分散型メディアから分散型コマースへ。コンテクスチュアルコマースとも言われるモバイル時代の新しい買い物体験とは?

2016/03/23

eyecatch


自社メディアを持たずにソーシャルメディア上にコンテンツを配信し、そのリーチを最大化する分散型メディア。米国発のレシピ動画のTastyやニュース動画のNowThisを筆頭に、日本でもデリッシュキッチンTimelineNewsなどの自社サイトを持たないメディアがどんどん現れ始めています。


こちらの記事にもまとめている通り数あるソーシャルメディアの中でもFacebookを中心として料理やヘアアレンジなどの動画コンテンツを提供するブランドが多いですが、2016年はゲーム、育児、スポーツ、ニュースなどさらにそのカテゴリは増加していくことでしょう。


デリッシュキッチンなど、Facebookページの立ち上げから半年と経たずに65万人ものファンを集め、その動画も多いものでは400万回再生に及ぶなどとても大きな影響力を持つに至っています。もちろん他の動画も数十万〜数百万再生されており、YouTubeやInstagramなど他のソーシャルメディアでのリーチも踏まえるとさらに大きな数字となります。自社サイトでのコンテンツのみでは、この短期間にここまでの成果を出すことは難しいのではないでしょうか?


この記事では分散型メディアが注目されるに至った環境の変化と、その先にある分散型コマース(コンテクスチュアルコマース)と呼ばれる人々のオンライン決済における動向についてご紹介していきたいと思います。


text / オキナワアイオー株式会社 代表 金城辰一郎


    ■目次


  1. なぜ今、「分散型メディア」が注目されるのか?

  2. コンテクスチュアルコマースという、分散型メディア時代の購入体験

  3. まとめ


1.なぜ今、「分散型メディア」が注目されるのか?


キッカケはバイラルメディアの代表格、BuzzFeed?


socialmedia


メディアに関わる人々の中で2014年の終わり頃から認知され始めたこの分散型メディアというキーワード。


冒頭にも述べた通り自社サイトに誘導せず、運用するソーシャルメディアなど各種チャネル上で人々にコンテンツを消費してもらうのを目的とするメディアの在り方ですが、その発端はバイラルメディアの代表格BuzzFeedにあると言われています。


2億人もの読者を抱えながら、そのトラフィックのほとんどがソーシャルメディアからの流入となっているBuzzFeed、それほど多くの読者がソーシャルメディア上にいるのであれば、”BuzzFeedのコンテンツは他のプラットフォーム上で生きていけるだろう”と判断し、サイトのページビューを指標としない分経営方針へ舵をきることになりました。


そこで生まれたのがBuzzFeedFood、Tasty、TopKnotなどのお化けメディアです。Tastyなど多いものでは5,000万再生にも及ぶ投稿など、どれも1投稿あたり数千万単位で動画コンテンツが閲覧されています。




Bacon Guacamole Chicken BombsFULL RECIPE: http://bzfd.it/1SDgBGj


Tastyさんの投稿 2016年3月10日




 


こちらの記事にもあるよう、BuzzFeedは今「Content Views」という指標を用いて、サイトのPVではなく、各プラットフォーム上でリーチしたコンテンツの視聴数を重要視しています。


サイト上のバナー広告や読者からの課金ではなく、売上の多くが記事広告となっているBuzzFeedはサイトに人を連れてくる必要がないため、人々の「Content Views」をより最大化できるこの分散型メディアの形が最適なものとなっているのです。


ユーザーの環境の変化をみると分散型メディアは必然の流れ


vertical_videos


このBuzzFeedの動きに合わせる形でYouTubeネットワークのTastemadeやNowThisもFacebook上での動画配信を中心とした、分散型メディアの展開に舵を切ることになりました。またワシントンポスト、CNN、MTV、VICEなどの大手メディアもわざわざスナップチャットに最適化した”縦型”の動画コンテンツを毎日作成をし配信をするなどその流れはとどまるところを知りません。(※上記画像を参照)


その大きな要因としてスマートフォンにおける各種ソーシャルメディアの利用が年々増えてきているという背景があるでしょう。実際、自身のアプリ利用を考えてみてもLINE、Facebook、Twitter、Instagramなどに毎日多くの時間を使っている方がほとんどではないでしょうか?


このようにPCやテレビではなくモバイル、そしてGoogle、WEBサイト、ブログなどではなくソーシャルメディア、というように人々は多大なる時間をスマホのソーシャルメディアアプリに費やしています。


そんな時代、ソーシャルメディアを離れて自社サイトにわざわざ来て欲しいというのは事業者側のエゴでしかありません。人々がいるところに最適なコンテンツを届ける、当たり前のユーザー目線にたった方法が分散型メディアの考え方なのです。


FacebookとGoogleもスマホ上でストレスなくさらに多くのコンテンツを閲覧してもらうよう、インスタント記事やAMPという新技術を導入したのは記憶に新しいところです。


動画時代に最適な分散型メディアというフォーマット


huffpos


また、この分散型メディアの主流は”動画”です。パッパッとフィードを流し読むプラットフォーム上でコンテンツをしっかり閲覧してもらい、かつ直感的にボリュームのある情報量を伝えられるのは画像でも文章でもなく、動画が適しているのはおわかりいただけるでしょう。(先に紹介したTasty、NowThis、デリッシュキッチンなどもすべて動画が中心です。)


通信速度やスマホの性能もあがり、フィード上で自動再生されるなどストレスなく動画を閲覧できる環境が整ってきた今、動画コンテンツの供給者はどんどん増えそのトレンドはさらに勢いを増すことになります。今、インターネットのトラフィックの6割ぐらいが動画と言われていますが、2,3年後には8割に達するとも言われており、2016年3月の段階でFacebookとSnapchatは、共にそのビデオ視聴は1日80億回にも及ぶ規模にまでなっています。


個人的にFacebook上における動画コンテンツの強さを感じたのはこの日本版NowThisとも言えるSpotwrightのこちらの動画です。






日本人が知らないドナルド・トランプの半生


Spotwright / スポットライトさんの投稿 2016年3月15日




 


キャプション付きで音を出さずとも内容が伝わるこの秀逸な編集方法やその内容に、思わずニュースフィードのスクロールを止めてみてしまう人は多いことでしょう。TwitterやInsatgramも動画の自動再生に対応していますが、それぞれのソーシャルメディアを使いこなす理解ある担当によるコンテンツこそ、オーディエンスの共感を得ることができるのは間違いありません。


わざわざ自分のところに来てもらわずに、お客さんがいるところに出していこう”という発想が分散型メディアの基本です。人々の行動の変化を見ると一過性のものとは言い切れません。ビジネスモデルにも関わるパラダイムシフトとなりますが、実験的にでもその対応方法を考えておく必要があります。


2.コンテクスチュアルコマースという、分散型メディア時代の購入体験


context-commerce


自社サイトにわざわざ来てもらわずに、今いる場所でコンテンツを消費してもらう分散型メディア、その流れの延長線上に見えてくるのがコンテクスチュアルコマースという概念です。


コンテクスチュアルコマースとは?


コンテクスチュアルコマースとは、ソーシャルメディア上、メディア、アプリ、そして物理的なモノなど、生活上のあらゆる場所で決済が可能となる考え方です。


文脈(Context)に沿った商取引(Commerce)という意味ですね。例えばInsatgram上で素敵なアイテムを見つけたら、わざわざプロフィールのリンクからショップにアクセスせずともそのフィード上で購入が完了できるイメージです。


TwitterやFacebookを始めとして、各プラットフォームがこぞってBuyボタンの導入をおこなっており、決済業界の王者Paypalもブログや小売店の紹介ページ、メール内、広告、公式アプリなど、さまざまな場所に購入ボタンが設置できる「PayPal Commerce」というサービスを開始しました。



2011年ごろもソーシャルコマース、Facebookコマースとも呼ばれ盛り上がりをみせ下火になったにも関わらず、今年に入り再燃焼しているこのソーシャルメディア上での購入体験。コンテクスチュアルコマースと名前を変えただけでまた同様の概念が出てきたと思われる方も多いかと思いますが、なぜ今後このコンテクスチュアルコマースを重要視していく必要があるかを考えてみましょう。


欲しいと思ったらすぐ買える。求められている気持ちのよい購入体験。


OLYMPUS DIGITAL CAMERA


過去、ソーシャルコマースが騒がれた時代と違い、人々はモバイル中心の行動様式へと変化しECの利用率もPCを上回っている状況です。


分散型メディアの台頭でさらにソーシャルメディア上で過ごす人々も増えた今、売りたい商品の販売機会を最大化するために人々がいるその場で「すぐ買える」仕組みに注力していくのは必然の流れだと言えるでしょう。


欲しい商品があっても入力項目やページ遷移が多くなってくるとそれだけ購入率は下がってきます。Amazonのワンクリック決済のように、そしてUberでタクシーを呼ぶように、Airbnbで宿をとるように気持ちのいいUXから人々は逃れられません。それこそが一つの大きな価値となるのです。


モバイル時代の今そのUXは非常に重要で、如何に決済までの導線をシンプルにするかが売上のインパクトに大きく関わってきます。


そこで各プラットフォーマーはお客様のクレジットカードや住所などの情報を保持し、そこでの購入体験を最大化させようとしのぎを削っています。またそれはFacebookやPinterestなどのSNSにかかわらず、ApplePayやSamsung Payなどのデバイスにおけるプラットフォーマーも同様で、さらにLINEやMessengerなど、メッセージアプリにもそのコマース体験の流れは来ています。アリババがMagicLeapに出資をしていることから、今後はVRやARでのコマース体験も当たり前になってくるでしょう。


欲しい商品が決まっていればAmazonや楽天などを使うかと思いますが、ソーシャルメディア上のエンゲージメントが高まれば高まるほど、この新しい購入体験は重要になってくるでしょう。人々の行動の変化や動画が主流になる今、ネットショップの外からのお買い物の数が増えてくることは明白です。


分散型メディアはコマースのプラットフォームとなり得るか?


ecclab


参考記事:http://ecclab.empowershop.co.jp/archives/4178


様々なソーシャルメディア上で様々な属性のユーザーの関心を惹きつける分散型メディア、バイラルと共感させるノウハウを持っている分散型メディアは今後間違いなくコマースの方向性に向かってくることでしょう。


スポンサード記事が主な収益源となっている分散型メディア、その中心となるBuzzFeedでも2015年の売上目標は達成できなかったなど、現状のままでは苦戦が強いられそうな状況です。


プラットフォーム上での購入体験が整いつつある今、メディアとして展開する新たなビジネスモデルとしてコマースに行くのは想像に難くないのではないでしょうか?女性向けキュレーションメディアのMERYもコマースに力を入れているのが伺えます。


またウォール・ストリート・ジャーナル、フィナンシャル・タイムズ、ニューヨーク・タイムズ、そして日本でも日経新聞など多くのレガシーなメディアはまだまだ有料課金会員で売上を立てています。また、オランダで成功しているメディア「Blendle」は読者が記事を1本単位で購入できる仕組みを設けるなど、「Content Views」が売上に繋がるわけではないメディアのほうがまだまだ多数です。


話題のnote、そしてMediumもそうですが、記事に対して気持ちよく課金を行うというのもコンテクスチュアルコマースの概念に含まれるでしょう。どのような方法にしろ、ソーシャルメディアにコンテンツを配信していくメディアがマネタイズをしていく上で、検討するべきUXがこのコンテクスチュアルコマースです。


モバイルでの決済ハードルがどんどん下がっている今、ファンとソーシャルメディア上での関係性を築きあげ、課金アクションをどう綺麗にデザインできるかがメディアにかぎらず、すべての企業に求められる問題になると思います。


3.まとめ


以上、分散型メディアの流れから、ユーザーの文脈に沿ったスムーズな購入体験というコンテクスチュアルコマースの概念をご説明しました。


このように今、若者を中心に人々の行動様態はTVや雑誌から、モバイルへと大きくシフトしています。そんな中にも関わらず、人々がいる場所でビジネスを行うという、当たり前のことができていない企業やブランドがまだまだ多くいるのが実情です。


どのようなコンセプト、コンテクスト、コンテンツでソーシャルメディアを活用し、顧客と関係性を作っていくべきか。オキナワアイオーではモバイルとソーシャルメディア時代に最適なコミュニケーション方法を立案・運用を行います。ぜひお気軽にお問い合わせください。


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