PRとマーケティングの違いを理解しよう【書き起こし】
2020/10/05
どうも、ガイアックスの重枝です。本日はPRとマーケティングの違い、また、それぞれにおけるソーシャルメディアの使い方についてお話します。
※本記事は「ガイアックス ソーシャルメディアラボ」の公式YouTubeチャンネルで配信した内容を書き起こしてまとめたものです。
1. PRとマーケティングの違い
PR・広報とマーケティングは混同されやすく、同じようなものだと思われていますが、社会的役割という面で考えるとかなりの違いがあります。
マーケティングとは
マーケティングとは、すでに存在するマーケットで、商品を消費者のニーズにいかにフィットさせるかという活動です。
例えば、新しい自動車の販売を企画する場合、それを購入する(してほしい)対象はすでに存在しているわけですが、最近は「どういう動機で車を買うのか」などをリサーチすることがあります。
そこで「通勤に使うより家族と週末のドライブを楽しむために使いたい人が多い」といったマーケットの情報を手に入れると、それを企画に移す際に「通勤を目的した車ではなく、家族で遊びに行く時に楽しめる車を作ろう」ということになり、それに合わせて商品の詳細や広告、宣伝を考えていくことになります。
つまり、消費者のことをよく知った上で消費者のニーズに合わせた商品を作る、また広告活動を行う、これがマーケティングです。
PRとは
一方でPR(パブリックリレーションズ)とは、企業やブランドが「どう社会と関わっていくか」という話で、その大きな目的は「社会そのものを変える」ことにあります。
マーケットは社会の中にあるため、当然PRによって社会が変われば、変わった社会に合わせてマーケットの形も変わっていくということになるのです。
例えば、コロナ禍以降テレワークが急速に普及しましたが、それによって「わざわざ都心に住むよりも、都心から1時間半や2時間半ほどかかるような郊外に大きな家を買って、自然豊かな環境の中で暮らしたい」などのように意識が変わった人も多いと思います。
これは「感染予防のために、なるべく通勤を控えて自宅で働こう」というPRによって社会が変わったためです。
このように社会の姿を変えていくというのがPRで、当然ソーシャルメディアの使い方も、PR目的かマーケティング目的かによって変わります。
2. PRとマーケティングの具体例
PRとマーケティングの違いについて、具体例を用いてご紹介します。
マーケティングの例
例えば、マーケティングの代表的な成功例がApple社のiPhoneです。成功要因は、スティーブ・ジョブズ氏がiPhoneを「電話」として販売したことにあり、iPhoneは電話だったからこそ成功したといっても過言ではありません。
iPhoneは、要はタッチパネルで気軽に扱えるコンピューターなのですが、もし当初パソコンとして売り出していたとしたら、おそらく、それまでパソコンを使っていた人しか買わなかったのではないかと考えられます。
企画の時点でパソコンより携帯のほうが普及しているという前提から、新しいパソコンではなく新しい電話、よりスマートな電話「スマートフォン」としたほうが売れることにジョブズ氏が気付いたということですね。
そして実際に新しい携帯として出した結果、売れたということです。
こういった例がマーケティングです。実際にスマートフォンが普及した結果、世の中は変わりましたが、世の中が変わってからiPhoneが売れたわけではないですよね。
マーケティングをした結果、その商品によって世の中が変わったということになります。
PRの例
逆に、PRは先に世の中を変える必要があるため難易度が高くなります。
PRでは、ユーザーの既知の情報に合わせることより新しい見方(パーセプションチェンジ:認識変容)を提供することが重要で、一番狙うべきポイントです。
パーセプションチェンジが行われると、今まで見えていた風景が全然違った風景に見えます。
前述のとおり、新型コロナウイルス感染拡大によって「小さくても都心に家を持つ」という考え方から「田舎でのびのび暮らしたほうが子どももすくすく育つ」といった考え方にガラッと変わることもあるわけです。
もちろんコロナ禍以前でも田舎にも都心にも家はありました。家という商品そのものは変わっていないわけですが、見方が変わることで需要も変わるというのがパーセプションチェンジなのです。
そして、これを狙って行うのがPRで、既知の情報より、それ以前の見方をひっくり返すアプローチというのが重要になります。そうすると、これまでネガティブだと思われていたものがポジティブになったり、ポジティブだと思われていたものがネガティブになったりするのです。
例えば、ゴキブリは寒い環境に弱いため北海道では見たことがないという人も多く、特別汚いものと認識されていませんでした。いっぽうで本州などでは、不衛生・汚い・気持ち悪いという先入観から「駆除しなければならないもの」と認識されています。
実際のところ、ゴキブリをそこまで目の敵にして滅ぼすべき対象なのかというとその根拠は定かでなく、「ゴキブリ=駆除する対象」という認識があるため、本州ではゴキブリ駆除グッズが売れるのだと考えられます。
対して、かつての北海道ではゴキブリに対する認識が薄く、一種の虫に過ぎなかったため対策グッズが売れない、つまり北海道にはゴキブリ駆除グッズのマーケットそのものがありませんでした。
その後、さまざまな社会的変化があって北海道においてもゴキブリというものの見方がガラッと変わりました。「虫の一種」から「気持ち悪くて滅ぼさなくてはいけない対象」に認識が変わっため、ゴキブリ駆除グッズという新しい商品のマーケットが北海道にできたということになります。
このようなPRをソーシャルメディアで行う場合、ユーザーの既知の情報と合わせることより既知の情報の違う見方を提供することが重要となるのです。
例えば、鬼の子どもが「ボクのお父さんは、桃太郎というやつに殺されました。」と泣いている有名な広告がありますが、これはまさにパーセプションチェンジを狙ったPR寄りの広告であるといえます。
引用:2013年度 新聞広告クリエーティブコンテスト最優秀賞「めでたし、めでたし?」
一般の人から見ると鬼は滅ぼすべき相手だったのが、立場を逆転するとパーセプションがガラッと変わる、つまり鬼の立場から見ると桃太郎は侵略者という見方になるわけです。
こうした例がパーセプションチェンジであり、PRの使い方の例ということになります。違うものの見方を提供することで、どんどんコンテンツとして売っていく必要があるわけですね。
3. 違いを見分けて情報発信の仕方を変えよう
このように、消費者の既知の情報と合わせて物を売っていくというのがマーケティングであり、既知の情報そのものを変えてしまうのがPRであるということになります。
このような違いを見分けて情報発信の仕方を考えていくことが必要です。
4. 最後に
本記事の内容は「ガイアックス ソーシャルメディアラボ」の公式YouTubeチャンネルでも配信しています。
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この記事を書いた人:重枝義樹