Google Me、facebookケータイ、au。「アドレス帳」がソーシャルグラフの次なる闘いの場に。
2010/10/05
Google Me、facebookケータイ、auのソーシャルグラフ。いずれもまだサービス提供は開始されていないものの、昨今話題のこれらサービスに共通するキーワードは「アドレス帳」だ。
本記事では、現時点での上記サービスのまとめと、「アドレス帳」を握るソーシャルグラフプロバイダーの新星を紹介する。
■Google Meの正体とは
Facebookに対抗すべく、Googleが今秋公開すると噂されているソーシャルサービス「Google Me」。今年2月に公開したTwitterライクなサービスGoogle Buzzが不調なため、Googleにとって今回が正念場だ。
単なる噂話ではないレベルでGoogle Meについて語られたのは、Facebookの元CTOによる発言だった。
Facebookの元CTO曰く: Google Meは噂ではなく事実であり標的はFacebookだ
複数の信頼できる筋からの情報をつなぎ合わせると、話はこうなる:
- これは噂ではない。本物のプロジェクトである。たくさんの人がそれを今手がけている。もう、疑う余地はない。
- Googleは、Buzzだけではだめだと悟り、もっと完全な最高級のソーシャルネットワークを作ることにした。お手本はFacebookだ。
- これまでの取り組み(少なくともBuzz以前)と違って、Google内部でプライオリティの高いプロジェクトだ。
- Googleは、大きくなったFacebookは成長が鈍化し、Googleに対し大きな影響力を持たなくなると想定していた。しかし実際にはFacebookの成長は止まらず、Googleにとって真の脅威になってきた。
その後、Google Meに関する様々な推測記事が書かれたが、9月になってついにGoogle CEO Eric Schmidtが、その概要をを明らかにした。
重要な発言を以下に引用する。
- Arrington:ソーシャルはGoogleの将来にとってどれほど重要なのか、既存の巨大ライバルたちとどう戦っていくのか教えてください。
- Schmidt:ソーシャルに対する私たちの考えは、みなさんが書いていることとは少々異ります。私たちは、ソーシャルな情報によって中核サービスを良くしたいと思っています。起こり得ることで最良なのた、Facebookがネットワークを開放して、その情報を使うだけで済むこと・・・それがだめなら、その情報を手に入れる方法は他にもあります。私たちは、[Googleの中核サービスに]ソーシャルなコンポーネントを追加して、より良くしようとしているところです。ユーザーの了解を得た上で・・・友だちのことをもっとよく知ることで、さらに好みに合ったレコメンデーションをするなど、検索の質を高めることができます。[サービス開始時期は]この秋と考えてよいでしょう。
Schmidt氏は「Facebookのソーシャルグラフを使いたい」と言いつつも、Facebookは外部サイトにおいてソーシャルグラフの保存を禁止しているため(Facebookの命であり、ソーシャルグラフは常に流動的に変化しているから当然と言えば当然だが)、実現が困難であることを認めている。
次に「[Googleの中核サービスに]ソーシャルなコンポーネントを追加」という言い方で、ソーシャルグラフサービスが単独で提供されるものではなく、既存サービスを補完するような位置づけであることを示唆している。
「ユーザーの了解を得た上で・・・友だちのことをもっとよく知ることで、さらに好みに合ったレコメンデーションをするなど、検索の質を高める」では、いわゆるソーシャルサーチが提供されることを語っている。
これらの情報からでは、Googleがどういった方法でソーシャルグラフの構築を行うのか明確にはならないが、やはり最初のベースとなるのはGoogle Buzzの時と同様に、Googleが持つ最大のソーシャルグラフ資産、つまりGmailのソーシャルグラフ(アドレス帳)とするのは想像に難くない。
■Facebookケータイの正体とは
Google Meと同様、Facebookケータイも未だ全貌が明らかになっていないが、幾つかの情報をまとめてみると、その狙いと有望な仮説が浮かび上がってきた。
具体的にFacebookがやりたいのは、電話機上の連絡先リストなどの中核機能ともっと深く連携をとることだ。それを可能にするためには、オペレーティングシステムを制御するほかはない。
「Facebookケータイ」は作っていない――Facebookが報道否定 – ITmedia News
インターネットで報じられた「独自の携帯電話を開発中」とのうわさについては否定した。Facebookは現在世界に5億人以上のユーザーを擁しており、既に多数の携帯電話で各種のアプリケーションを自社のSNSサイトと連携させている。だがFacebookの広報担当者ジェーム・シェプリン氏によると、同社は「携帯電話は作ってはいない」という。「現在進めているプロジェクトの中には、一部のメーカーとの統合を強化するためのものはある」とさらに同氏。
Facebookはなぜ今, Android携帯を開発中なのか?iPhoneではトータルなソーシャル化が不可能だからだ
Mark Zuckerberg: 重要だけど中になかなか入れてくれないiPhoneのようなプラットホームに関しては、できるだけのことをやるしかない。Androidなら、もっとカスタマイズができる。いくつかの具体的なことのために、他社と協働することもできるだろう。しかし、そうは言っても、iPhoneと競合するような携帯電話の構築などを、目標にはしたくないね。
「Facebookが2011年にスマートフォン発表」とBloomberg – ITmedia News
Facebookは携帯電話メーカーINQ Mobileと協力して、AT&Tのネットワークで動くスマートフォン2機種を開発していると、Bloombergが事情筋からの情報として報じた。
これらの情報を繋ぎ合わせた結論はこうだ。
「連絡先リストや通話/メール履歴など、ソーシャルグラフをさらに強力にする機能/情報をFacebookが自由に使えるようにするために、Facebook自らがAndoroid OSをカスタマイズし、外部の携帯電話メーカーがハードを作る。」
Facebookは、Web上の活動だけでなく、通話/メールの送受信もソーシャル活動の重要な要素であると認識して、抑えに来たわけだ。
>■auのソーシャルグラフとは
FacebookがFacebookケータイを欲しがっているということは、つまり既存の携帯キャリアは、強力なソーシャルグラフプロバイダーになりうる資格を持っているということだ。
そしてついに今年9月auが、国内では初めて携帯キャリアによるソーシャルグラフの提供を発表した。
出所:KDDI
携帯アドレス帳をソーシャルグラフに――KDDIが「サンシャイン王国」に取り組む狙い – ITmedia News
KDDIは9月17日、ソーシャルゲーム「サンシャイン牧場」の提供元としても知られる中国のソーシャルアプリ開発会社、Rekoo MediaおよびRekoo Media Japanとの提携を発表した。 3社は、10月14日から3キャリア対応のソーシャルサービス「サンシャイン王国」を提供する。同サービスの大きな特徴は、ソーシャルゲームとポータルサイトの要素を兼ね備えていること。そして、携帯電話のアドレス帳のデータをソーシャルグラフ(サービス内での他ユーザーとのつながり)に反映できることだ。
残念なのは、ケータイ端末に保存されたアドレス帳は直接参照できず(端末のセキュリティの観点で制限されている)、au oneアドレス帳を使っているユーザに限られるサービスである点だ。auユーザ全てが対象となるわけではない。
ただ今後、ソーシャルゲームプラットフォームのGREE,モバゲーの強力なライバルになりうる可能性を持っているのは確かだ。
■アドレス帳を握る、ソーシャルグラフプロバイダーの新星
Google Me、Facebookケータイ、auの事例から、ソーシャルグラフ争いにおいて、今後はアドレス帳が重要な鍵を握っていることが分かった。
そして昨日、その戦いにもう1人、新たなプレイヤーが登場した。「LISTER」だ。
「Google名刺管理」と言ってもいいくらい便利な、無料連絡先管理アプリ『LISTER』 : ライフハッカー[日本版]
Googleが名刺管理サービスをリリースしたら、こんな感じになるのではないか、と思うくらい、楽で便利で快適な連絡先の管理アプリがこちらの『LISTER』です。
現時点では、「受信したメールの署名を解析して、自動でアドレス帳のデータを作成、リスト化する。」という名刺管理ツールという体でアピールしているが、最終的な狙いはソーシャルグラフプロバイダーの立ち位置だろう。
Google Me、Facebookケータイ、auらと比べた時の彼らの優位性は、ユーザのプラットフォームを選ばない点だ。IMAP対応メールサーバを使っていれば、誰でも利用できる。
課題は、ベンチャー故の知名度の低さやセキュリティ面の信頼度だろう。「アドレス帳の友達を招待する」など口コミを促進する機能で急速な知名度UPを図り、セキュリティの堅牢性も対外的にアピールしていくべきだ。
■まとめ
いずれのプレイヤーも、「アドレス帳」を使ったアクション(=メールのやり取りや通話)をソーシャルな活動と定義し直して、ソーシャルグラフの構築に活かそうとしている。
今後は、「通話やメールのやり取りが多い人ほど、強い関係性のソーシャルグラフが構築されている」といったデータが、ソーシャルグラフに反映されていくのだろう。
この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部