Twitterが創る未来と、新たな道を進む共同創業者たち~Twitterはどこから来て、どこへ向かうのか~【後編】
2015/02/20

現在のCEOディック・コストロの人物像とは
前編で述べた通りTwitter社現在のCEOは、2010年にエヴァン・ウィリアムズよりCEOの座を引き受けたディック・コストロが務めています。もちろんTwitterのこれからは彼の手腕にかかってきます。さて、そこで気になるこのディック・コストロとは、一体どういった人物なのでしょうか? Twitterや共同創業者の今後を語る前に、非常におもしろい経歴をもったディック・コストロの人物像についてご紹介しておきます。台本のない人生を生きろ
2013年のこと。5月にディック・コストロ氏がミシガン大学で行った卒業スピーチが話題になりました。動画はYouTubeにアップされていますので、興味のある方はご覧になってみてください。但し、英語です。 ※こちらで日本語文字起こし記事が読めます。↓ 「台本のない人生を生きろ」TwitterのCEOが卒業生に贈ったスピーチが奥深い このスピーチでコストロは、「台本のない人生を生きろ」という印象的な言葉を発します。 Twitter社のCOOおよびCEOを務めるくらいなのだからIT一辺倒の人生なのかと思いきや、学生時代コンピュータサイエンスを専攻していたにも関わらず即興演劇にのめり込み、人を喜ばせるのが好きなコストロは真剣にコメディ俳優を目指していたとのことなんです。 残念ながらプロのコメディ俳優にはなれませんでしたが、彼は「台本のない即興演劇」に真剣に取り組む中で、とても大事なことを学びました。 台本がないということは、舞台の状況を注意深く読み取り、次に発すべき言葉や仕草を、その場その場で考えなければなりません。つまり「今、この瞬間」を真剣に生きなければ、観客の心を動かすことはできません。 これは、Twitterの「今、この瞬間」を140文字で伝えるというコンセプトと実にマッチしていると思いませんか?コストロがCEOとして采配を振るっていることに納得のいくバックボーンですね。
Twitterの現状とこれから
収益拡大に向けて動くTwitter
さて、そんなディック・コストロの下、Twitterは今どこへ向かおうとしているのでしょうか? まずはこちらのグラフをご覧になってください。
Googleとの提携で、ツイートのリアルタイム検索サービス開始

広告ツイート「Promoted Tweet」開始

ユーザーのニーズに合わせた「テレビターゲッティング広告」開始
Twitter社によると、テレビを観ているユーザーの中にはCMなどの合間合間にTwitterを使用して番組についてツイートする人もおり、調査の結果、Twitterユーザーの5人に4人はTwitterを使いながらテレビを視聴したことがあると答えているそうです。
本田圭佑 VS メルセデス・ベンツ。 さらなる高みを目指して。 #メルセデスの本気 https://t.co/VMxePvoQs1
— メルセデスの本気。 (@mb_honki) 2014, 11月 18
共同創業者たちの思想は維持されるのか?
ここ最近で発表されたのは主に収益拡大のための施策がほとんど。そして収益の元は広告です。Twitterの収益モデルは広告収入で成り立っているわけですから当たり前といえばそうなのですが、お金の話ばかりだと少し不安になってしまうのも確か。共同創業者たちの思想は重視されるのか、それとも変貌を遂げていくのか、非常に気になるところですね。ウェブマーケティングに変化が起きる?
今年はウェブマーケティング戦略に大きな変化が起こると考えられます。もちろんそれは、Googleとの提携によるツイートのリアルタイム検索サービス開始の影響です。 Googleは検索分野で75%のシェアを誇っています。今後改めてツイートが検索エンジンに引っかかるようになれば、企業はTwitterマーケティングを重視しなければならなくなるでしょう。特に宣伝にお金をかけることができない中小企業にとっては、非常にありがたいツールとなるかもしれません。 企業だけでなく個人としての活動で有名になりたい人たちにとっても、このチャンスは活かしたいところ。検索に引っかかりやすいようにツイートする内容に関しても、SEOを意識しないといけなくなりそうです。トレンドワードには今まで以上に気を配らければならないでしょう。Twitterはもう完成しているのかもしれない
共同創業者たちの思想がぶつかり合って揉まれた結果、Twitterというサービスはある種の完成形を迎えたと言えるかもしれません。細かい修正や調整は今後ももちろん加えられたりするでしょうが、これから大きな変革を遂げていくのかといわれると、それはないんじゃないかと思います。 収益化に向けてあらゆるかたちの広告を取り入れたり、C2C機能の強化を図るなどしながら、今後益々のユーザービリティを追求していってくれるでしょう。ビズ・ストーンの定義した「人間は善である」という思想を忘れず、あくまで「ユーザーの善意を増幅するツール」として成り立っていくことを期待しています。 参考: Twitter&Google提携後の未来とは – 企業のWebマーケティング戦略に直結?共同創業者の現在とこれから
そしてTwitterをつくりあげた人たちは今、それぞれ別の方向に向かい始めています。 エヴァン・ウィリアムズ、ジャック・ドーシー、ビズ・ストーンの3名はすでにTwitter社を退社し、現在は共同創業者としてTwitterの歴史に名を残すのみ。 現在はそれぞれが新たなスタートアップ・ビジネスを始めています。エヴァン・ウィリアムス/『Medium/ミディアム』
エヴァン・ウィリアムズは、2012年8月、盟友ビズ・ストーンとともにブログサービス『Medium/ミディアム』を立ち上げました。
「Mediumは、人々がアイデアや140文字より長い物語を、ただ友人のためだけにではなく、インターネット上で共有するための新しい場所だ。あなたの一日をより良くするような小さな話や、世界を変えるマニフェストのために設計されている。プロのジャーナリストからアマチュアの料理人に至るまで、あらゆる人に使われている。シンプルで美しく、コラボレーションが可能で、あなたが言わなければならない考えのために適切な聴衆を見つけられるように助けることができる」 ※良質ブログのための新プラットフォーム「Medium」が一般公開~Blogger、Twitterの創業者Evan Williams氏による第3の試みより引用参考記事: メディアの価値はどんな指標で現せるのか──エヴァン・ウィリアムズの挑戦
ジャック・ドーシー/『Square/スクエア』
ジャック・ドーシーは、2009年2月、iPhoneなどのスマートフォンをクレジットカード決済端末として扱うサービス『Square/スクエア』を開始。同社のCEOに就任しています。さらに2013年12月からはウォルト・ディズニー・カンパニーの取締役にも就任。次代のスティーブ・ジョブズと呼ばれるジャック・ドーシーの動向は、ITに関わる人たち全員に注目されているといってもいいでしょう。
「米国ではあまり現金を持たず、1枚のプラスティックカードだけで何とかしようとすることが多い。しかし地元の小さなカフェや店舗ではクレジットカードを受け付けてくれないこともあり、近くのATMを探して現金を引き出さなければならないことが多々ありました。こうした問題を解決するために、シンプルなアプリをダウンロードし、店舗にクレジットカードリーダーを無料で送ってカードに対応するサービス、スクウェアが誕生しました」(ジャック・ドーシー) ※スクウェアは「おもてなし」を自然に強化する――ジャック・ドーシーCEOインタビューより引用
ビズ・ストーン/『jelly/ジェリー』
ビズ・ストーンは、2013年4月、モバイルに特化したサービスを開発するjellyという企業を立ち上げました。2014年1月にはスマートフォン向けQ&Aプラットフォームアプリ『jelly/ジェリー』をリリースしています。
「非常に便利な検索エンジンを提供するという以外に、Jellyはエンパシーのサークルを作るのが目的だ。Jellyを日常的に使ううちにユーザーは「まわりには私を必要とする人がいるし、私はその人たちを助けてあげられるし、感謝してもらえる」と考えるようなる。 うまくいけば、それがきっかけでユーザーたちがアプリの世界を飛び出して現実でも助けを必要とする人々を探し、手を差し伸べるきっかけになるかもしれない。そうしたすばらしいだろう?」 ※Twitterの共同ファウンダー、ビズ・ストーンが新Q&Aサービス、Jellyをローンチ―秘められた目的を語るより引用10月には苦戦しているとの記事も公開されていましたが、日本ではまだ流行の兆しはありません。Twitterが本格的に流行りだしたのもリリースから数年後でしたし、ビズ・ストーンの人間を善を信じる想いが込められたjellyも、人々に受け入れられるにはまだまだ時間がかかるのかもしれませんね。 参考記事: “第二のTwitter”になるか 話題のアプリ「Jelly」とは Twitterを去った共同創業者ビズ・ストーンの新サービスが苦戦中? ツイッター創業者のビズ・ストーン、モバイルQ&Aプラットフォーム「Jelly」を立ち上げ
ノア・グラス/???
ノア・グラスは・・・不明です。彼は一体どこで何をやっているのでしょう?
共同創業者たちは「ペイパルマフィア」となるか
Twitterを去った彼らが、現在も精力的にスタートアップとして活動していることがわかったかと思います。やはり彼らの気質は「スタートアップ」、つまり新規事業を立ち上げることにあるのかもしれません。軌道に乗せるまでの経営はともかく、安定させ、定着させることにはひょっとすると向いていないのかもしれませんね。 前編でも述べましたが、ベンチャー企業が成り立つまでと、そこからさらなる成長していくための戦略は、同じ「経営」という言葉で括れないものです。これは良し悪しではなく、向き不向きなのでしょう。 アイデアを出す能力とそれを実行する能力を持った彼らは、シリアルアントレプレナー(連続起業家)としてこれからも魅力的なサービスを次々と立ち上げてくれるに違いありません。 そう、電子メールアカウントとインターネットを利用した決済サービス「PayPal」を立ち上げた創業者たちが、解散後に次々と新しいサービスを立ち上げ、その活躍ぶりから「ペイパルマフィア」と呼ばれたように…。
おまけ:Twitter小咄
ロゴの変遷
前述のとおり、「Twitter」というネーミングはノア・グラスによって正式に命名されました。それまでは「twttr」という名前のサービスだったのですが、この当時のロゴデザインには度肝を抜かれました。
twttrという文字デザインに見覚えがありませんか?
初期サービス名の「twttr」ですが、よく見ると「Twitter」の母音を抜いただけなんですね。それだけでもかなり印象が変わりますが、この文字デザインに見覚えがありませんか? そう、マイクロブログサービスのTumblrや、写真共有サービスのFlickrと似ているんです。ふたつとも最後から2番めの文字“e”を抜いたデザインになっていますよね。これらのサービスが登場した頃(2004年~2007年あたり?)は、こういった文字デザインが一時的に流行っていたようです。「twttr」もそこからきていると考えてよさそうです。 Twitterにこの省略デザインが採用されなかったのは、TumblrやFlickrと違って、パッと見ただけだとtwttrは読めなかったからかもしれません。「トゥウ…トトル…?」なんて言ってしまいそうですし。 参考記事:Twitterは昔「twttr」だった?!2006年頃のTwitterを振り返るいかがでしたでしょうか。 前後編合わせるとかなり長いコンテンツとなりましたが、Twitterの歴史と思想・未来が、この記事だけである程度理解できるものとなったのではないかと想います。 こうして紐解いてみると、そのドラマ性は実に映画向きだと感じます。マーク・ザッカーバーグとFacebookを描いた映画「ソーシャル・ネットワーク」や、Appleのスティーブ・ジョブズの人物像に迫る映画「スティーブ・ジョブズ」など、IT企業創業者にスポットを当てた映画はすでに存在します。 Twitterの背景にあるドラマをぜひ映像化してほしいなぁと、この記事を書いてから思うようになりました。 歴史や思想を知ることで、そのサービスや人物に興味を持つことがあります。この長いコンテンツを読んでTwitterをやってみようかと思っていただけたなら、それに勝る喜びはありません。 以上、『Twitterが創る未来と、新たな道を進む共同創業者たち~Twitterはどこから来て、どこへ向かうのか~【後編】』でした。 関連記事:Twitterの歴史と思想、4人の創業者たちのドラマ~Twitterはどこから来て、どこへ向かうのか~【前編】
この記事を書いた人:ソーシャルメディアラボ編集部

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