その後、広告会社でソーシャルメディア営業を担当。主に、Twitter, Facebookをはじめとする新規海外メディアの日本での広告ローンチに従事。2013年5月Facebook入社。ブランディングを主目的とする消費財、小売チームとダイレクトレスポンスを主目的とするコマース、旅行業界のクライアントソリューションマネージャ, リードを経て現職。
2. コロナ禍を受けての大幅アップデート。Facebook社が取り組むEC支援
小東: EC機能のアップデートについて、その背景をお聞かせください。
丸山 祐子氏(以下、敬称略):Instagram利用者の9割以上が何らかのビジネスアカウントをフォローしており、投稿から「商品やサービスを発見する」という体験は当たり前のものになってきています。
しかし、多くの企業が顧客にECサイトにきてもらうだけでなく、定期的に訪れてもらい、しっかり繋ぎ止めることが難しいという課題を抱えていると感じます。InstagramやFacebookの強みは、利用者が好きなものや興味があるものと繋がるために日常的に訪れていること。その動線の先にショッピング体験があれば、「好き」という気持ちが「欲しい」という購買欲求に繋がりやすいと私たちは捉えています。
また、弊社のプラットフォームでEC事業の支援を推進する背景として、新型コロナウイルス感染症の拡大によって厳しい状況にある中小ビジネスの事業を、より強くサポートしていきたいという思いがあります。
コロナ禍が大きな問題になり始めた頃からさまざまな調査を行ってきましたが、2020年5月に実施した国内消費者を対象にした調査では、過去1ヶ月で52%がECサイトを利用したと回答しました。
これまでは実際に見なければ買わなかったという方も、消費行動を見直していかなければならない段階にあると思います。その中で、ビジネスを提供する側もこれまでの小売ビジネスだけではなく、オンラインにシフトしていく必要が出てきました。
そこでFacebook社でも、簡単かつ無料でEC機能を利用できる新機能として、Facebookショップを2020年6月中旬に国内でも導入開始しました。
3. ショップ機能が充実し、より世界観が伝えやすいUIへ
小東:今回のアップデート内容について、具体的にお聞かせください。
丸山:1つ目は、これまでそれぞれ独立していたInstagramショッピングやFacebookページショップを、コマースマネージャで一元管理できるようにしたことです。統一したUIにすることで、工数もかけず、かつブランドの世界観を壊すことなく運用できるようになったことが大きな変化です。
2つ目が、ブランドの世界観をより豊かに表現できるようになったことです。Instagramのプロフィール上、もしくはFacebookページ上で「ショップを見る」ボタンをタップすると、全画面でショップが表示されるようになりました。また、コレクション機能を使うことで、ショップ内で商品をカテゴリーごとに分けて表示したり、コレクションごとにカバー画像を設定したりすることもできます。
コレクション作成には、コレクションに入れる商品画像に分かりやすく、クリアにフォーカスされたものを選ぶことをお薦めしています。例えば右側の「DON’T」の画像のように、画像に複数の商品が写っていると、どの商品を紹介したいのかが分からず、商品の魅力がパッと伝わりづらくなってしまいます。
また、7月のアップデートでは、虫眼鏡マークの発見タブの上部に、ショッピング機能を使っている投稿やビジネス、コレクションが利用者ごとにパーソナライズされて表示され「Instagramショップ」が表示されるようになり、利用者は新しいビジネスやブランド、商品に出会うことが容易になりました。
利用者にとって発見タブは、まだフォローしていないアカウントや投稿と出会うために訪れる場所です。そのような役割を持つ発見タブにInstagramショップを設置することで、ウィンドーショッピングをするような感覚で、新たな商品と出会うための動線として使ってもらえると考えています。
小東:どのビジネスアカウントでも、これらの機能は使えるのでしょうか。
丸山:はい、ショップ機能は基本的にどのビジネスアカウントでも無料でお使いいただくことができますが、使用にあたっての各種条件を満たしており、Facebook社による審査で承認される必要はあります。
4. 今後実装が予定されている、3つのコマース機能とは
小東:アップデートの続くショップ機能ですが、アメリカではハートマークの「アクティビティ」のタブがなくなって、Instagramショップが独立したタブになるテストが発表されましたね。
丸山:はい、今のところはまだテスト段階です。ハートマークが買い物のカゴのアイコンに変わり、そこからInstagramショップに直接飛ぶというものです。「アクティビティ」は別の場所に移りますが、機能自体はなくなりません。
小東:それでは他に、今後導入が予定されている機能についてお聞かせください。
丸山:まだ開発段階にあり、詳細が未定のものもありますが、大きく3つを予定しています。
①ライブショッピング機能
InstagramやFacebookでライブ配信をする際に、カタログから商品をタグ付けすることができます。こちらは私自身も様々な企業様とお話する中で、ご要望がとても多かった機能です。視聴者は商品を画像下の「add to bag」というボタンから追加することができるようになるため、ライブ配信を見て欲しいと思った商品をシームレスに購入することが可能です。現在米国でテスト中で、日本での導入時期は未定です。
②ロイヤリティプログラム
国内外を含めて、導入時期は未定ですが、ポイント券のような形でロイヤルポイントを貯めていけるシステムも今後実装予定です。Facebookアカウントと連携することで、利用者にとっても企業にとっても、獲得したポイントの確認や管理が簡単にできるようになります。
③メッセージアプリ内での展開
こちらも国内外を含めて導入時期は未定ですが、WhatsAppやMessenger、Instagramダイレクトのチャット内でもショップの閲覧ができるような仕様を目指しています。現時点では、FacebookページやInstagramのプロフィールにある「ショップを見る」がショップへの主な入口ですが、メッセージアプリにも対応するようになれば、より動線が増えることになります。
5. 海外の成功事例に見る、Instagramでのショッピング体験の可能性
小東:どのような業界にInstagramでのショッピング体験を経験して欲しいと考えていますか。
丸山:Instagramでのショッピング体験ですと、アパレルやビューティといったイメージが強いと思いますが、実はインテリアや食品など、非常に幅広い業界に活用いただいています。
家具や食品をただ並べるだけでは世界観が十分に表現できないため、利用シーンを訴求したり、レシピを公開したりして、具体的な使用イメージが湧くような工夫をするとよいと考えています。
ライブショッピング機能などの拡充も予定していますので、今からショップ機能やライブ配信などを積極的に活用して知見を貯めていただけると、新機能が導入された際に先行優位性を感じていただけると思います。
小東:ショップ機能での成功事例がありましたら教えてください。
丸山:ショップ機能でビジネス成果を出すためには、複合的にInstagramを使っていただくことが重要だと考えています。海外の化粧品ブランド、DRAGUN BEAYTY(ドラゴンビューティ:@dragunbeauty)は、まさにそんな事例です。
ブランドアカウントだけでなく、インフルエンサーであり、ブランドの創設者であるNikitaさん(@nikitadragun)のアカウントを活用することで、世界観や商品の魅力を効果的に発信しつつ、リーチなども最大化しています。
例えば、コスメブランドが好きな人、インフルエンサーが好きな人、2つのコミュニティにリーチできるよう、双方のアカウントで投稿をしました。新商品発売にあわせてInstagramストーリーズのスタンプを活用してカウントダウンを行ったり、フィード投稿にショッピングタグを使ってECサイトへの動線をきちんと用意するなど、投稿の方法も非常に参考になるアカウントです。
さらに、米国でテスト中のライブショッピング機能を使うことで、商品の開発背景や使い方を実演して紹介しました。既存の商品との組み合わせなどを見せることでクロスセルも実現しており、その結果、ライブの視聴者数が4万3,000人で、購入カートに追加された商品数は5,000点と、非常に高い成果を上げています。
6. 最後に:「機能」ではなく、「顧客」にまず向き合うべき
小東:ショップ機能の活用を検討している企業に向けて、アドバイスがあればお願いします。
丸山:「ショップ機能をどう使いこなせばよいか」という機能面ばかりに注目が集まりがちですが、一番大事なのは普段からの顧客とのコミュニケーションです。
その中でもライブ機能はぜひ積極的に使っていただきたいです。実際に多くの企業様から手応えを感じているという声をいただいています。ライブ配信だと「ボタンを開けて見せてください」や「後ろをむいて見せてください」など、家にいながらお店で買い物をするような体験ができます。実店舗へ足を運ばなくなった顧客に対しても、しっかりリーチすることができます。
小東:ビジネス側としては、コンバージョンにフォーカスしてしまう企業が多く、マーケティング全体を俯瞰した展開ができないケースもありますよね。
丸山:その通りですね。「購入」のコンバージョンに部分最適化しすぎることで、ファネルが先細りすることは注意すべきだと思います。もちろん最終的なポイントとして「購入」は大事だと思っていますが、顧客とブランドとの間のコミュニケーション上にコンバージョンはあります。
ショップを充実させ、ショッピングタグを付けていくら投稿しても、そこに訪れてくれる顧客がいなければ意味がありません。いかに新機能を活用するのかではなく、総合的に顧客とどのようにコミュニケーションを取るのかを考えることが最も重要ですし、それこそがInstagramやFacebookの強みだと考えています。
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